無次元化
変数をある定数で割ることにより、次元をもたない変数に変えること。物理現象を数式化する場合、変数を実際の物理量で表すより代表物理量との比で表したほうが便利なことが多い。例えば長さの変数を代表長さとの比で表せば、その数式はどんな寸法の問題にも適用できる。
無次元量
無次元量(むじげんりょう、英語: dimensionless quantity)とは、全ての次元指数がゼロの量である[1]。慣習により無次元量と呼ばれるが無次元量は次元を有しており、指数法則により無次元量の次元は1である。 無次元数(むじげんすう、dimensionless number)、無名数(むめいすう、bare number)とも呼ばれる。
無次元量の数値は単位の選択に依らないので、一般的な現象を特徴付ける物理量として、物理学、工学、経済など多くの分野で広く用いられる。このようなパラメータは現実には物質ごとに決まるなど必ずしも操作可能な量ではないが、理論や数値実験においては操作的な変数として取り扱うこともある。
歴史
無次元量は科学において時々現れ、次元解析の分野において形式的に扱われる。19世紀、フランスの数学者ジョゼフ・フーリエとスコットランドの物理学者ジェームズ・クラーク・マクスウェルが、近代的な次元と単位の概念を発展させた。後のイギリスの物理学者オズボーン・レイノルズとレイリー卿の研究は、物理学における無次元数の理解に貢献した。エドガー・バッキンガムは、レイリーの次元分析の手法を基に、これらの量の性質を正式化するバッキンガムのπ定理を証明した(これは、フランスの数学者ジョゼフ・ベルトランの以前の研究とは独立している)。多くの他の無次元数(主として比率)は、1900年代初期、特に流体力学と熱伝導の分野で作られた。 組立単位 dB(デシベル)で比率を計測することは、今日、広く普及している。2000年代初頭、国際度量衡委員会は、無次元量の単位を「ウノ」(uno)と命名することについて議論したが、却下された[2][3][4]。
比率
同じ種類の2つの量の比として定義される量は無次元量である[5]。例えば傾きは水平距離に対する鉛直距離の比である。つまり「長さ」という同種の量の比として定義される無次元量である。より複雑な例として、変形の尺度であるひずみは、変形前の長さに対する長さの変化の比として定義される無次元量である。他の例として濃度(質量濃度、体積濃度、モル分率など)が挙げられる。例えばアルコール度数はアルコール飲料の容積に対するエタノールの容積の比である。
このような無次元量の一貫性のある組立単位は数の1である。実用上は数値を扱い易くするために、百分率(パーセント、% = 0.01)や千分率(パーミル、‰ = 0.001)、ppm(10−6)、ppb(10−9)、ppt(10−12)などのParts-per表記が用いられる。
また、どの種類の量の比であるかを明示するために対応する単位の比(kg/kg、mol/molなど)で表される。例えばアルコール度数は通常は百分率で表わされるが、容積比であるから % = mL/100mL と書き換えられる。
角度の単位は無次元量である。弧度法による単位(ラジアン)は円周上の長さと半径との比率であり、度数法による単位(度、グラードなど)は円周上の長さと円周との比率に定数をかけたものである。
統計学では、変動係数は平均に対する標準偏差の比であり、データのばらつきを表現するために使用される。
他に以下のような例がある。
計数量
国際単位系(SI)と対応する国際量体系(ISQ)において、計数量(counting quantity)は通常は無次元量であるとみなされている[5]。ただし、上述の比として定義される無次元量とは異なり、計数量は長さや質量など他の基本量から組み立てられる量ではない[5]。
計数量の単位である日本語における数助詞(個、人、回など)や、これらと対応する英語におけるcount(s), turn(s), rotation(s) など、及びその他外国語で対応する単語などは、現在のSIにおいては一貫性のある組立単位 1 の書き換えとして位置付けられているが、これらを新たな基本量の単位とみなすべきである可能性が示唆されている[6]。
数係数を含む計数量の単位としては十二進数で個数を数える際のダースやグロスなどが挙げられる。
数学定数
数学定数である 1、虚数単位 i、円周率 π、ネイピア数 e など、全ての純粋な数で次元は1である。
無次元数の具体例
無次元数は、分野や理論ごとに多くの種類がある。それは、現象を記述する理論ごとに無次元数を見つけることができ、また無次元数の作り方には自由度があるためである。 以下にはよく知られているであろう無次元数を挙げる。
偏差値
平均値と標準偏差を規格化し、ある数値が母集団の中でどれくらいの位置にいるかを表したものを偏差値という。
力学
- 反発係数:衝突前後の速さの比。
流体力学
- レイノルズ数:
- 熱輸送
- 浮力、重力
- その他
材料工学
電磁気学
素粒子物理学
光学
通信工学
化学
気象学
単位の記述
無次元数には基本的に単位を付与しないが[注釈 1]、レベルのような、対数を用いて定義される量には特別の単位を与えることがある。
脚注
注釈
- ^ 無次元であることを明記したい場合に [1] などと書く場合もある。
出典
- ^ “1.8 (1.6) quantity of dimension one dimensionless quantity”. International vocabulary of metrology — Basic and general concepts and associated terms (VIM). ISO (2008年). 2011年3月22日閲覧。
- ^ “BIPM Consultative Committee for Units (CCU), 15th Meeting” (17–18 April 2003). 2006年11月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年1月22日閲覧。
- ^ “BIPM Consultative Committee for Units (CCU), 16th Meeting”. 2006年11月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年1月22日閲覧。
- ^ Dybkaer, René (2004). “An ontology on property for physical, chemical, and biological systems”. APMIS Suppl. (117): 1–210. PMID 15588029 .
