物語全体の流れ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/17 09:01 UTC 版)
西夏の学者らは、ツォグ族に西夏の娘を嫁がせる際に玉音同(玉でできた文字板)を隠し持たせ、西夏文字を後世に残そうと考えた。しかしツォグ族は突如として興ったモンゴル軍に敗北し、服従を余儀なくされる。モンゴルは、何故か徹底して西夏(特に西夏文字)の殲滅を行うのであった。 西夏人女性のシュトヘルは、殺された仲間の仇を取るため、モンゴル軍とツォグ族のハラバルを執拗に狙う。ハラバルの弟ユルールは、老従者のボルドゥから西夏文字を後世に伝える担い手となるよう頼まれ、玉音同を携え南宋を目指すことになる。旅の途中で用心棒として彼らに雇われたシュトヘルは、当初ユルールをハラバルを誘き寄せる餌としか思っていなかったが、ユルールから文字を教わったことをきっかけに打ち解ける。シュトヘルはハラバルとの戦いに負けて絞首刑にされたが、彼女の肉体に、21世紀の日本に生きる高校生の少年・須藤の魂が宿り復活を遂げる。ユルールとボルドゥはシュトヘルの変貌に戸惑いながらも、玉音同運びを再開する。 西夏の首都・興慶の攻略に来ていたハラバルは、大ハンの使いと名乗る西洋人女性ヴェロニカから、国立図書館である「番大学院」を落とし、玉音同を入手するよう指示される。ハラバルは番大学院の長であるグルシャンと戦い勝利したが、玉音同は見つからない。ハラバルがツォグ族陣営に戻ると、ツォグ族はヴェロニカ率いる軍隊に襲われ全滅しており、ヴェロニカはこの所業を「偽皇子ユルールが玉音同を持って逃げた罪によるもの」と告げる。ハラバルはユルールの首級と玉音同を求めて蘭州に進撃する。同じころ蘭州にいたユルールらは、金国の将軍ジルグスの兵に囲まれ囚われの身となる。それを追ってきたハラバルの猛攻の前に、ジルグスは手も足も出ず斃れてしまう。そして本来の人格に戻ったシュトヘルとハラバルは、ユルールの前で壮絶な死闘を繰り広げるが、両者引き分けとなってハラバルは一旦去り、ユルールは自分のことを思い出してくれたシュトヘルとの再会に涙する。 そのころ、大ハンの息子の一人であるナランは、父の後継者と定められた双子の兄弟・トルイの味方を増やすため、弟にあたるユルールと玉音同を手に入れようと考え、ユルールやシュトヘルの顔を知るヴェロニカを父から借り受けて出発する。ヴェロニカは、自分の望みをかなえるための後継者であるトルイには従うつもりだが、ユルールや玉音同に関して、大ハンや彼女の思惑と逆の行動を取ろうとするナランには反感を持っていた。またナランも、「モンゴルの歴史に得体の知れない女を記す訳にはいかない」とヴェロニカの排除をもくろんでいた。 ユルールら一行は金国領の天水を経て京兆府(長安)に入る。そこにはナランらも宿泊していた。京兆の副知事である楊はモンゴルに降る肚を決めており、ナランの意向に従ってユルールの身柄確保やヴェロニカの殺害も計画していた。ハラバルとの戦いの際に負った怪我が一向に癒えないシュトヘルは、自分の身体が死んでいることに気づき苦悩する。長安から出立しようとしたユルール達にナランが追いつき、玉音同の半分を持ったユルールはナランに捕らえられ、残り半分を持ったボルドゥ、須藤に助けを求めるシュトヘルは散り散りになってしまった。また、楊の軍勢から逃げ延び楊を殺したヴェロニカは、ナランの自分に対する敵意を明確に認識する。 シュトヘルとの死闘の後、モンゴルへ戻らなかったハラバルは、翻意ありとして追われる身となる。