改正内容の概括
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/28 15:11 UTC 版)
「文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約」の記事における「改正内容の概括」の解説
1886年署名・1887年発効の原条約 (ベルン) では、すでに内国民待遇が盛り込まれていた。しかし今日と異なり、著作権の保護期間は本源国の著作権法で定めた年数を超えることはできず、また翻訳の保護期間は、著作物の発行から10年までしか認められていなかった。また、方式主義と無方式主義については定めはなく、各国の著作権法の規定に準じていた。以降の改正ポイントについてまとめていく。 1896年第1回改正 (パリ) ルクセンブルクやノルウェーなどが追加加盟して14か国に達していた。主な改正ポイントは、遺作も保護対象に追加にした点、および同盟国民でなくとも同盟国内で最初に発行すれば保護対象に含めた点である。 1908年第2回改正 (ベルリン) 前回改正時以降、日本、デンマーク、スウェーデン、リベリアが追加加盟していた。主な改正ポイントとしては、無方式主義を義務化したことに加え、保護期間を死後50年に延伸したほか、原条約で定められていた翻訳権の制限条件を廃止した点などが挙げられる。 1914年の追加議定書 同盟18か国が署名している。この追加議定書では、非同盟国が同盟国の著作者による著作物を十分保護しなければ、相手国の著作物も保護しないとの内容を追加された。その背景として、ベルヌ条約非同盟国である米国に対し、ベルヌ条約同盟国である英国が片務的だとして不満を抱いていたことが挙げられる。非同盟の米国著作者が、英国やその植民地で最初に著作物を発行した場合は、英国などは著作権保護の義務を負っていた。その一方で、米国は1891年に通称チェース法を成立させ、著作物の製造条項を設けていた。この製造条項により、米国民以外が米国外で印刷したものを米国に輸出販売できなかった。1909年の米国著作権法改正により、製造条項の部分廃止がなされたものの、この部分廃止から英語著作物は除外されていたことから、英国の著作物は製造条項の制約を受け続けた。 1928年第3回改正 (ローマ) オーストリア、オーストラリア、ブラジル、カナダ、インドなどが新規加盟し、加盟国は17か国から36か国に増えていた。主な改正ポイントは、口述著作物の保護明記 (ラジオ普及に伴う)、著作者人格権を明記 (ただし権利行使は国内法にて定め、かつ死後の権利存続には触れられず)、共同著作物の権利保護期間を最終死亡者起点で算出、映画化権の規定適正化などである。 1948年第4回改正 (ブリュッセル) 第二次世界大戦後の初改正であり、加盟国数は40か国と微増に止まった。ただし、当改正の会合には非同盟国からはアルゼンチン、チリ、中国、米国など18か国、またUNESCOもオブザーバーとして参加している。主な改正ポイントは、応用美術(地理学、地形学、建築学、その他科学に関する地図、図解、略図、模型)を著作物の保護対象として追加すること、時事報道のための複製条項 (10条の2) にて国内法に委ねること、ラジオなどの公衆伝達権の許諾と媒体固定の許諾を別途必要とすること、朗読権の許諾を明記したこと、加盟国間の紛争に関し国際司法裁判所の管轄権を規定したこと (27条の2) などである。 1967年第5回改正 (ストックホルム) 改正ポイントとしては、未発行著作物も保護対象に含めること、同盟国民だけでなく同盟国の居住者も著作物保護の対象に含めること、媒体への固定要件を一部緩和したこと、著作者人格権の保護を著作者の死後も永続すると明記したこと、著作権保護期間を映画著作物は発行から50年とし、応用美術と写真は創作から25年に定めたこと、映画著作物の利用に関する規定を設けたこと、そして発展途上国に関する附属書を追加で盛り込んだことが挙げられる。しかしながらこれらを実体的に定めた第1条から第20条、および発展途上国向けの附属書は発効に必要な批准国数に満たなかったため、第22条から第38条の条約管理・運営に関する規定のみ発効している。その背景には、1950年代の国際的な植民地独立によって世界の著作権法に格差が生まれたことが挙げられる。ストックホルム改正の協議時点でベルヌ条約総加盟国数の1/3が発展途上国で占められ、また、加盟58か国中16か国は最新版の第4回ブリュッセル改正版を批准・加入していなかったことがある。 1971年に第6回改正 (パリ) 特に発展途上国に関する附属書は、第5回ストックホルム版から修正が加えられ、発展途上国向けの特別措置が講じられている。一方、全加盟国に適用される第1条から第20条は、第5回ストックホルム版をそのまま踏襲した。 その後、条約の管理・運営規定の修正のみ1979年に発生しているものの、著作権保護の実質法については、第6回パリ改正版が最終である。
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