試験粒子の極限
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/02/15 05:56 UTC 版)
古在機構の最も単純な取り扱いは、内側連星の伴星である天体を試験粒子、すなわち他の主星と遠方の摂動天体の2天体と比べて質量が無視できる理想化された点状天体であると近似して扱うことである。このような近似は例えば、月による摂動を受けながら低軌道で地球を公転する人工衛星の場合、あるいは木星によって摂動を受ける短周期彗星の場合に有効である。 これらの近似のもとでは、伴星の軌道平均された運動方程式は保存量を持つ。これは、伴星の角運動量の、主星と摂動天体の角運動量に平行な成分である。この保存量は、伴星の軌道離心率 e と、摂動天体の軌道平面に対する軌道傾斜角 i によって以下のように表される。 L z = ( 1 − e 2 ) cos i = c o n s t . {\displaystyle L_{z}={\sqrt {(1-e^{2})}}\cos i=\mathrm {const} .} Lz が保存するということは、軌道離心率と軌道傾斜角が「トレードオフ」の関係にあることを意味する。つまり、古在機構によって軌道離心率が上昇する場合は軌道傾斜角は減少する。したがって、円形に近い大きく傾いた軌道は、古在機構によって非常に離心率の大きい細長い軌道に変化しうる。軌道離心率が増加する一方で軌道長半径は一定に保たれるため、伴星の近点距離は減少する(同様に遠点距離は増大する)。この機構は、木星によって摂動を受ける彗星を、太陽をかすめるような軌道で公転するサングレーザーへと変化させうる。 Lz が特定の値より小さい場合、古在振動が発生する。Lz がその臨界値である場合、「不動点」軌道となり、その時の傾斜角は i c r i t = arccos ( 3 5 ) ≈ 39.2 o {\displaystyle i_{crit}=\arccos \left({\sqrt {\frac {3}{5}}}\right)\approx 39.2^{o}} で与えられる定数値となる。この角度は Kozai angle と呼ばれる。 Lz の値がこの臨界値よりも小さい場合、同じ Lz を持つが、離心率と傾斜角が異なる量の変化をする軌道解の1パラメータの集団が存在する。興味深いことに、傾斜角 i が変動し得る度合いは系内の質量とは独立であり、質量は振動の時間スケールのみと関係する。
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