試験終了による廃車
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 01:34 UTC 版)
「廃車 (鉄道)」の記事における「試験終了による廃車」の解説
試験車は大きく分けると次の3タイプになる。 A 新造車:試験のために開発された車両。今までと違う機器を搭載していたり、車体形状が突飛であったりしていることから、編成内でバラバラであることも多い。例:新幹線500系電車900番台 (WIN350) 、JR東日本E993系電車(ACトレイン)。 B 改造車:台車やモーターなど一部分のみの試験を行う車両。在来の車両に改造や仕様変更を行っただけなので、旅客運転をしながらデータ収集を行うことも多い。例:国鉄103系電車DDM駆動改造車(JR東日本京葉電車区所属モハ103-502)。 C 先行試作車:次期新造車両の性能を確認するための車両。新造車と違うのは、量産を念頭に置いた車両である点と、実際に客扱いを行う点で、突飛な姿をしていることはまずない。また、客の評価や運用上の問題点などを調べ、量産車に反映させる役割も担っている。例:JR東日本901系→JR東日本209系900・910・920番台、JR西日本681系電車(1000番台)。 Aが旅客車に改造されることはなく、試験終了後引退となるものがほとんどであるが、障害物に激突させ、原形を留めない姿で解体されていくものも多い。ただし、国鉄キハ391系気動車(2015年初旬に片側の前頭部を残して解体)や新幹線955形電車 (300X) 、新幹線500系電車900番台 (WIN350) ・新幹線952形・953形電車 (STAR21) などの高速試験用新幹線のように試験終了後も現在に至るまで保存(片側または両側の先頭車もしくは前頭部のみ、中間車は952形・953形の一部を除いてすべて解体)されているものもある。ただし、都営地下鉄大江戸線12-000形電車の試作車のように、試験終了まで入籍しなかった車両も存在する。また、非常にまれな話だが全く別の試験車になるケースがある。例えば製造工法確認を目的として試作されたクモハ223-9001がクモヤ223-9001U@tech試験車(2019年3月末に廃車)に改造された例が挙げられる。 Bは試験終了後、未改造の車両の仕様に戻され、他の車両と同じに戻ったケースもある(例:JR西日本221系電車160km/h走行対応改造車、JR西日本223系電車2000番台シングルアームパンタグラフ試験車およびリチウムイオン蓄電池駆動試験車、阪急7000系ボルスタレス台車試験車)が、基本的にはそのままの姿で使用され続ける(東急6000系電車 (初代)、阪急8000系PMSM・SiC-VVVFインバータ試験車)。しかし、種車に旧型の車両を選んでいた場合は牽引車や入換車として再利用される場合を除いて廃車される。一部の試験車では運行を開始したが、保守などの取り扱い上の問題から早期に廃車となる例や、先頭車1両のみの場合電装解除の末付随車化されるケース(例:阪急7300系VVVFインバータ試験車)もある。 Cは量産型に合わせた量産化改造が行われ、新形式の一員として使用され続けるものがほとんどである(例:JR西日本207系電車量産先行車、新幹線700系電車)。しかし量産が中止になったり、量産時に大幅な設計変更が行われたりした場合、その車両は早めに休車され、その後廃車されたり(例:国鉄415系電車クハ415-1901、JR東日本E331系電車)、新形式登場後も引き続き試験用として使用されたりすることもある(例:新幹線N700系電車、新幹線N700S系電車)。また、無事に運用を開始したとしても量産編成の中間に組み込まれたり(例:国鉄201系電車900番台)、支線運用に就き続けたりする場合や(例:営団6000系電車1次試作車)、区間運転用として就き続けたり(例:近鉄1250系(現在の1420系))、事業用車へ転用される場合(例:東急7200系アルミ試作車)が多い。量産に至らなかった車両はラッシュ時限定で使用されたり(例:阪急8200系電車)、限定運用とされたり(例:JR四国2600系気動車)、試験用として使用されたり(例:JR北海道735系電車)、改造の末他形式に編入することもある(例:南海8000系電車 (初代)(現・6000系電車6521F))。中には国鉄207系電車や国鉄713系電車、および近鉄3000系電車など本線で運用されている例もある(国鉄207系は2010年1月6日に、近鉄3000系は2012年に廃車)。国鉄207系は1986年に次世代型VVVFインバータ制御試作車として登場したが、当時はまだ半導体技術が未熟であったため、コストが掛かり過ぎるなどの理由で、同タイプの車両の量産に至らなかった(国鉄分割民営化後にJR西日本が新設計で207系を新造・量産した)。国鉄713系は九州初の交流専用車の試作車として登場したが、当時の国鉄の財政事情により急行形の車体載せ替えおよび近郊形化改造(717系電車)で必要両数を賄う方針に転換したため、結局8両の先行試作車だけが残ってしまった。近鉄3000系は近鉄初の電機子チョッパ制御、オールステンレス車で、京都市営地下鉄烏丸線への直通運転用として1979年に登場し、概ね良好な成績を残したものの、烏丸線京都 - 竹田間の延伸開業が遅れたこと、同区間が開業した際には既にVVVFインバータ制御が実用段階に入っていたこと、また近鉄ではアルミニウム合金製車体を標準採用されるようになっていたため、電機子チョッパ制御やオールステンレス製車体を踏襲する必要性が事実上皆無になっていたことから、同タイプの車両の量産に至らなかった(その後、近鉄は地下鉄烏丸線直通用に3200系を設計・製造した)。また国鉄DE50形ディーゼル機関車のように量産先行形として試作を行い実際の営業運転でも良好な成績を残したものの、その後の環境の変化(全国的な電化の進捗)により量産しても需要が見込めないなどとして、結局1形式1両の先行試作機だけが残ってしまったというケースもある。珍しい例としては、JR北海道キハ285系気動車のように営業運転はおろか試験すら行わずに休車され、廃車解体された車両も存在する。
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