ヒト以外の動物のウイルス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/11 21:08 UTC 版)
「ウイルスの社会史」の記事における「ヒト以外の動物のウイルス」の解説
詳細は「獣医ウイルス学(英語版)」および「獣疫(英語版)」を参照 獣疫 (epizootic) は、ヒトを除く動物の病気のアウトブレイク (流行) である。20世紀を通じて、動物、特に家畜のウイルス病の重大な流行が世界中で発生した。ウイルスによって引き起こされる多くの病気の中には、口蹄疫、牛疫、鳥と豚のインフルエンザ、豚熱、ブルータングなどが含まれる。2001年イギリスでの口蹄疫のアウトブレイク(英語版)で示されたように、家畜のウイルス病は、農場経営者とより大きなコミュニティの双方に壊滅的な影響を与えるものである。 牛疫は東アフリカに1891年に出現し、速やかにアフリカ中に拡散した。1892年までに東アフリカのウシの95%が死亡し、その結果飢饉が発生した。農場主や遊牧民の中にはウシに完全に依存していた人々もおり、その生活は荒廃した。マサイ族は人口の2/3が死亡した。飢饉の跡を追うように発生した天然痘の流行によって、状況はさらに悪化した。20世紀の初頭には、牛疫はヨーロッパの一部とアジアではありふれた病気であった。予防接種を含む防疫対策によって、病気の広がりは世紀を通じて確実に減少していった。1908年までにヨーロッパは清浄地域となった。アウトブレイクが第二次世界大戦直後に起こったが、これらは迅速に鎮圧された。アジアでは病気は拡大し、1957年にタイでは多くの水牛が死亡したために田圃で稲を育てる準備ができず、援助が必要となった。ロシアではウラル山脈の西側の地域は、レーニンが防疫に関するいくつかの法律を承認していたため清浄地域であったが、東側の地域は、依然として病気が広く蔓延しているモンゴルや中国から牛疫の感染が常に起こっていた。インドでは南部のタミル・ナードゥ州とケーララ州がこの病気の足場となっていたが、20世紀を通じて拡散の防止に取り組み、1995年までに根絶された。アフリカでは1920年代と80年代の2度の大流行 (panzootic) に苦しめられた。ソマリアでは1928年に重大なアウトブレイクがあり、1953年まで国中で広く蔓延した。1980年代のタンザニアとケニアでのアウトブレイクは2600万本のワクチンを使用することで抑制され、1997年の再発も集中的な予防接種運動によって鎮圧された。世紀の終わりまでに牛疫はほとんどの国家で根絶された。残された流行地域はエチオピアとスーダンであり、1994年に国際連合食糧農業機関 (FAO) によって、2010年までの世界的根絶を目標とした世界牛疫根絶計画 (Global Rinderpest Eradication Programme) が開始された。2011年5月に、FAOと国際獣疫事務局は「自由に循環するウイルス病としての牛疫は世界から根絶された」と宣言した。 口蹄疫は、アフトウイルス属(英語版)の1種 (口蹄疫ウイルス) によって引き起こされる伝染性の高い病気で、ポリオウイルスと同じファミリー (ピコルナウイルス) に分類される。ウイルスは主に有蹄類に感染する。アフリカでは古代から存在し、おそらく輸入された家畜によって19世紀にアメリカ大陸へもたらされたと考えられる。口蹄疫は死に至ることは稀であるが、羊や牛の群れの中でのアウトブレイクによる経済的損失は大きなものとなる。近年でも、2001年イギリスでの口蹄疫のアウトブレイク(英語版)が起こり、数千頭の動物が殺処分され焼却された。 インフルエンザウイルスの自然宿主はブタや鳥類であるが、おそらく古代末期からヒトに感染してきたと考えられる。ウイルスは野生動物や家畜に軽度の、または重度の病気を引き起こす。野生の鳥類の多くの種が渡りを行うため、インフルエンザは時代を問わず大陸を越えて拡散されてきた。ウイルスは多数の系統に進化を続けており、常に存在する脅威となっている。 21世紀の初頭も、ウイルスによって引き起こされる家畜の流行病は深刻な事態をもたらし続けている。ブルータングは、オルビウイルス属(英語版)の1種 (ブルータングウイルス) によって引き起こされる病気で、2007年にフランスでヒツジに出現した。それまでこの病気は主にアメリカ大陸、アフリカ、南アジア、オーストラリア北部に限定されていたが、現在は地中海周辺地域で新たに発生している病気である。
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