南北アメリカ大陸における砂糖栽培
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/23 06:12 UTC 版)
「砂糖の歴史」の記事における「南北アメリカ大陸における砂糖栽培」の解説
ポルトガルがブラジルに砂糖を持ち込んだ。1540年までにはサンタカタリーナ諸島に800ものサトウキビ製糖所ができ、ブラジル北岸、デメララ、スリナムにもさらに2000ほどの製糖所があった。この地域で最初の砂糖の収穫はイスパニョーラ島で1501年に行われた。1520年代までには、キューバやジャマイカにも多数の製糖工場が作られた。 1550年になるまでに3000ほどの小さな製糖工場がこの地域に建設されたため、搾汁機に用いる鋳鉄の歯車、レバー、軸などの装置の需要がいまだかつてないほど高まった。砂糖生産の増加により、鋳型や鋳鉄の製造に関わる専門的な技術がヨーロッパで発達した。製糖工場の建造により、産業革命の始まりに必要となる技術が17世紀初頭には発展しはじめるようになっていた。 この時期の人々は、しばしば砂糖を麝香、真珠、スパイスなどの貴重な商品になぞらえた。とくにイギリスの植民地政策によって生産地が増えるにつれて、砂糖の価格は徐々に下がるようになった。かつては富裕層のみが楽しめるものだったが、砂糖の消費はだんだんと貧しい人々にも広がるようになっていった。砂糖の生産は北アメリカ本土の植民地、キューバ、ブラジルで増加した。初期の労働力には、ヨーロッパから来た年季奉公労働者や、地元のネイティヴアメリカンの奴隷などがいた。しかしながら天然痘などヨーロッパの病気と、マラリアや黄熱病などアフリカの病気のせいで、地元のネイティヴアメリカンの数がすぐに減少した。ヨーロッパ人もマラリアや黄熱病にとても弱く、年季奉公労働者の供給は限られていた。マラリアや黄熱病に対する抵抗力がより強く、アフリカの海岸地域から奴隷を豊富に供給できたため、アフリカから連れて来られる奴隷がプランテーションにおける労働力の主要な供給源となった。 18世紀には砂糖の人気がたいへん高まった。例えば、イギリスでは1770年の時点で1710年の5倍の砂糖が消費されるようになった。1750年には、砂糖は穀物を凌ぐ「ヨーロッパ貿易で最も貴重な商品」となった。当初、イギリスにおける砂糖の消費はほとんどお茶に入れる用途であったが、のちには菓子類やチョコレートが大変人気になった。イギリス人の多く、とくに子供たちはジャムも好んで食すようになった。 プランテーション経営者は、さらに生産量を増やす手法を開発しはじめた。新しい農法を用い、さらに先端的な搾汁機を発達させ、改良されたサトウキビを使い始めた。18世紀には、「フランスの植民地が最も成功しており、とくにサン=ドマングにはより良い灌漑、水力、機械があり、新種の砂糖に注力したのとあいまって利益が増えていたので、成功が顕著だった」。 サトウキビのせいですぐに土壌がやせるため、19世紀にヨーロッパでの砂糖消費が増加し続けるにつれて、プランテーション経営者はより土壌が新鮮で広い島々を求めた。「イギリスにおける砂糖の平均消費量は1700年の1人あたり4ポンドから1800年18ポンドに増加し、1850年には36ポンドに、20世紀までには100ポンドを超える量になった」。19世紀には、この地域で唯一の山地がない主要な島であったため、砂糖を主作物とするキューバがカリブ海地域で最も富裕な地域になった。キューバの4分の3はなだらかに起伏した平地で、作物を植えるには理想的であった。キューバはサトウキビ収穫に際してより良い手法を採用していたこともあり、他の島よりも繁栄していた。水車や密閉式の炉、蒸気機関、真空鍋のような現代的な搾汁方法を採用していたのである。こうした技術のおかげで生産性が向上した。さらにキューバではカリブ海の他の島よりも長く奴隷制が残存した。 ブラジルでは長く砂糖の製造が根付いており、南アメリカの他の地域や、アフリカにできたより新しいヨーロッパの植民地にも広がった。太平洋地域の植民地にも広がり、フィジー、モーリシャス、ナタールでとくに重要な産業となり、オーストラリアのクイーンズランドでも砂糖栽培が始まった。新旧の砂糖プランテーションは奴隷ではなく年季奉公労働者を雇うことが多くなった。労働者は「世界中から集められ、(中略)長い時は10年にもわたってほとんど奴隷のような状況に置かれる。19世紀の後半には45万人以上の年季奉公労働者がインドから英領西インド諸島に移動し、ナタール、モーリシャス、フィジーに行く者もいて、こうした地域では人口の多数を占めるようになった。クイーンズランドでは労働者が太平洋の島々から移入してきた。ハワイでは中国や日本から労働者が移住した。オランダはジャワ島からスリナムへ多数の人を移動させた」。21世紀になってもサトウキビ産業には強制労働や児童労働が残り、深刻な状況を呈していることが知られており、規制強化が主張されている。
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