ユニットバス
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壁のつかみ棒の角度からカラン/シャワーヘッド側に足を向けて入浴する設計であることがわかる。逆向きに浸かると洗面台裏側(場合によってはカビや汚れ)が目の前にくる。
ユニットバスとは、工場などで予め成型されている浴室を指す和製英語である[1][2][3]。英語では bath module という。
防水性の高い素材を用いて天井・床・壁を成型、内部には浴槽(および多くは合わせて他の要素)を設けておき、現場に搬入した後に組み立てる。日本の間取図で用いられる記号はUB[2][3]。
概要
浴室が工場などで予め成型されているため、現場でセメントモルタルを打ち、タイルを1枚ずつ貼って造る在来工法と比べ、施工時間の大幅な短縮が可能である。また、階下への水漏れのリスクが少ない。
高い容積効率も実現可能である。ただし、効率追求の結果、換気や排水などの性能が多少犠牲になることも少なくない。
日本
日本では戸建住宅からマンション、ホテル、アパート、病院などに至るまで、さまざまな建物に用いられている。また最近では、サイズや機器のオプションが自由に選べるものが増えている。2014年(平成26年)の時点で、日本国内の浴室の約95 %を占める[4]。
日本では「システムバス」とも呼ばれる。また、西洋式にトイレ、洗面台、バスタブを同室内に設置するタイプのユニットバスもあり、3点ユニットと呼ぶ。
歴史
類似のものとして、バックミンスター・フラーが金属製の浴室ユニット『ダイマキシオンバスユニット』を1938年に特許出願したが、アメリカではほとんど普及しなかった。
現在につながる繊維強化プラスチック(FRP)製のユニットバスは、日本で1963年(昭和38年)に考案開発された。きっかけは、翌年にオリンピックの開催を控えていた東京で、ホテルニューオータニの建設工期を省力化によって短縮するためであった。主に開発に携わったのは、日立化成工業(現:ハウステック)と東洋陶器(現:TOTO)の2社である。その結果、1部屋につき職人数人と1か月を要していたバスやトイレの施工が、運び込んで設置するだけで良いユニットバスを採用したことにより、わずか数時間に短縮された[5][6]。ニューオータニでは1000室以上にも上る全客室へのユニットバスの据付作業を、3か月半で完了したとされる[4]。
なお、この「初代」とも言うべきユニットバスはTOTO本社にも現存していなかったが、2014年(平成26年)7月、ニューオータニ内で倉庫となっていた部屋に当時の設置状態で現存していた物が「発見」された。これは2015年(平成27年)8月にTOTO本社に隣接された企業博物館の「TOTOミュージアム」へ移設され、一般公開されることとなった[4]。
同じく1963年(昭和38)、1月に積水化学工業奈良工場で、国産第1号と銘打ったFRPプレス成形浴槽「セキスイバス」の製造を開始しており、こちらが日本初ではないかともされる[7][8][9]。
住宅向けユニットバス
一般住宅向けには、日本では同じく1963年(昭和38年)9月に北海酸素(現:エア・ウォーター)から発売された『ほくさんバスオール』が元祖とされる。これは繊維強化プラスチック(FRP)製ではなく、洗い場もない浴槽だけの製品であった[10]。
ほぼ現代同様の規格化された形式でのFRP製の浴槽を利用したユニットバスが戸建て住宅に日本で初めて採用されたのは、1971年(昭和46年)3月に積水ハウスによる[11]。また、一般住宅で最大サイズとされている「1818」(後述)を利用するメーターモジュールのユニットバスについては、1981年(昭和56年)に同じく積水ハウスが日本で初めて採用した[12]。
サイズ

日本における住宅向けのユニットバスは、そのサイズがほぼ規格化されている[13]。縦方向と横方向のサイズを10 cm単位の2桁 + 2桁の数字で表記する。縦方向に浴槽の長手方向が設置される。
組み合わせには「1216」、「1317」、「1416」、「1418」、「1616」、「1618」、「1620」、「1818」があり、さらに広い「1820」も注文できる。ショールームやホームセンターなどに展示されているものは大型の「1818」であることが多い。
誤解
「ユニットバス = 浴室・トイレ・洗面台などが共有されているシステム」であるとの誤解がみられる。この原因は、当初、外国人観光客の宿泊を受け入れるホテル向けに、外国人に受け入れやすいこの3点を持つユニットが多く採用され[14]、現在でも単身用集合住宅などで広く普及しているためと考えられる。
アメリカでの事情
アメリカでは労働組合の力が強く、建物建築時に浴室工事を行うアスファルト防水、押さえモルタル、配管、シンダー(cinder―石炭殻。骨材に使われる)コンクリート打設、タイル張り、窓と天井の大工作業、などのそれぞれの職人・作業者の職場を確保するため、ユニットバスの使用は制限されている[5]。
製造メーカー
- TOTO
- LIXIL
- パナソニック ハウジングソリューションズ(以前は、東芝グループにもOEM供給していた時期があった。)
- クリナップ
- タカラスタンダード
