南北アメリカ大陸の発見
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/25 14:53 UTC 版)
「アトランティス」の記事における「南北アメリカ大陸の発見」の解説
1492年に、ヨーロッパ人がアメリカ大陸に遭遇すると、アフリカ・アジア・ヨーロッパというノアの息子たちの末裔が暮らす3大陸からなるユダヤ・キリスト教の世界観が覆され、キリスト教と無縁に見える新大陸とその住人を説明するため、アトランティス、アトランティス人が用いられるようになった。1553年に中米のアステカを征服したコンキスタドール、エルナン・コルテスの従軍神父で、スペインの新大陸征服の歴史の本を書いたフランシスコ・ロペス・デ・ゴマラ(英語版)は、アトランティス人の生き残りが新大陸に逃れ、定住したのではないかという説を提唱した。ゴマラを始め幾人かのスペイン人は、アトランティス人が新大陸に人が住み着くのに重要な役割を果たしたと考え、彼らはアトランティスの実在を信じていた。しかし、こうした説は完全に支持されていたわけではなく、17世紀にはほとんど信憑性はなくなっていた。 このようにスペインではアメリカ先住民=アトランティス人説が唱えられていたが、北ヨーロッパではこの説は全く支持されず、主要な知識人はプラトンのアトランティスは寓話か神話であると考えていた。イエズス会の伝道師だったホセ・デ・アコスタ(1539/40-1600)はアトランティス人がアメリカ大陸に移住したという説を完全に否定し、17世紀以降の主な知識人たちも懐疑的で合理的なアコスタの説を支持した。16世紀のイタリアの科学者ジローラモ・フラカストロ(1478-1553)は1530年の叙事詩『梅毒あるいはフランス病』で、アメリカはより広かったアトランティスの名残であるという説を唱え、幾人もの著作家がこれを踏襲したり、同じ説にたどり着いたが、誰もが賛成したわけではない。 フランシス・ベーコンは1610年『ニュー・アトランティス』で、アメリカをアトランティスの名残とする説を紹介して、普及させた。ベンサレムというキリスト教徒が住む文明のある島、ニュー・アトランティスの話は寓話であり、当時の地理の知識でも創作であることは明らかだったが、当時あり得ること、真実ととらえる人もおり、今もそう信じる人はいる。アメリカ=アトランティス説は、その後200年以上、一考の価値のある説として受け継がれ、19世紀前半にはアトランティス学の主流だった。しかし、少なくない知識人がこれに賛同せず、プラトンの記述通り大西洋にあったと考えた。 イエズス会のアタナシウス・キルヒャーは、南北を逆にした、アトランティスをスペインとアメリカの間にある巨大な島として描いた地図を作り、聖書にある大洪水にアトランティスの滅亡が含まれるというコスマスの説を復活させた。 アトランティスの場所の説は、意識的であれ無意識的であれ、唱える人の自国の利益が配慮されており、例えばスウェーデンが列強に名を連ねた時代のスウェーデン人知識人オラウス・ルドベック(1630-1702)は、アトランティスは文明の源泉であり、ウプサラ地方のスウェーデンだったという説を唱えた。この説は現代人から見れば妄想ともいえる作り話だが、彼の著作『アトランティカ』は広く読まれ、ピエール・ベール、アイザック・ニュートン、ゴットフリート・ライプニッツ、シャルル・ド・モンテスキューなどの当時の著名な知識人から高く評価された。しかし、スウェーデンが没落すると、この説は忘れられてしまった。(参考:オエラ・リンダの書) 様々なアトランティスの説は、当時においてはそれなりに確かな根拠を持って唱えられ、信じられていたが、アトランティスをめぐる科学、歴史、考古学が進むにつれ、欠陥や不正確さが明らかになり、プラトンが書いたアトランティスの実在への疑いは深まっていった。これに逆行するように大衆レベルでのアトランティスへの興味が高まり、1870年フランスの人気作家ジュール・ヴェルヌがSF小説『海底二万里』で海中に没したアトランティスの姿を描き、欧米の大衆文化にアトランティスという概念を広め、大衆におけるアトランティスブームの先駆けとなった。 1873年にハインリヒ・シュリーマンが財宝を発掘し伝説のトロイアを発見したと喧伝すると、19世紀後半には植民地競争と相まって超古代探検の熱気が高まり、フランスの探検家ジャン・バティスト・ボリ・ド・サン=ヴァンサンがカナリア諸島がアトランティスの残滓で、地中海にある遺跡もアトランティスの痕跡であると主張すると、アトランティス探索は大流行した。
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