動力集中方式と動力分散方式とは? わかりやすく解説

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動力集中方式と動力分散方式

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/30 02:51 UTC 版)

鉄道車両」の記事における「動力集中方式と動力分散方式」の解説

鉄道車両推進する動力配置の仕方としては、動力集中方式と動力分散方式がある。動力集中方式は、編成中の動力はすべて機関車集中しており、それ以外客車貨車機関車に牽かれて走るのみの方式である。これに対して動力分散方式では、特定の車両動力集中させるではなく編成中の各車両分散して動力搭載する。 図に概念を示す。図中赤く塗られてMと書かれているのが車両動力車で、白抜きにTと書かれているのが動力のない付随車である。動力分散方式において、動力車付随車割合形式によって様々である。この割合のことをMT比といい、図の例では4M2Tと表現される。 動力集中方式と動力分散方式の得失以下のとおりである。 車両製造費用 動力集中方式動力車である機関車は、すべての動力機能集中して備えているため高価である。これに対して動力分散方式車両は、動力車付随車異なるが、機関車よりは安価である。動力集中方式付随車はこれよりも安い。したがって製造費用動力集中方式動力車 > 動力分散方式車両 > 動力集中方式付随車という式が成り立つ。同じ程度輸送力発揮できる編成比較すると、12編成場合動力分散方式車両がすべて動力車 (12M) ならば動力分散方式の方が高く、6M6Tの場合同等、4M8Tの場合動力分散方式の方が安いという試算なされている。ただしこの例では、動力集中方式列車について折り返し駅での機回し省略するために両端機関車繋いだ構成考えているため、機回しを行うことを前提にすれば機関車を1両削減できて、動力集中方式により有利となる。 車両保守費用 動力搭載している車両搭載していない車両比べて保守手間がかかるため、動力集中方式の方が動力分散方式より有利であると以前考えられてきた。しかし、動力集中方式列車では多く車両回生ブレーキ使用できず機械ブレーキ使用することになるため、摩耗する部品保守量が増加するという問題がある。その後保守作業量の多い直流電動機から保守作業量を少なくできる交流電動機移行するにつれて機械ブレーキ保守量の問題の方が大きくなってきた。ドイツ鉄道ICE1(2M12T、623席)と東日本旅客鉄道JR東日本)の200系(12M、885席、この電車はまだ直流電動機である)の比較では、どちらも1年間ののべ保守時間が17500時間であるとする比較がある。 エネルギー消費 エネルギー消費については、編成全体合計質量小さくなる動力集中方式の方が少なく有利であるとされる。ただし、減速時モーター発電して架線電力返す回生ブレーキ普及しており、これは動力集中方式列車では動力車以外で使用できず、機械式ブレーキ負担率が大きくなるという問題がある。 乗り心地 動力分散方式車両では床下動力機器搭載しているため、騒音振動車内伝わりやすく、乗り心地の面では動力集中方式比べて不利である。ただし動力分散方式でも技術の進歩により乗り心地改善進んでいる。 線路への影響 動力集中方式列車は、動力集中した機関車が特に重くなり、走行することによる線路への悪影響大きくなる線路許容できる軸重限られている区間では、重量大きな機関車入線制限されるが、動力分散方式ではそのような制限影響することはあまりないまた、線路建設費および保守費に関しても、軸重小さい方が有利である。これに加えて動力集中方式では旅客乗車できない機関車の分まで待避線長さ余分に用意しなければならないという問題がある。 機動性 動力分散方式列車は、各車両動力分散しているため加速度減速度がともに高く停車駅多くて運転時間短縮できる。また両端運転台があり、運転士移動するだけで折り返すことができるので機動性富んでいる。ただしこれについては動力集中方式でも、プッシュプル方式用いることで解決できる。また動力分散方式列車分割・併合容易に行える。 信頼性 動力分散方式列車では、一部動力装置故障したとしても残り動力装置走行可能なので、故障時の処置が容易で、信頼性が高い。 周辺環境への影響 動力集中方式高速列車では、粘着性能を維持するために踏面ブレーキ使用しており、このため車輪踏面傷みやすく、車輪転動音が大きくなって騒音問題になっている動力分散方式では粘着性能にこだわる必要性が薄いのでディスクブレーキ使用しており、こうした問題はない。また振動の面でも、重量大きな動力集中方式の方が大きな影響が出る。 列車の直通運転 動力集中方式列車は、電源方式信号方式異な区間に入る駅(国境の駅など)で機関車付け替えるだけで列車直通させることができるが、動力分散方式列車すべての電源方式信号方式対応した設備搭載してなければ直通運転をすることができない1970年代の日本国有鉄道国鉄)において、こうした点の検討詳しくなされ、1本の列車編成長くなるほど動力集中方式が有利で、短くなる動力分散方式が有利であるとされた。具体的に直流電化区間では列車長11両から12両、交流電化区間では列車長9両から10両、非電化区間では列車長4両から5両のところに費用分岐点があり、それより長い列車では動力集中方式が有利であるとした。つまり短い編成頻繁に運行するような路線では動力分散方式が、長い編成を時々運行するような路線では動力集中方式が有利となる。 その後技術の発展で、可変電圧可変周波数制御インバータ制御)が実用化されて保守の手間が少な交流電動機電車用いられるようになり、また回生ブレーキ一般的になったため、より動力分散方式有利になる傾向にある。 日本では第二次世界大戦後から、幹線長距離列車においても動力分散方式推進してきた。これは地盤弱く軸重強化しづらい上、地形急峻かつ複雑なため勾配曲線必然的に多くなるという国土において高速化を図るために選択されたものである。これに対してヨーロッパなどでは長らく動力集中方式使われてきた。しかし近年になって動力分散方式有利になりつつあることから、ヨーロッパにおいても動力分散方式車両普及する傾向にある。 動力集中方式車両においても、編成両端機関車連結して通常時固定され編成運用されるものがあり、この場合運用形態の面ではかなり動力分散方式近くなっている。

※この「動力集中方式と動力分散方式」の解説は、「鉄道車両」の解説の一部です。
「動力集中方式と動力分散方式」を含む「鉄道車両」の記事については、「鉄道車両」の概要を参照ください。

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