- トクラス(旧ヤマハリビングテック株式会社、ヤマハ株式会社の家具・住宅設備部門が1992年(平成4年)に分社し設立。ヤマハによる投資ファンドへの売却とMBOを経て完全に独立。ヤマハ発動機のボート製造などのFRP成形技術を活かし、1974年(昭和49年)からユニットバスを製造。旧ヤマハリビングテックとヤマハのユニットバス関係事業は全てこちらに移管継承されている。)
- ハウステック
- 長府製作所
- ウッドワン
- 永大産業
- ブレクス
- 積水ホームテクノ(積水化学工業の100%子会社:積水化学工業および積水ハウスのユニットバス事業は全てこちらに移管継承されている。積水化学工業から含めれば、日本の住宅向けユニットバス事業では最も歴史が長い会社。)
- 日比野化学工業
- 日ポリ化工
- 和光製作所(スピリチュアルモード)
- アステック
- サンワカンパニー
- 小笠原
- ダイワ化成
- PUDA
- コーラーカンパニー
- ノーキン
- カドガン
- 有田ユニテム
- テクノクリエート
- 東京バススタイル
- ノーリツ(2019年冬に撤退を発表[15][16][17]。)
- ナスラック(かつては、ナスステンレス→東建ナスラック時代を含む自社で製造販売していたが、ナスラックへの商号変更後にノーリツからのOEM製品に移行した。しかし、ノーリツのシステムバスを含む住宅システム事業からの撤退により、2020年夏をめどにシステムバスから撤退予定である。[15][16][17])
出典
- ^ 用語辞典 リプロス
- ^ a b “賃貸用語辞典”. フラットエージェンシー. 2008年10月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年2月25日閲覧。
- ^ a b 不動産用語辞典 ビッグ
- ^ a b c 初代ユニットバス、都内に現存していた 東京五輪50年を機に里帰り - withnews・2014年12月1日
- ^ a b 高層建築研究会編 『建物の科学』 日刊工業新聞社 2007年2月28日初版1刷発行 ISBN 978-4-526-05825-7
- ^ “特許検索ガイドブック ∼ユニットバス∼” (PDF). 特許庁 (2007年3月). 2009年7月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年4月3日閲覧。
- ^ “歴史・沿革|企業情報|積水化学”. www.sekisui.co.jp. 2022年9月28日閲覧。
- ^ “沿革|積水ホームテクノ株式会社”. 積水ホームテクノ株式会社. 2022年9月29日閲覧。
- ^ “会社概要 | 積水ホームテクノ株式会社【採用サイト】”. www.p-sekisui-hometechno.jp. 2022年9月29日閲覧。
- ^ “銭湯とバスオール”. 千里ニュータウン情報館. 2022年9月29日閲覧。
- ^ “沿革 | 会社情報 | 企業・IR・ESG・採用 | 積水ハウス”. www.sekisuihouse.co.jp. 2022年9月28日閲覧。
- ^ “沿革|積水ホームテクノ株式会社”. 積水ホームテクノ株式会社. 2022年9月29日閲覧。
- ^ 設置できるユニットバスの条件とサイズ - ホームプロ
- ^ “ティドビット ~水まわりのまめ知識~ ユニットバスルームの発祥は?”. TOTO. 2019年4月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年6月10日閲覧。
- ^ a b 国内事業の構造改革の実施関するお知らせ:ノーリツ
- ^ a b ノーリツが希望退職で600名を削減 住宅システムから撤退 不景気ニュース
- ^ a b ノーリツ、住宅システム分野の生産開発から撤退 日本経済新聞2019年11月27日付け
関連項目
外部リンク
- “ティドビット 〜水まわりのまめ知識〜 ユニットバスルームの発祥は?”. TOTO. 2017年6月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年5月12日閲覧。
システムバスルーム
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「INAXの商品」の記事における「システムバスルーム」の解説
スパージュ2014年8月発売。ハイグレードクラスのシステムバスルーム。「サーモバスS」を標準搭載した浴槽は6種類を設定し、一部タイプに循環式の「アクアフィール(肩湯/ジェット機能)」を搭載。また、本体内に残った水と配管内の初期冷水を排水する吐水口を設けた「オーバーヘッドシャワー」や「エコフルシャワー」の吐水技術を応用した「打たせ湯」機能を装備した「アクアタワー」を一部タイプに採用した。また、家電メーカーのシャープと共同開発した32型浴室テレビ「アクアシアター」や車載音響機器メーカーのクラリオンとの共同で浴室専用に音響チューニングを行った「フルデジタルサウンドシステム」が用意されたほか、既存の浴槽サイズを変更することなく入れ替えが可能な1216サイズを一部タイプに設定しており、建物の種類(戸建住宅・マンション)や新築・リフォームを問わず対応可能である。 