試験結果の解釈
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/01/04 09:03 UTC 版)
TSI試験では培地中に含まれる3種類の糖の分解能および副産物の違いから細菌の発酵能を解析することができる 。糖発酵の副産物は通常、酸であり、培地のpHを変えることによりpH感受性染料のフェノールスルホンフタレイン(フェノールレッド)を赤色から黄色に変える。培地上で黄色に変色した部位ではグルコース発酵が行われており、ラクトースまたはスクロース発酵現場と区別できる。 TSI斜面培地は、酸素を含む空気に触れる好気条件の斜面部と、空気に触れない嫌気的な培地内部の高層部に分かれる。高層部で変色を引き起こす細菌は嫌気性である。 多くの細菌はチオ硫酸アニオンを最終電子受容体に利用することができ、硫化物に還元する。この還元反応で生成される硫化水素(H2S)は培地中の硫酸鉄(II)と反応し、硫化鉄(II)を生成して黒い沈殿が現れる。硫化鉄を生成する細菌にはSalmonella属、Proteus属、Citrobacter属、Edwardsiella属がある。この黒い沈殿はたいてい、培地の高層部で観察される。 非ラクトース発酵性でグルコース発酵性の細菌ではまず植菌から8時間後に斜面と低部で黄変が見られ、24時間後に斜面部と高層部は赤色に変わる。ラクトースとグルコースの両方を発酵する細菌では酸が大量に発生するため培地全体が黄色になる。H2Sの発生による黒化は高層部の黄変を隠す恐れがある。Salmonella enterica Typhi血清型は高層部と斜面部の境界領域で黒化を引き起こす。 嫌気的条件では多くの細菌はチオ硫酸を電子受容体に利用し、これを水素ガスに還元する。TSI斜面培地ではこの現象は高層部で底部に向かって起こる。水素ガスはあまり可溶性ではなく、画線に沿って、あるいは寒天培地とガラス壁面の間、あるいは斜面部の底に溜まる液体に泡として観察されることがある。水素ガスの発生は培地を持ち上げ試験管底に空間を出現させたり、培地に割れ目を作ったりすることもある。二酸化炭素ガスは水素ガスよりずっと可溶性であるため、泡の発生や上記の現象を引き起こすことはない。
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