刃物製造業者への打撃とは? わかりやすく解説

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刃物製造業者への打撃

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/01 06:13 UTC 版)

刃物を持たない運動」の記事における「刃物製造業者への打撃」の解説

東京新聞』は1961年昭和36年2月7日記事で、東京の上駅近くの刃物店の「あれ以来、店の売上げ二、三減りましたよ。あんまり"刃物を持つな"って宣伝するもんだから問題になった飛び出しナイフ登山ナイフばかりでなく、家庭台所必要な刃物まで売れなくなりましたよ」との声を紹介し運動始まった当初青少年刃物売らないことを申し合わせて店頭掲げていた断り書きも「趣旨わかってるけれどこんなものをいつまでもはっておいたら商売になりませんよ」と、既に剝がしていることを伝えている。 岐阜県関市刃物製造業者は、運動への協力として前述のように「刃先丸くする」ことなどを申し合わせたが、登山ナイフなどが返品され始めると「事業縮小するか、デザインでも変えなければ倒産だ」「いや警察運動のPRが悪いからだ」と「大騒ぎになった。特に運動排撃対象となった飛び出しナイフ登山ナイフポケットナイフ中心に返品が相次ぎ注文が減ると共に家庭用包丁類の注文まで巻き添えを食う形で減少した。市の商工観光課で調査したところ、返品被った損害は約163万円で、注文取り消し減少含めると約700万円上った業界から陳情受けた市は、関金属工業協会建設計画している圧延機などの高度な共同施設補助金を出すなどして、支援を行うとした。 兵庫県三木市ではかつて、鉛筆削りなどに子供にも使用され広く親しまれ折畳み式ナイフ肥後守」を数十業者製造しており、最盛期1950年代前半には市内では約40業者が、月産100万丁を生産していた。しかし刃物追放運動によって問屋からの返品が相次ぎ運動の最中時点で、業者は約10軒に激減している。 こうした状況を受け、日本社会党衆議院議員である田中武夫1961年昭和36年2月28日第38回国会に際して刃物追放運動に伴う中小零細企業救済に関する質問主意書」を提出。「町の刃物店は年末から軒並み売り上げが三割に減じ返品殺到する全国産地刃物工場は、在庫激増閉鎖寸前にまで立ち至り整理され従業員自殺する騒ぎまで生じており、その経営が危たいにひんし、深刻な問題となつている。」と述べ、以下の3点質問した。 (イ) 刃物追放運動の刃物」とはどのようなものまで考えているのか。刃物学童用文房具工作用の器具を含む。)との限界について。 (ロ) この運動の余波受けて経営深刻な問題直面している中小零細企業対しどのような対策があるか。 ことに、兵庫県三木市小野市古来伝統のある金物産地として知られており、この地方には零細な金物製造業者多く三木市ではかつては五万ダース肥後守出荷していたのに、十二月には二百六十ダース落ち新規注文皆無の状態である。 また小野市では十二月に約三ダース三百万円)の返品があり、在庫額は千七百万円達している。このように目下業界死活の重大時に直面しているが、具体救済策があるか。 (ハ) 治安立法銃砲刀剣類等所持取締法改正案)において「刃物」をどのように規定しようとしているのか、また、政府右翼テロ対策刃物追放すりかえようとしているのではないか。 — 田中武夫刃物追放運動に伴う中小零細企業救済に関する質問主意書」 この質問対し内閣総理大臣池田勇人は「衆議院議員田中武夫提出刃物追放運動に伴う中小零細企業救済に関する質問対す答弁書」で次のように回答した。 (イ) 「刃物を持たない運動」は、最近少年非行、とくに凶器類を使用した凶悪犯粗暴犯増加傾向かんがみ青少年犯罪未然防止するため、刃物類を不必要に持ち歩かないようにしようとするのである。 この運動は、最初民間から始まり、ついで青少年問題協議会および広範な民間団体支持協力の下に展開されている。 したがつて、この運動は、 1 不必要に危険な刃物類を持ち歩かない風潮高めること。 2 刃物類の保管管理に十分注意するよう関心高めること。 3 児童生徒不必要に刃物類を持ち歩かなくてすむように学校鉛筆削り器工作用具等を備えつけるようにする。 4 必要があつて携帯する場合安全な携帯指導をすること。 等を主眼として行なつている。 また、この運動の対象とする刃物範囲についていえば、特定の刃物のみを対象とするものでなく、人を殺傷する危険性のある刃物一般携帯自粛させようとするものであるが、法にふれない限り、その所持まで抑制しようとするものではない。したがつて学童用文房具家庭用日常刃物に対してまでもその所持及び販売抑制に及ぶものではない。 (ロ) 刃物製造業当面不振は、文房具様式変化加えて刃物を持たない運動」による影響否定できない。とくに肥後守生産地である三木小野両市は相当の影響受けていると考えられる。 これに対しては、「刃物を持たない運動」に伴う関連業界なかんずく中小企業者対す影響に十分留意して政府としては次のような措置講ずるようにしたい。 1 できるだけ危険性少な刃物工夫して生産する。 2 鍛工業として進出余地ある家庭用器物等の生産により品種多様化をはかる。 3 当面滞貨融資今後立ち直りのために必要な資金等については、商工中金等を通じて融資円滑化をはかる。 なお、一月末現在商工中金より一〇三六千円販売組合五、一六千円メーカー組合五、二〇千円)を三木市金物関係組合融資している。 (ハ) 最近における銃砲刀剣類等による犯罪増加傾向かんがみ銃砲刀剣類等の規制強化する必要があるので、銃砲刀剣類等所持取締法一部改正することを検討中である。 この中で現在刃物関係するものとして検討している事項は、比較安全なもの以外の飛出しナイフ所持禁止及び刀剣類と同じ程度殺傷力有する刃物業務その他正当な理由がなくてもち歩くことの禁止である。 このことの結果として暴力事犯防止対す好影響はあると考えるが、右翼テロ対策については、さらに多角的にその対策考究しつつある。 — 池田勇人衆議院議員田中武夫提出刃物追放運動に伴う中小零細企業救済に関する質問対す答弁書」 「刃物を持たない運動」は1年間終了したが、鉛筆削り器普及したこともあり、その後肥後守生産衰退する一方だった。2012年平成24年)の時点では、肥後守製造業者は「永尾製作所」の1社のみとなっている。「永尾製作所」の職人は「刃物を持たない運動」を、「零細な我々を吹っ飛ばした猛烈な運動でした」と振り返っている。

※この「刃物製造業者への打撃」の解説は、「刃物を持たない運動」の解説の一部です。
「刃物製造業者への打撃」を含む「刃物を持たない運動」の記事については、「刃物を持たない運動」の概要を参照ください。

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