平成19年以降の規制改革の動向
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「薬事法と食品表示・食品広告」の記事における「平成19年以降の規制改革の動向」の解説
2007年(平成19年)11月10日、日本経済団体連合会が内閣府に対し、ヘルスケア産業の規制改革4項目を要望した。これに対する厚労省の回答は同年12月11日に発表された。 日本経団連の主張の1つは、米国には、食品会社の責任で病名を含む効能効果の表現を可能とする表示制度(DSHEA法=栄養補助食品教育法)があり、日本にも同様の制度を導入すべきというものであった。しかし、厚労省は規制改革に反対する回答を行った。 2007年12月4日には超党派の議員団体「健康食品問題研究会」(石崎岳会長)が発足した。同研究会は、2008年2月7日〜6月12日に9回会合を開き、有識者から海外の法体系、健康食品の安全性などについてヒアリングした。「サプリメント法」を支援している。石崎岳氏は2009年8月30日の第45回衆議院議員総選挙で落選し、同研究会は活動を停止した。 健康食品の法制化を目指す「エグゼグティブ会議」(大濱宏文議長)が2008年5月26日に「サプリメント法」の骨格案を示した。骨格案では、有効性・安全性の科学的根拠を第三者データベースで公開することを前提に効能効果表示を認めること、パッケージ表示と同義の広告表現を認めること、などを求めた。 2009年4月に(財)日本健康・栄養食品協会など健康食品関連8団体による「健康食品産業振興検討会」の設立が発表された。同検討会のもとに置かれた「安全性・有効性表示に関するガイドライン作成プロジェクト会議」が、2009年6月に「有効性評価のガイドライン」と「有効性表示のガイドライン」の検討を始めた。 規制改革を求める声が高まっているが、日本では、事業者のコンプライアンス意識が低いこと、消費者の自己責任原則が確立されていないことから、規制改革には反対の声も少なくない。また、食品だけでなく医薬品の表示・広告に関する審査が厳しいことから、規制改革には時間がかかるとの見方が強い。 なお、2009年以降、欧州食品安全機関(EFSA)において、食品のヘルスクレーム(健康強調表示)を認めるかどうかの検証が行われている。内容は「コエンザイムQ10とエネルギー産生」「プロポリスと免疫」「リコピンと肌の保護」など4240項目に及んでいる。欧州でのヘルスクレームの検証の結果が、日本の効能効果表示に影響を与える可能性もある。 2009年9月に発足した消費者庁は、エコナの安全性の問題を契機に、特定保健用食品を含む健康食品の表示について、2009年11月に「健康食品の表示に関する検討会」(座長:田中平三・甲子園大学学長)を設置した。検討会は2010年8月27日に「論点整理」を公表した。論点整理では、特保の機能が消費者に適切に伝わるように、表示と広告を改善すること(摂取対象者や期間の表示義務づけ、誇大広告の禁止)などが盛り込まれた。特保以外の食品で、どのようなエビデンスがあるときに、どのような効能効果表示を可能とするか(または現状どおり禁止とするか)などについて、検討会では具体的な議論はなかった。 上記検討会の論点整理にある「一定の機能性表示を認める仕組みの研究」に基づき、消費者庁は2011年度に「食品の機能性評価モデル事業」を行った。同事業では「セレン、n-3系脂肪酸(オメガ3)、ルテイン、CoQ10、ヒアルロン酸、ブルーベリー(ビルベリー)エキス、グルコサミン、BCAA、イチョウ葉エキス、ノコギリヤシ、ラクトフェリン」の11成分について、国内外の研究を調査し、機能性を評価した。 調査結果は2012年4月25日に、A〜Fの6段階評価で公表され、A評価(機能性について明確で十分な根拠がある)はオメガ3(EPA/DHA)の3機能「心血管疾患リスク低減」「血中中性脂肪低下作用」「関節リウマチ症状緩和」となった。今後はこういった評価が、機能性表示にどう結びついていくか(結びついていかないのか)が注目される。 2013年6月14日に閣議決定された「規制改革実施計画及び日本再興戦略」の中で、加工食品及び農林水産物について、企業等の責任で科学的根拠をもとに機能性を表示できる新たな方策を検討し、2015年3月末までに実施することが盛り込まれた(これに先立ち、主婦連合会等の消費者団体は6月12日に、規制緩和に反対する意見を発表した)。 閣議決定を受けて消費者庁は、2013年12月20日に「食品の新たな機能性表示制度に関する検討会」(座長・松澤佑次大阪大学名誉教授)を発足させた。検討会は8回の会合(毎月1回)により、2014年夏までに報告書とりまとめる予定。消費者委員会の意見聴取、パブリックコメント募集を経て、制度改正が行われ、Q&Aの作成、説明会による周知の後、2015年(平成27年)4月に『機能性表示食品』制度が実施された。機能性表示食品は、2020年までに3000件以上の届出があり、健康食品市場で機能性表示食品が占める割合は大きい。
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