主な都市と産業
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/16 06:37 UTC 版)
「アメリカ合衆国中西部」の記事における「主な都市と産業」の解説
古くからの農業地帯・牧畜地帯であった中西部には、シカゴをはじめ、カンザスシティ、オマハ、デモインなど、農産物・畜産物の集積地としての都市がいくつも形成された。これらの都市は大規模な穀物取引所や家畜取引所、精肉工場などを有し、住民に雇用とビジネスチャンスをもたらすとともに、アメリカ合衆国の肉食文化を支えていった。オマハのステーキやカンザスシティのバーベキューは、こうした背景から市の名物料理となっていった。 中西部はその地理的条件から、交通の要衝でもあった。ミシシッピ川を中心にミズーリ川やオハイオ川が流れ、さらに北には五大湖が位置することから、これらの天然の水路や、これらの湖沼・河川をつなぐ運河を用いた水上交通が発達し、セントルイス、シンシナティ、エバンズビルのような河港都市やダルース、トレド、クリーブランドのような湖港都市が発展していった。やがて交通の主役が蒸気船から鉄道に移ると、シカゴやセントルイスは大陸横断鉄道の連節点としての役割を果たし、さらに成長を続けた。現代に入り、航空機がメインの交通手段となっても、シカゴ、デトロイト、ミネアポリス・セントポールは主要航空会社のハブ空港となっている大規模な国際空港を持ち、国内外の「空の玄関口」として、あるいは連節点としての役割を果たしている。 交通の便の良さは工業の発展を促した。1960年代までは、中西部は東海岸のメガロポリスにも劣らない工業地帯であった。シンシナティでは石炭産業が、クリーブランドやゲーリーでは製鉄業が、デトロイトやフリントでは自動車産業が発展した。しかし1970年代以降、産業がサンベルト諸州に移り始めると、それまで製造業を中心とした中西部の都市部の人口は減少していくが、これは一概に他州への人口流出とは異なるものである。1970年代初期まで伸び続けた自動車普及と、それに伴う大都市郊外の住宅開発がピークに達し巨大サブアーバン・エリアを形成するようになると、それまで市内中心部に集中していた人口は郊外へ拡散する。これにより古くからの巨大都市であったシカゴやデトロイトでは市内の人口が激減。一方で同都市圏人口は増加の一途を辿り、この傾向は2010年代に入っても持続している。その事は以下の2つの表を見れば明らかである。大企業は治安の良い郊外にオフィスを構え、大手メーカーは低賃金で組合問題の無いサンベルト地域に生産工場を移管。多くのブルーカラー人口を失う代わりに、中間層は増加し新興地域の発展に寄与している。中でも国際金融市場世界10位、域内総生産(GDP)世界8位のシカゴは同地域では別格の存在で、物流、流通のハブとしても成長を続ける国際都市である。尚1970年代以降に発展した中西部の都市としては、郊外に日本の自動車メーカーを誘致し、市内でも金融・保険など第3次産業が経済を支えていたコロンバスや、やはり郊外に複数の日系自動車メーカーを誘致したインディアナポリス、IBMが大規模な工場を置くミネソタ州きってのハイテク産業都市ロチェスター等があり、1970年代以降もサンベルト諸都市に匹敵する高い成長を続けた。 下表に中西部の主要都市圏の2020年国勢調査時における都市圏の人口を示す。表中に複数の州名が表示される都市圏は、主要都市が州境近くにあるため州をまたいで都市圏を形成している事例を示す。 全米順位都市圏州2020年人口 (人)3 シカゴ・ネイパービル・エルジン イリノイ州・インディアナ州・ウィスコンシン州 7006961850200000000♠9,618,502 14 デトロイト・ウォーレン・ディアボーン ミシガン州 7006439204100000000♠4,392,041 16 ミネアポリス・セントポール・ブルーミントン ミネソタ州・ウィスコンシン州 7006369026100000000♠3,690,261 21 セントルイス ミズーリ州・イリノイ州 7006282025300000000♠2,820,253 30 シンシナティ オハイオ州・ケンタッキー州・インディアナ州 7006225688400000000♠2,256,884 31 カンザスシティ ミズーリ州・カンザス州 7006219203500000000♠2,192,035 32 コロンバス オハイオ州 7006213892600000000♠2,138,926 33 インディアナポリス・カーメル・アンダーソン