効能効果と見なされない表現例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/18 06:56 UTC 版)
「薬事法と食品表示・食品広告」の記事における「効能効果と見なされない表現例」の解説
下記のような表現は医薬品的な効能効果とは見なされず、食品でも標ぼうできる。 1. 「健康維持」「美容」を目的とする趣旨の表現 健康維持に関する一般的な表現は、医薬品的な効能効果とは見なされない。また、「美肌・美白」は効能効果と見なされるが、「美容」は効能効果とは見なされない。 (例)「健康を保ちたい方に」「健康維持のために大切な成分です」「健康維持のために愛用されています」「美容のために」など 2. 「栄養補給」を目的とする趣旨の表現 栄養素が必要な人または時期に、その栄養素が補給できるという表現は、医薬品的な効能効果とは見なされない。 (例)「偏食がちな方に」「野菜の足りない方に」「育ち盛りのお子さまや中高年(の栄養補給)に」「ダイエット時の栄養補給に」「多忙で食事が不規則な方(の栄養補給)に」など ただし、「栄養補給」であっても、下記のような表現は医薬品的な効能効果と見なされる。 (例)「病中病後の体力低下時(の栄養補給)に」「胃腸障害時(の栄養補給)に」など 3. 生体の構成成分であるという表現 生体を構成する栄養成分について構成成分であることを示す表現は、医薬品的な効能効果とは見なされない。 (例)「グルコサミンは体の重要な構成成分です」「必須アミノ酸は人体では合成することができないので、外から補う必要があります」など 4. 生活シーンや気持ちをあらわす表現 生活シーンや気持ちをあらわす表現は、医薬品的な効能効果やその暗示だとは見なされていない。 (例)「お付き合いの多い方に」「暑い夏を乗り切るために」「パソコンをよくお使いの方に」「うるおいのある生活をめざす」「あなたのやる気を燃やす」「毎朝鏡を見てため息が出てしまうあなたに」など ただし、これらの表現も、文脈やデザイン(イラスト・写真や文字の大小)で医薬品的な効能効果を暗示させると、総合的に効能効果と見なされる可能性がある。また、将来にわたって、効能効果とは見なされないことが保証されるものではない。 5. 「ダイエット」に関する表現 「ダイエット」という表現そのものは医薬品的な効能効果とは見なされない。 厚労省通知「痩身効果等を標ぼうするいわゆる健康食品の広告等について」(昭和60年6月28日)では、「カロリーの少ないものを摂取することにより、摂取する総カロリーが減少して結果的に痩せることは医薬品的な効能効果といえない」としている。 (例)「この商品は○○kcalなので、毎日継続的に摂取すると健康的にダイエットできます」など ただし、下記のように、人体に対する作用によって痩せるという表現は、医薬品的な効能効果と見なされる。 (例)「脂肪等の分解、排泄」「体内組織、細胞等の機能の活性化」「宿便の排泄、整腸、瀉下」「体質改善」など また、身体の特定部位のそう身の表現も医薬品的な効能効果と見なされる。 (例)「二の腕」「おなか」「太もも」「中年体型」など 6. 部位であっても効能効果と見なされない表現 身体の特定部位は医薬品的な効能効果と見なされやすいが、例外がある。下記のような表現は効能効果とは見なされない。 (例)「のど飴」「生きて腸まで届く」「おなかの空いたときに」など 「のど」は部位だが、「のど飴」という商品名は、江戸時代からの慣用的な表現であり、医薬品的な効能効果とは見なされない(医薬品・医薬部外品の「のど飴」という商品名は当然、問題ない)。 「腸」も部位だが、ヨーグルトや乳酸菌飲料で使われる「生きて腸まで届く」という表現は、単なる乳酸菌の性質であり、医薬品的な効能効果とは見なされていない。景品表示法に基づく「はっ酵乳、乳酸菌飲料の表示に関する公正競争規約」でも認められている表現である。 「おなか」も部位だが、「おなかの空いたとき」は明らかに効能効果とは見なされない。 7. 摂取の上限量等を示す表現 食べすぎによる健康被害を防止するための表現は、医薬品的な効能効果とは見なされない。 (例)「食べすぎると、おなかがゆるくなることがありますので、摂取量の目安を守ってお召し上がりください」など 8. 保健機能食品 特定保健用食品(特保=特定の保健用途の表示が、厚労省によって個別に許可された食品)と栄養機能食品(ビタミン、ミネラルの含有量が規格基準に適合しており、栄養機能表示ができる食品)は健康増進法の対象であり、薬事法の対象外となる。 9. 明らか食品 薬事法の規制を複雑にしているのが、「医薬品の範囲に関する基準」で明記されている「明らか食品」の規定である。 「明らか食品」とは「医薬品の範囲に関する基準」で「野菜、果物、調理品等その外観、形状等から明らかに食品と認識される物」と定義されている。「明らか食品」は「原則として、通常人が医薬品としての目的を有するものであると認識しない」食品である。つまり、「野菜、果物、調理品等」は医薬品的な効能効果を標ぼうしても、医薬品とは見なされない(もちろん、虚偽・誇大であってはならない)。 行政機関(厚労省や都道府県の薬事法担当部署)は、この「野菜、果物、調理品等」とは、野菜、果物などの生鮮食品や、生鮮食品をその場で調理した料理を指すと説明している。 一方で、ヨーグルト、ジュースなどの加工食品も「明らか食品」ではない(よって事実であっても、医薬品的な効能効果は標ぼうできない)と解釈されていることに対し、食品会社からの反対意見も強い。 10. 熱中症対策 2012年4月19日に全国清涼飲料工業会が「「熱中症対策」表示ガイドライン」を制定し、5月17日に厚生労働省が各都道府県薬務主管課に事務連絡した。同ガイドラインでは「ナトリウム濃度として、少なくとも、飲料100ml当たり40-80mg含有する清涼飲料水」では、TVCM、店頭POP等の広告類に限り、「熱中症対策」の用語を使用することができるとした。商品名、製品の容器包装、製品段ボールでの表示や、「熱中症予防」「熱中対策」等の紛らわしい表示は禁止した(表示修正の猶予期間は2013年4月18日まで)。 「熱中症」は症状名で本来、薬事法で禁止された用語だが、厚労省が熱中症予防対策を目的として、特例として認めた。2011年に、食品で熱中症に関する表示が氾濫し、市場が混乱したことが背景にあった。
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