浜田のブラックフェイス問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/13 21:16 UTC 版)
「絶対に笑ってはいけないアメリカンポリス24時!」の記事における「浜田のブラックフェイス問題」の解説
本番組の序盤で浜田雅功が『ビバリーヒルズ・コップ』のアクセル・フォーリーを演じたエディ・マーフィに扮するために黒塗りのメイクをしたことについて論争が巻き起こった。 アメリカ出身で日本に住むコラムニストのバイエ ・マクニールはツイッター上で浜田の扮装がブラックフェイスにあたるとツイッターで述べた。のちにマクニールはメディアの取材の中で当時の気持ちについて「悲しみ、怒り、心配など何とも言えない複雑な心境になった」と振り返り、ブラックフェイスが人種差別に当たることを多くの人に気づいてほしいという思いからツイートし、「差別意識がなくてもブラックフェイスは侮蔑的で差別的だと広く認識されているため、日本のテレビ番組がブラックフェイスを続けるなら、日本は差別的で無知な国だと思われてしまう」とも述べている。BBCはこの問題の類似事案として、日本人俳優が金髪のかつらとつけ鼻で西洋人を表現したCMが抗議をうけて放送中止になったことをあげた。 その一方で、白人が黒人をまねるミンストレル・ショーについて日本の視聴者が知っているか否かや、演者や視聴者が差別の経緯を知らなくても黒塗りメイクは人種差別に相当するのかといった論争も巻き起こっており、「アメリカで不適切なことが世界中でもそうだとは限らない」といった意見のほかにも、「浜田はエディ・マーフィに敬意を払うためにあのような扮装をした」と番組を擁護する意見もあった。また、スポーツ報知は「黒人に扮しただけで差別だと指摘する人たちこそ優劣をつけて人種を見ている」というタレント・フィフィの意見を紹介している。なお、浜田の黒塗りメイクの場面は1月6日に放送された完全版においても、「浜田がエディ・マーフィ演じる刑事にふん装中」というテロップを付け加えたうえでそのまま放送された。 1月14日、松本人志はフジテレビ系列のバラエティー番組『ワイドナショー』にて、「色々言いたいことはあるんですけども、面倒くさいので『浜田が悪い』といい」と述べ、「物まねとかバラエティーで黒塗りが無しでいくんですね?はっきりルールブックを設けてほしい」と語った。 AbemaTVの番組『けやきヒルズ』は日本テレビにこの問題について質問し、2018年1月12日放送分の中で日本テレビから「ご指摘のシーンについては、ダウンタウンの浜田さんが、あくまで、映画『ビバリーヒルズ・コップ』で俳優のエディ・マーフィさんが演じる主人公『アクセル・フォーリー』に扮したもので、差別する意図は一切ありません。本件をめぐっては、様々なご意見があることは承知しており、今後の番組作りの参考にさせていただきます」という回答が得られたことを明らかにした。ハフィントンポスト日本版編集長の竹下隆一郎は同番組の中で、この問題が拡大した原因について、「日本テレビ側に差別の意図はなかったと思う。ただ無自覚の差別こそ問題。(中略)今回、エディ・マーフィをものまねしている意図はわかるが、黒く塗ったことによって『肌が黒い人をまねた』と範囲が広がってしまった。つまり『黒人の肌の色を笑った』と捉えてしまう人がいた。それがたとえものまねのつもりだったとしてもそう思われた時点でもう許される問題ではない。」と語り、「黒人差別問題は日本だとなじみがないかもしれないが、日本だと例えば原爆に触れるのと同じこと。もし被ばく者のものまねがあったとして、お笑い番組だから許してくださいと言われてもさすがに日本人も怒ると思う。それに匹敵するようなテーマだと思う」と自らの見解について述べた。また、竹下はインタビューに答えた外国人から、歴史に関する言及や「人種差別に対する無知が多い」という指摘があったことにも触れ、この問題で誰かを攻撃するのではなく、歴史などの知識や時代の変化などを知った上でお笑いを作ってほしいと締めくくった。その後、竹下は2月26日のマイナビニュースの記事の中で、一連の記事に対して国内外から批判が寄せられたことを明らかにした。「甘すぎる」という海外のハフィントンポスト編集部に対し、竹下は『トカゲのおっさん』や『ゴレンジャイ』といったコントを例に挙げ、ダウンタウンが毒もあるが愛にあふれたお笑いを生み出してきたことを説明した。「この報道でお笑いがつまらなくなったらどうする」という国内の批判に対し、「日本のような文化もグローバルな価値観に晒されてアップデートする必要があるが、自分がお笑い好きということもあり、100%はっきりとした結論を出せない」とマイナビニュースの記事の中で述べている。2月4日の『ガキの使いやあらへんで』のフリートークでこの問題が取り上げられたことについて、竹下は「批判的なメディアとコミュニケーションをとってくれた」と評価した一方、1月の『ワイドナショー』における松本の発言については、「ルールブックの作成は表現の硬直化につながるので、少し違うと思う」と述べている。 岐阜大学の教授を務める文化人類学者のジョン・G・ラッセルは1月19日の朝日新聞の記事の中で、浜田の扮装が人物の中身や個性まではまねていないため、黒人一般を模したと思われる可能性が高いと指摘した。また、国内外で活動するお笑い芸人のぜんじろうは、「笑いにするなら相手への尊敬と愛情、そして覚悟が必要。色々な意見が出ることを予測し、批判に対して声を上げるのがプロデューサーの役目。そうでないとタレントだけが批判される」と批判に対して応えなかった番組側の姿勢に対して批判し、「日本が国際社会というなら、世界の常識や歴史的背景を知り、配慮する番組作りというのも大切になってくるのでは」と朝日新聞の記事の中で述べた。 メディア研究家の衣輪晋一は、オリコンに寄せた記事の中で、一般ユーザー1,000人に調査した結果、「黒塗りメイクを差別だと思う」が7.9%、「黒塗りメイクを差別だと思わない」が55.6%、「どちらともいえない」または「わからない」という回答が36.5%を占めたことを明らかにし、同時に行われたバラエティー番組演出の規制が厳しくなったことについての調査結果として、「妥当だと思う」という回答が18.2%、「妥当ではないと思う」が43.9%、「どちらともいえない」又は「わからない」という回答が37.9%を占めたということも明らかにした。衣輪はこれらの調査結果や松本のコメントを分析し、視聴者にとってもこの問題が流動的でとらえにくいという見解を示した。また衣輪は、数日後に寄せた記事の中で、「『誰かが傷つくことはやるべきではない』とは考えるが、黒人を差別してきた欧米の歴史や責任を押し付けられている違和感があった。」と述べ、日テレの姿勢についても「年末の風物詩である“ガキ使”までも終了の憂き目にあるのは御免被りたいとする意志の表れのようにも思える」と語った。 日本で活躍する黒人お笑いタレントのアイクぬわらはBLM運動と共にこの件に触れ、「決して、黒人をバカにしていたわけじゃないと思います。でも、海外の人はそういう背景を知りません。海外では白人が顔を黒く塗って黒人をバカにしていた歴史があり、ゆえに差別と思われたんです。互いが互いの文化・歴史を知らないからの悲劇。どちらも知っている僕としては、とても残念な事件でした。」と評している。
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