モンゴル兵を狩り、また金国兵も構わず殺すハラバルは、いつしか「シュトヘル」と呼ばれるようになり、追われる身でありながら逆にモンゴル軍を追いかけ居庸関へと向かう。奇しくもユルールを連れたナランも、彼をトルイに引き会わせるべく居庸関に到着した。ボルドゥと合流したシュトヘルもユルールを追って居庸関へ向かったが、道中モンゴルの脱走兵に襲われる。彼らはシュトヘルに家族や仲間を殺され、復讐のために脱走した者達だった。苦もなく退けるシュトヘルだが、最後に残った一人の若者ゼスが執拗に自分を殺そうと居庸関にまで追ってきた様子に過去の自分を重ね、「誰かに出会え」と忠告する。しかしそこにナランが現われてゼスを殺し、シュトヘルに「3日以内に玉音同の残り半分を渡せば弟(ユルール)はあげる。渡さなければ弟は元気でいられなくなる」と言い放つ。ボルドゥはユルールの命には代えられないと玉音同の残り半分を差し出す考えを示したが、シュトヘルは玉音同もユルールも取り返すことを決意する。 ナランは、トルイとユルールそれぞれに大ハンの背中の瑕のことを打ち明ける。それを聞いたユルールは「逃げるのでもなく脅すのでもなく、大ハンと話がしたい」と宣言する。一方のトルイは、直後に岩牢に入れられているユルールを見つけ、大ハンや自分と同じ「目」の存在がもう一人いることと、それを自分に語らないナランに困惑する。シュトヘルはメルミの「歌」に導かれ、岩牢越しにユルールと再会するが、ユルールは「大ハンと話す」と告げる。会うだけでもただでは済まないと考え、大ハンの殺害を決めたシュトヘルは、火の手が上がったモンゴル陣営でハラバルと遭遇する。ツォグ族の汚名はモンゴルがある限り後代に伝えられてしまうと知って以来、ハラバルはユルールの首でもシュトヘルの首でもなく、大ハンの首を狙う者となっていた。ナランは大ハンに密かに手紙を送り、警備の兵がいない場所に大ハンを呼び出した。ユルールは大ハンの鬼気迫る気配に圧倒されつつ、ジルグスからかけられた言葉を胸に、大ハンと向かい合う。そのころ、再びメルミの「歌」でその場所を知ったシュトヘルはサルヒを破って駆けつけ、大ハンとユルール、シュトヘルの末路を見届けようとするナランの他、大ハンの姿がないことに気づいたトルイと護衛のショールガも現われる。 シュトヘルとショールガが戦う一方、ユルールは言葉を継ぐが大ハンを動かすには至らない。さらにハラバルが乱入すると、ナランは大ハンの死とトルイの時代の始まりを確信してトルイに歩み寄るが、トルイは突如としてナランに石礫を投げつけて重傷を負わせると、ナランの謀略を拒否して大ハンを優先することを告げ、「最初からきみはいなかった」と言い残して去って行った。ユルールが大ハンの刃を背に受けて倒れるのを見たシュトヘルは、絶望しながらも大ハンに打ちかかる。ハラバルはその隙をついて大ハンを射抜こうとするが、自身を盾にするショールガのせいで叶わず矢を消耗する。大ハンの片腕をもぎ取るも、トルイの石礫を避けずに死を受け入れようとしたシュトヘルを、ハラバルの最後の矢が救った。トルイが大ハンを本陣へ運び去るころ、まだ息のあるナランを発見したヴェロニカは彼に止めを刺し、玉音同の半分を手に入れると同時に、放置されていたシュトヘルをなぜか匿う。ヴェロニカの手当ての後に目を覚ましたシュトヘルには、再び須藤が宿っていた。
※この「物語全体の流れ」の解説は、「シュトヘル」の解説の一部です。
「物語全体の流れ」を含む「シュトヘル」の記事については、「シュトヘル」の概要を参照ください。
- 物語全体の流れのページへのリンク