投機としての機能
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/15 22:49 UTC 版)
先物取引では以下のような場合に、その差額を利益として得ることが出来る。 今後の価格の上昇を予想して商品を購入し、実際に商品価格相場が上昇して売却した場合。 価格の下落を予想して商品を売却し、実際に商品価格相場が下落して買い戻しを行った場合。 現物を持ち寄らずに、紙上や電子的に取引を行うため、市場(いちば)よりも大規模な取引を行なうことが可能で、商品を取引する上での世界的な価格指標となる。また少額の現金のみで取引できる「証拠金取引」であるため、レバレッジ効果によって利益・損失とともに莫大になりやすい。 投機は、本来そこに投機を誘発する原因があるから、起こる現象で、その大元の歪を絶たなければ投機を絶滅することはできない。投機は結果であって原因ではない。そして、その投機の結果、暴騰や暴落が決定的になるだけである。例えば、品薄やインフレ懸念が換物思想を招いて投機買いを招くのである。しかし、もし投機を全面否定すれば、誰かが、大きな犠牲を払わなければ経済は安定しない。 又、投機を除去しようと思えば、投機が介在する余地がないような安定政策とらなければならない。例えば、日本における戦時からの統制政策、米の政策における多額の国庫負担及び消費者過大負担、電電公社の通信の独占により競争原理が働かないことによる長距離通話の高額通話料金や電力小売りの地域独占により競争原理が働かないため高額電力料金などによる消費者過大負担などが該当する。 先物市場だけでなく、原材料、不動産、設備投資など不確実性な将来の思惑、見通しを基につまり投機によって各産業が支えられ資本主義そのものが成立している。 言い換えれば、各産業で、投機を抑制すればその産業が衰退していく。又、将来の思惑、見通しがない中、負債を拡大させながら商売を続ける商人もあり、投機ともいえない状況も存在し、区別する必要がある。投機を行う者にとっては、リスクヘッジ目的の取引の場合と異なりその株式や商品、債権等自体が重要なわけではない。 取引参加者は、取引対象の株価や商品、債権価格等を左右するような情報を手に入れるなどして将来の政治・経済・財政等の見通しから将来の価格を予測し、先物取引によって利益を得ようとする。リスクヘッジ取引と同じく、先物の購入または売却を行い、期限前に反対売買をすることで差金決済する。 また実需を行う買い手にとってはリスク軽減の効果もある。買い手が指定倉庫に近ければコスト運搬コストも下げる事が出来る。 特定の思惑に偏らない多種多様な思惑の投機が存在することにより、先物市場の取引規模は増大し流動性が高まる。また、結果的には、投機による高い流動性がリスクヘッジを引き受けたり(特定の思惑に偏りがちなリスクヘッジ取引だけでは取引がうまく成立しにくくなる)、大小様々な情報を価格へ織り込む役目を行なっていることになる。これにより、先物市場の有用性が高まるが、一方でレバレッジを活用した巨額の取引により、意図的に価格を吊り上げたり、逆に売り崩したりする場合があり、市場の混乱の一因ともなる。 一般的な投機的危険性を抑えた取引として、投機等により生じた限月間や現物、先物間等との価格差に着目した鞘取りという取引もある。 例えば、同一銘柄における東京(の小豆)と大阪(の小豆)などといった地域間や現物株、株価指数先物間の裁定取引(市場間鞘取り、アービトラージ、arbitrage)や期近と期先との間等に着目した限月間鞘取り(スプレッド、spread)、ガソリンと灯油などといった商品間鞘取り(ストラドル、straddle)といった取引がある。 又、この取引を収益源とする裁定取引を行う証券会社や商品取引を行う個人投資家などがいて、さらに長期清算取引における個別株の好況時等で開いた当限と先限との鞘を狙い株式を現受し、のちに、品渡しをする。そのために、現受のための銀行からの融資を受けても採算が取れるケースもあり、これを営業の本位とした清算取引が行われていた時代の取引員(現行での証券会社に相当する)がいたようであり、商品にも同様の鞘取り方法がある。また、鞘取りは、ある程度を越した値開きが生じれば、安いところを買い高いところを売る市場参加者が増えるため、限月間にしろ、地域間にしろ物価を平準する作用がある。 その他の鞘に注目した手法として、鞘出世取りや鞘滑り取り(ローリング)がある。例えば、ゼロ金利と配当金の支払いを考慮されているため、数年単位で見ると恒常的に逆鞘にある日経225先物を買ったり(鞘出世取り)、順鞘のニューヨークコーヒーを売る(鞘滑り取り)などして鞘幅を狙う方法もある。その他、先物取引にオプション取引を絡ませて、いっそう複雑なポジションを構成することもできるなど、先物取引の手法のバリエーションは多彩である。 数ある利殖法の内、鞘取り、鞘滑り取り及びオプションの売りは、世界三大利殖法とも称せられている。 取引期限が超えるような長期的な思惑や、流動性リスク(中心限月から外れる時など)を避ける場合などがある場合は、ロールオーバー(乗り換え)と呼ばれるそれまで維持していた建玉を決済し、取引期限がより先となる限月に建て直す方法により思惑を維持する方法がある。しかし、限月間の価格差(鞘関係)には注意が必要で、委託手数料も発生する。 賭博とは、「確実には予見できない事実に関して勝敗を決する方法によって財産上の利益を争う行為」であると考えられている。そして、「国民の射幸心をあおるのは勤労によって財産を得ようとするという健全な経済的風俗を害する」(最高裁昭和25年(れ)第280号同25年11月22日大法廷判決 刑集第4巻11号2380頁)ため、賭博行為を厳しく規制している(刑法第185条、同法第186条)。 先物取引も、取引内容次第では、取引所投機が賭博類似行為であり、実質的には、賭博行為となるため、大幅な債務超過となるなど多額の負債をかかえたり、射幸心をあおるなどの側面もあるが、法令又は正当な業務により違法性が阻却されると考えられている(刑法第35条)。
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