ノコギリヤシとは? わかりやすく解説

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のこぎり‐やし【××椰子】


ノコギリヤシ

北米南東部海岸地帯原生するヤシ科植物です。 秋になるとオリーブ大の果実ができ、この実のエキスによる健康作用は、アメリカ先住民のあいだで古くから知られいました

ノコギリヤシ、ソーパルメット


ノコギリパルメット

(ノコギリヤシ から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/05 14:40 UTC 版)

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ノコギリパルメット
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 単子葉類 monocots
階級なし : ツユクサ類 commelinids
: ヤシ目 Arecales
: ヤシ科 Arecaceae
亜科 : タリポットヤシ亜科 Coryphoideae
: ノコギリパルメット属[1] Serenoa
Hook.f.
: ノコギリパルメット S. repens
学名
Serenoa repens
(W.Bartram) Small[2][3]
シノニム

Sabal serrulatum[3]

和名
ノコギリパルメット[1][4]
ノコギリヤシ[1]
英名
saw palmetto
Sabal[5]

ノコギリパルメット学名Serenoa repens、英名:saw palmetto[6])はヤシ科ノコギリパルメット属(ノコギリヤシ属[5])のヤシの1種。和名ノコギリヤシ(鋸椰子)[1]英語名からソウパルメット[6] とも呼ばれる。ノコギリパルメット属[1]単型

名称

"palmetto"とは、本種のような扇形の葉をもつヤシの意味を持つ[7][8]。属名はアメリカ人植物学者Sereno Watsonへの献名である。

分布

北米の原産[5]米国南西部固有種で、大西洋岸平野からメキシコ湾岸低地で一般的だが、アーカンソー南部などの内陸でも見られる。砂浜に密に群生するか林・広葉樹ハンモックの下生えとして見られる。

特徴

フロリダ、アパラチコーラ国立森林のノコギリパルメット

長寿で、特にフロリダには樹齢500 – 700年と推定される個体もある[9]

小さなヤシで高さ2 – 4 mになる[10]。幹は不規則に伸び、丈夫な植物で成長は極端に遅い。掌状ヤシで無毛の葉柄を持ち、には約20の小葉が付く。葉柄は細かく鋭い棘で覆われており[5]、和名や英名の由来となった。刺は容易に皮膚を傷つけるので、近づく際には注意が必要である。葉の色は内陸では明るい緑、沿岸では銀白色。葉は長さ1–2m、小葉は50 – 100 cmになり、サバル属のものと似ている。は淡黄色で幅5mm、長さ60cmの密な円錐花序を形成する。果実は大きく赤黒い核果で、野生動物や人の食料として重要である。未熟な果実は苦い。チョウ目幼虫の食草ともなり、特にホソキバガの一種Batrachedra decoctorは本種を専食する。

人間との関係

欧州人との接触以前、繊維はウィスコンシンやニューヨークまで広く取引されていた[11]。葉は茅葺屋根に用いられた[12]。果実は、味はほとんどないが発酵性の香りがあり、飲料用、薬用、ヘルスケア用に使われる[5]。また、果実は魚中毒の治療薬として用いられた可能性がある[13]

医療用途

果実は、北米の先住民が「植物性のカテーテル」として用いてきたとされ、男性の前立腺肥大症前立腺炎による残尿感や、頻尿の改善に使われる[5]。果実は脂肪酸フィトステロールに富み、その抽出物は前立腺肥大症 (BPH) の治療薬として研究されている。

脱毛症[14]多嚢胞性卵巣症候群などの高アンドロゲン状態にも用いられているが、その場合の効果は実証されていない。

欧州では伝統生薬製剤の欧州指令に従い医薬品ともなっている。インドの伝統医学アーユルヴェーダでは、男女を問わない若返り作用があるとして、強壮剤としても扱われている[5]

有効性

多くの臨床試験のメタ分析からは、抽出物は軽-中度のBPHに対してフィナステリドタムスロシンより安全で効果的であるという結論が出た[15][16] しかし、その後の2つの大規模臨床試験ではプラシーボとの差異は見いだせず[17][18]、これらを含めたメタ分析では「BPHによる尿路症状に対してはプラシーボより効果的とは言えない」という結果となった[19]。これらの臨床試験は1年間で行われたが、2年間を超えて使用するとその効果はフィナステリド・タムスロシンに匹敵し、手術が必要となる確率を低下させたという報告もある[20]

