睡蓮の花言葉
睡蓮の花言葉の由来
(1)古代エジプトの文化に生み出された花言葉睡蓮を国花として定めているように、エジプトは古くから睡蓮を大切に扱ってきた。古代エジプトでは睡蓮を太陽神の象徴としてみなして神聖視していたことが、これまでに発見された遺跡の壁画や彫刻などには数多くの睡蓮が描かれて出土していることからもうかがえる。人々が睡蓮を最高神としてあがめたのは、花の形が放射状になることが太陽に似ているその形状や、太陽が昇ると花を開き、日が沈むと花を閉じるという花の習性に、生命の復活と再生を見出したからだとされている。当時のエジプト人は死んでも魂が再び肉体に戻ると信じ、ミイラを作って再生を祈ったが、その復活のイメージを睡蓮が開花する姿に重ねたものだ。睡蓮は当時、ナイル川のほとりに数多く自生しており、川が増水して土地が肥沃になると一斉に花を咲かせた。その優雅な姿は「ナイルの花嫁」と称される。また、その年は確実に豊作となったため、睡蓮には「信仰」とともに「神聖」「豊穣」という花言葉がイメージ付けられるようになった。
(2)仏教との関りの中で日本独自に生まれた花言葉
仏教との関わりが深い日本人にとって、睡蓮は特別の意味を持つ花でもある。睡蓮が水底の汚泥に根付き、そこから茎をのばして水面に花を咲かせる様子は、大乗仏教の経典である「妙法蓮華経」の中で「不染世間法 如蓮華在水」(世間の法に染まらざること、蓮華が泥水にあるが如し)と記されているように、俗に染まらず孤高に気品を保ちながら凛として立つものの象徴として「清浄」などの花言葉にも結び付いたとされている。「妙法蓮華経」の蓮華とは、ハスの花と睡蓮の総称として用いられ、仏教の伝来とともに中国から日本に入ってきた言葉。仏典には青蓮華、白蓮華、紅蓮華、黄蓮華の4つが見られ、このうち青蓮華と黄蓮華は睡蓮、白蓮華と紅蓮華はハスだとされている。仏が安置される場を蓮華座というように、睡蓮は蓮の花とともに仏教のシンボルとして尊重され、宗教などとの関りも特に深いことから、「信仰」という概念も日本独自の花言葉のイメージとして定着した。
睡蓮の英語の花言葉
「purity of heart(清らかな心)」。睡蓮は洋名を「water lily(水辺の百合)」といい、百合が英語圏では聖母マリアを象徴する花とされていることから、その清らかなイメージが重なってこの花言葉となった。睡蓮の色別での花言葉の解説
#白色「純粋」「潔白」「無垢」睡蓮の自生種はもともと多くが白色であったため、睡蓮といえば白色の花言葉がその代表的なものと捉えられることもある。白色はその色自体が汚れのない清冽なイメージを持っており、いかに穢れた世界の中にあっても純粋を保てる者の象徴として「潔白」「無垢」などの花言葉に結び付いた。
#黄色「甘美」「優しさ」
睡蓮の黄色が持つ日の光のようなまばゆさ・暖かさが、見る者にやすらぎと安心感を与えることから「優しさ」の花言葉がイメージされた。黄色が咲き誇る艶やかさからは睡蓮の妖艶なイメージがにおいたち、その連想から「甘美」の花言葉に結び付いた。
#ピンク色「信頼」
睡蓮の淡いピンク色には、たかぶった気持ちを落ち着かせる効果があるとされており、頭痛などに対しての鎮痛作用もあったとされる。その確かな効力を頼りにして信頼したことから、「信頼」がピンク色の睡蓮の花言葉とされた。
#青色「純粋」「優しさ」「信仰」
ほぼ自生することのない青色の睡蓮には、色による花言葉は特になく、睡蓮の一般的な花言葉をあてて用いられるケースが多い。
睡蓮の本数別での花言葉の解説
睡蓮は、バラ・カーネーション・チューリップ・ひまわりなどと異なり、本数によって花言葉の意味が変わるものではない。睡蓮の怖い花言葉