- ^ a b c [1]
- ^ [2]
関連項目
無次元化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/12/04 09:19 UTC 版)
無次元活性化エネルギー β {\displaystyle \beta } と放熱パラメータ γ {\displaystyle \gamma } は次のように示される。 β = E R T o , γ = q Y F o c v T o {\displaystyle \beta ={\frac {E}{RT_{o}}},\quad \gamma ={\frac {qY_{Fo}}{c_{v}T_{o}}}} 容器を伝わる特徴的な熱伝導時間は t c = ρ c v a 2 / λ {\displaystyle t_{c}=\rho c_{v}a^{2}/\lambda } で表され、特徴的な燃焼時間は t f = ( B e − β ) − 1 {\displaystyle t_{f}=\left(Be^{-\beta }\right)^{-1}} で表され、特徴的な爆発/着火時間は t e = ( β γ B e − β ) − 1 {\displaystyle t_{e}=\left(\beta \gamma Be^{-\beta }\right)^{-1}} で表される。 典型的な燃焼プロセスにおいて γ ∼ 6 − 8 , β ∼ 30 − 100 {\displaystyle \gamma \sim 6{-}8,\ \beta \sim 30{-}100} は β γ ≫ 1 {\displaystyle \beta \gamma \gg 1} 、したがって t f = β γ t e ≫ 1 {\displaystyle t_{f}=\beta \gamma t_{e}\gg 1} , i.e.であることに注意すべきであり、本質的に無視できる程度であり、燃料濃度が初期燃料濃度と同じであると仮定される理由である Y F o {\displaystyle Y_{Fo}} 無次元のスケールは以下の式で表される。 τ = t t e , θ = β ( T − T o ) T o , η j = r j a , δ = t c t e {\displaystyle \tau ={\frac {t}{t_{e}}},\quad \theta ={\frac {\beta (T-T_{o})}{T_{o}}},\quad \eta ^{j}={\frac {r^{j}}{a}},\quad \delta ={\frac {t_{c}}{t_{e}}}} ここで δ {\displaystyle \delta } はダムケラー数 r {\displaystyle r} と平面スラブの中心 j = 0 {\displaystyle j=0} を原点とする空間座標を表す, 球形の容器では j = 1 {\displaystyle j=1} となり 円筒形の容器では j = 2 {\displaystyle j=2} となる。このスケールで方程式は次のようになる。 ∂ θ ∂ τ = 1 δ 1 η j ∂ ∂ η ( η j ∂ θ ∂ η ) + e θ / ( 1 + θ / β ) {\displaystyle {\frac {\partial \theta }{\partial \tau }}={\frac {1}{\delta }}{\frac {1}{\eta ^{j}}}{\frac {\partial }{\partial \eta }}\left(\eta ^{j}{\frac {\partial \theta }{\partial \eta }}\right)+e^{\theta /(1+\theta /\beta )}} Since β ≫ 1 {\displaystyle \beta \gg 1} ,指数項を線形化すると e θ / ( 1 + θ / β ) ≈ e θ {\displaystyle e^{\theta /(1+\theta /\beta )}\approx e^{\theta }} となる。 ∂ θ ∂ τ = 1 δ 1 η j ∂ ∂ η ( η j ∂ θ ∂ η ) + e θ {\displaystyle {\frac {\partial \theta }{\partial \tau }}={\frac {1}{\delta }}{\frac {1}{\eta ^{j}}}{\frac {\partial }{\partial \eta }}\left(\eta ^{j}{\frac {\partial \theta }{\partial \eta }}\right)+e^{\theta }}
※この「無次元化」の解説は、「FK理論」の解説の一部です。
「無次元化」を含む「FK理論」の記事については、「FK理論」の概要を参照ください。
- 無次元化のページへのリンク