保全状況

出典

  1. ^ a b c d e 大場秀章編著『植物分類表』アボック社、2009年11月2日(2010年4月20日初版第2刷(訂正入))、61頁、ISBN 978-4-900358-61-4
  2. ^ Serenoa repens (W. Bartram) Small”. Germplasm Resources Information Network. United States Department of Agriculture (1997年5月22日). 2010年4月12日閲覧。
  3. ^ a b the Royal Botanic Gardens, Kew and Missouri Botanical GardenSerenoa repens」『The Plant List』(2015年5月9日閲覧)
  4. ^ saw palmetto」『プログレッシブ英和中辞典(第4版)』コトバンク(2015年5月15日閲覧)
  5. ^ a b c d e f g 伊藤・野口監修 誠文堂新光社編 2013, p. 86.
  6. ^ a b ノコギリヤシ、ソウパルメット - 「健康食品」の安全性・有効性情報(国立健康・栄養研究所) 2013年5月9日閲覧
  7. ^ palm は手のひらの意。
  8. ^ palmetto」『プログレッシブ英和中辞典(第4版)』コトバンク(2015年5月15日閲覧)
  9. ^ Tanner, George W.; J. Jeffrey Mullahey; David Maehr (July 1996) (PDF). Saw-palmetto: An Ecologically and Economically Important Native Palm. Circular WEC-109. University of Florida Cooperative Extension Service. http://edis.ifas.ufl.edu/pdffiles/UW/UW11000.pdf. 
  10. ^ Barnard, Edward S. & Yates, Sharon Fass, ed (1998). “Trees”. Reader's Digest North American Wildlife: Trees and Nonflowering Plants. The Reader's Digest Association, Inc. p. 131. ISBN 0-7621-0037-0 
  11. ^ Whitford AC (1941). “Textile fibers used in eastern aboriginal North America”. Anthropological Papers of the American Museum of Natural History 38: 5-22. 
  12. ^ Simpson, JC (1956). A Provisional Gazetteer of Florida Place-Names of Indian Derivation. Tallahassee: Florida Geological Survey 
  13. ^ Sturtevant, WC (1955). The Mikasuki Seminole: Medical Beliefs and Practices. Ann Arbor, MI: University Microfilms 
  14. ^ Prager N, Bickett K, French N,Marcovici G (2002). “A randomized, double-blind, placebo-controlled trial to determine the effectiveness of botanically derived inhibitors of 5-a-reductase in the treatment of androgenetic alopecia”. J Altern Complement Ther 8: 148-52. doi:10.1089/107555302317371433. PMID 12006122. 
  15. ^ Wilt T, Ishani A, Mac Donald R (2002). Tacklind, James. ed. “Serenoa repens for benign prostatic hyperplasia”. Cochrane Database Syst Rev (3): CD001423. doi:10.1002/14651858.CD001423. PMID 12137626. 
  16. ^ Boyle, P; Robertson C, Lowe F, Roehrborn C (Apr 2004). “Updated meta-analysis of clinical trials of Serenoa repens extract in the treatment of symptomatic benign prostatic hyperplasia”. BJU Int 93 (6): 751–756. doi:10.1111/j.1464-410X.2003.04735.x. PMID 15049985. 
  17. ^ Bent S, Kane C, Shinohara K, et al (February 2006). “Saw palmetto for benign prostatic hyperplasia”. N. Engl. J. Med. 354 (6): 557–566. doi:10.1056/NEJMoa053085. PMID 16467543. 
  18. ^ Dedhia RC, McVary KT (June 2008). “Phytotherapy for lower urinary tract symptoms secondary to benign prostatic hyperplasia”. J. Urol. 179 (6): 2119–2125. doi:10.1016/j.juro.2008.01.094. PMID 18423748. 
  19. ^ Tacklind, J; MacDonald R, Rutks I, Wilt TJ (April 2009). Tacklind, James. ed. “Serenoa repens for benign prostatic hyperplasia”. Cochrane Database Syst Rev (2): CD001423.. doi:10.1002/14651858.CD001423.pub2. PMC: 3090655. PMID 19370565. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3090655/. 
  20. ^ Djavan B, Fong YK, Chaudry A, et al. (2005). “Progression delay in men with mild symptoms of bladder outlet obstruction: a comparative study of phytotherapy and watchful waiting”. World J Urol 23 (4): 253-6. doi:10.1007/s00345-005-0005-7. PMID 16175413. 

参考文献

  • 伊藤進吾、シャンカール・野口監修 誠文堂新光社編『世界で使われる256種 ハーブ&スパイス辞典』誠文堂新光社、2013年12月23日、86頁。 ISBN 978-4-416-61364-1

外部リンク


ノコギリヤシ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/13 05:42 UTC 版)

脱毛の治療」の記事における「ノコギリヤシ」の解説

ノコギリヤシ(saw palmetto, Serenoa repens)はDHT阻害作用のある薬草であり、一般よりも安価で、フィナステリドデュタステリドよりも副作用少なと言われている。他の5αリダクターゼ阻害薬とは異なり、ノコギリヤシのエキステストステロンからDHTへの変換阻害する時にPSA分泌抑制行なわないフィナステリド5αリダクターゼ主要なアイソエンザイムであるtype2のみを阻害するのに対し、ノコギリヤシはtype1, 2両方アイソフォーム抑制する。.ここで注意しなくてはいけないのは、こうしたin vitro生体外)で示されDHT阻害作用が必ずしもin vivo生体内)での効果意味するのではないということである。脱毛症に対して6か月間の調査行なった予備研究では6割に改善見られとのことだが、使用した用量については報告されていない。この研究小規模なもので、期間も比較的短いことに注意されたい。 ノコギリヤシが脱毛症何らかの効果がある、とするこの唯一の報告信頼性が高いものではない。PubMed唯一検索され論文はノコギリヤシエキスの製造元により発表されたものであり、2003年1月全米放送されテレビ番組20/20」では「たわごと」とされた。これは研究対象10人のみであり、調査期間も6か月短かった点による。

※この「ノコギリヤシ」の解説は、「脱毛の治療」の解説の一部です。
「ノコギリヤシ」を含む「脱毛の治療」の記事については、「脱毛の治療」の概要を参照ください。

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