#「滅亡」という怖い花言葉の由来睡蓮には、ギリシャ神話のヘラクレスとニンフの物語に由来する「滅亡」という怖い花言葉もある。妖精ニンフは、ギリシャ神話の中でも最大の英雄と称されているヘラクレスに恋心を抱いたが、あまりに身分が違いすぎることから恋は成就せず、ついにヘラクレスに捨てられてしまう。失意の底に沈んだニンフはみじめな気持ちに耐えられず、ナイル川に身を投げる。そこでニンフは水辺の妖精と化し、人間が通りかかると睡蓮に姿を変え、睡蓮を折ろうとするものはその魔力で水の中に引きずり込んだ。「滅亡」という花言葉はこのエピソードに由来し、「終わった恋」という花言葉も派生して誕生した。さらにニンフを捨てたヘラクレスの行いが「冷淡」という花言葉を生むことにもなった。
#「滅亡」という怖い花言葉にまつわるエピソード
(1)ネイティブアメリカンの娘が睡蓮に化身した話
アメリカのニューヨーク州にあるタッパー湖ではその昔、先住民のサラナク族が暮らしていた。その部族の長は美しい娘と恋仲であったが、娘の両親は他に結婚相手を決めており、従順な娘も両親の意向に逆らえず、相思相愛の部族の長を避けるようになった。しかし長は娘をあきらめきれず、湖のほとりで彼女を抱きすくめようとするが、娘はその腕を振り切って走り、湖に身を投げてしまう。長は湖中をくまなく探すもののどこにも娘の姿を見つけることができず、翌日、漁に出ていた漁師が湖に白色や金色の睡蓮の花が群生して咲いているのを見つける。のちに人々はあの睡蓮こそ娘の化身だと言い伝えるようになった。このアメリカの伝説を「滅亡」「終わった愛」という花言葉の由来だとする説もある。
(2)睡蓮の花を折った女の子を睡蓮に変えてしまう話
ギリシャ神話には、人を滅亡させて睡蓮に変えるローティスの怖い物語がある。美しい妖精ローティスは、その美しさに惑わされた男根神プリアーポスに言い寄られて逃げ回っていたが、あまりのしつこさにうんざりしたローティスは水辺で神に祈り、赤い睡蓮に身を変えてしまった。しばらくしてドリュオペーとイオレーという姉妹が水辺に来た折、赤い睡蓮を折った姉のドリュオペーを真似てイオレーも睡蓮に手を伸ばしたところ、睡蓮が震えだし折口から血が滴り落ち始める。二人は急いでその場を逃れようとしたが、姉の足には根が生えて動けなくなり「この花は摘まないで」と言い残して睡蓮に姿が変わってしまった。
(3)睡蓮の葉の下に住む魔物が人を溺れさせるというドイツの民間伝承
ドイツでは、睡蓮が咲く沼には妖精が住み、人間が近づくと睡蓮に姿を変え、人間が通り過ぎると元の妖精に戻って女の姿をすると言い伝えられていた。睡蓮の葉の下には水の魔物が潜み、この魔物は常に嫉妬深く美しい睡蓮を見張っており、花を取ろうとする人間がいれば水に引き込んで溺れさせる。睡蓮はもともと水の精が姿を変えたものであり、真夜中には妖精に戻って踊り出すという言い伝えがある。
(4)人間の理性を壊し滅亡に導く黒睡蓮の話
西洋の伝説には黒い睡蓮が毒を持つ、という言い伝えがある。これは古代ギリシャの詩人、ホメロスの「オデッセイア」の中に描かれたトロイ戦争の場面に由来している。物語の主人公でギリシャ神話の英雄オデッセウスが、木馬の奇計で勝利してギリシャに帰還する途中、とある岬に漂着。 部下を偵察にやったところ一向に帰還しないので自ら島に足を踏み入れたところ、ふ抜けになった部下を発見する。その島は睡蓮の実を食べる住民が住む場所で、サフラン色の睡蓮の実はすべての苦痛を取り除き、食べた者はその後その実を食べることだけしか考えられなくなってしまう。人から目的を失わせ、怠惰な生活に陥らせる強い眠りと毒を持った食べ物として睡蓮が描かれている。
※ 花言葉の内容は諸説あります。
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