インディアナ州 7006211104000000000♠2,111,040 34 クリーブランド・エリリア オハイオ州 7006208825100000000♠2,088,251 40 ミルウォーキー・ウォキショー・ウェストアリス ウィスコンシン州 7006157473100000000♠1,574,731 45 ルイビル・ジェファーソン郡 ケンタッキー州・インディアナ州 7006128543900000000♠1,285,439 52 グランドラピッズ・ケントウッド ミシガン州 7006108759200000000♠1,087,592 58 オマハ・カウンシルブラフス ネブラスカ州・アイオワ州 7005967604000000000♠967,604 73 デイトン・ケタリング オハイオ州 7005814049000000000♠814,049 82 デモイン・ウェストデモイン アイオワ州 7005709466000000000♠709,466 83 アクロン オハイオ州 7005702219000000000♠702,219 87 マディソン ウィスコンシン州 7005680796000000000♠680,796 93 ウィチタ カンザス州 7005647610000000000♠647,610 94 トレド オハイオ州 7005646604000000000♠646,604 106 ランシング・イーストランシング ミシガン州 7005541297000000000♠541,297 107 ヤングスタウン・ウォーレン・ボードマン オハイオ州・ペンシルベニア州 7005541243000000000♠541,243 下表に中西部の主要都市における1970年と2020年の国勢調査時における人口、および増減率を示す。 都市州1970年人口(人)1970年全米順位2020年人口(人)2020年全米順位増減率(%)シカゴ イリノイ州 3,366,957 2 2,746,388 3 -18.43 デトロイト ミシガン州 1,511,482 5 639,111 27 -57.72 クリーブランド オハイオ州 750,903 10 372,624 54 -50.38 インディアナポリス インディアナ州 744,624 11 887,642 15 +19.21 ミルウォーキー ウィスコンシン州 717,099 12 577,222 31 -19.51 セントルイス ミズーリ州 622,236 18 301,578 69 -51.53 コロンバス オハイオ州 539,677 21 905,748 14 +67.83 カンザスシティ ミズーリ州 507,087 26 508,090 36 +0.20 シンシナティ オハイオ州 452,524 29 309,317 65 -31.65 ミネアポリス ミネソタ州 434,400 32 429,954 46 -1.02 トレド オハイオ州 383,818 34 270,871 79 -29.43 オマハ ネブラスカ州 347,328 41 486,051 39 +39.94 セントポール ミネソタ州 309,980 46 311,527 63 +0.50 以下に中西部各州の州都および主要都市を列挙する。太字は各州の州都を示す。 ウィスコンシン州 - グリーンベイ、マディソン、ミルウォーキー オハイオ州 - アクロン、カントン、クリーブランド、コロンバス、シンシナティ、デイトン、トレド、ヤングスタウン インディアナ州 - インディアナポリス、エバンズビル、ゲーリー、サウスベンド、フォートウェイン イリノイ州 - シカゴ、オーロラ、スプリングフィールド、ピオリア、ロックフォード ノースダコタ州 - ビスマーク、ファーゴ サウスダコタ州 - スーフォールズ、ピア ネブラスカ州 - オマハ、リンカーン アイオワ州 - シーダーラピッズ、スーシティ、ダベンポート、デモイン ミネソタ州 - セントポール、ダルース、ミネアポリス、ロチェスター ミシガン州 - アナーバー、カラマズー、グランドラピッズ、デトロイト、フリント、ランシング カンザス州 - ウィチタ、トピカ ミズーリ州 - カンザスシティ、コロンビア、ジェファーソンシティ、スプリングフィールド、セントルイス シカゴ デトロイト インディアナポリス コロンバス クリーブランド シンシナティ ミルウォーキー ミネアポリス セントルイス カンザスシティ オマハ デモイン
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