2016年4月にリニューアルされ、「マルチボード」の採用、エアーレスジェット水流の「サイレントジェット」の採用、「アクアシアター」の「AQUOS.jp」への対応化が行われたほか、サイズバリエーションを拡充され、「アクアフィール」は小型サイズの新開発により、全てのサイズで「アクアフィール(肩湯)」の搭載が可能となった。 2018年3月にモデルチェンジ。照明に調光調色機能が追加され、一部タイプに設定の「アクアタワー」のオーバーヘッドシャワー部にライトを配置した「アクアタワーライト」を追加。従来からの大開口窓を室内側にも配置した大開口室内窓の追加設定、ブラック仕様の追加、1717サイズの追加設定が行われた。 リモア2015年4月に発売されたLIXIL製で初となる戸建住宅リフォーム専用システムバスルーム。「スパージュ」や後述の「アライズ」にも設定されている「キレイ浴槽」・「くるりんポイ排水口」・「キレイサーモフロア」・「キレイドア」・「サーモバスS」・「エコフルシャワー」といった機能を基本仕様の「スタンダードプラン」にすべて標準装備したほか、4種類のこだわりプランも設定(一方で、「サーモバスS」・「キレイドア」・「エコフルシャワー」のみを装備した廉価仕様の「シンプルプラン」も用意される)。サイズも9種類を設定し、天井高さも3種類から選択可能。また、浴槽のラインナップには「アライズ」にも用意されている2種類のロング浴槽(1600ロング浴槽/1200ロング浴槽)を設定したほか、「スパージュ」にも採用されている「フルデジタルサウンドシステム」も設定するなどオプションアイテムも充実している。さらに、リフォーム専用設計として、床高さは4種類あるボルト脚を変えることで調整可能、既設の排水管が浴槽側にあっても配管接続が容易になる排水管キットや、マンションリフォーム用の「リノビオV」にも採用されているフィラー付折戸を用意している。 アライズ「キレイユ」に替わって2015年4月に発売された新築戸建住宅用システムバスルーム。浴槽は底面長辺をラインナップ内最長の1,153mmとし、肩周りをワイドにした1600、コンパクトサイズながら底面長辺を1,007mmに拡張するとともに、アームレストを装備した1200の2種類のロング浴槽を新たに設定したほか、水栓もタイプにより、メタルマット調の「クランクレス水栓」、コンパクトサイズの「ライトプッシュ水栓」、カウンター一体型の「プッシュ水栓」を新たに設定したほか、オプションでグローエブランドの「壁付サーモ水栓(GB)」も一部タイプに設定。また、「キレイサーモフロア」の新色追加や壁パネルのバリエーションの強化、新アイテムの追加を行った。 2017年3月にモデルチェンジ。平天井やボルト脚が内組式に変更されたほか、一部タイプ(Zタイプ・Mタイプ・Kタイプ)において、シャワーヘッドをグローエ社との共同開発による「レインO2シャワー(ユーフォリア)」に、シェルフをコーナー配置にそれぞれ変え、カウンターは大型化して着脱可能とした「まる洗いカウンター」が採用された。 ソレオ集合住宅(マンション)用システムバスルーム。2014年11月にモデルチェンジ。タイルパネルのラインナップを刷新したほか、鋼板パネルや「キレイ浴槽」に新色を追加し、メタル調のアイテムを拡大した。 リノビオV2012年9月発売。「キレイ床」・「サーモフロア」・「くるりんポイ排水口(凹凸が少ないシンプル形状に改良した新型)」・「サーモバスS」を全タイプ標準搭載したマンションリフォーム用システムバスルーム。 2013年9月にモデルチェンジ。浴室サイズを新たに4種類加えて11種類に拡充されたほか、カウンター一体型水栓を採用した「Sタイプ」を新設。浴槽もストレートライン・ラウンドライン・アーチライン・エコベンチ・ワイドの5種類から選択可能となり、オプションの追加も行った。 2014年8月に2度目のモデルチェンジ。「キレイ浴槽」や壁パネルに新色を追加したほか、オプションアイテムのラインナップも追加を行った。また、フリーサイズ梁パネルの対応範囲拡大や、ドア位置がずらせるフィラー付折り戸が新たに用意された。 2015年4月にリニューアル。戸建住宅用の「リモア」や「アライズ」にも採用されている2種類のロング浴槽(1200ロング浴槽・1600ロング浴槽)を設定したほか、浴槽とドレッサーカウンターを人工大理石で統一し、プッシュ水栓・メタルバスケット・ダウンライトを標準装備した「Kタイプ」、浴槽ラインとつながるデザインの新型カウンター「スムースカウンター」や深型タイプの収納ポケット「スムースポケット」を3段標準装備した「Qタイプ」、モザイクタイル(3色から選択可)を採用した「Dタイプ」の3タイプを新設。併せて、浴槽を壁パネルに乗せる構造とすることで浴槽パンと床(洗い場パン)を分割化した「新フレーム分割構造」を採用し、ドア横壁パネルに200mmを新設した。 2018年3月にモデルチェンジ。工場であらかじめ壁穴加工が施され、排水トラップには適正トルクまで締め付け位置が達するとアタッチメントが外れる構造の「トルクリミッター」を追加。浴槽は人工大理石の「ルフレトーン浴槽」に変更となり、「アライズ」で採用済みの「レインO2シャワー(ユーフォリア)」や「まる洗いカウンター」も採用された。 リノビオフィット2017年3月発売。既存の「リノビオV」のシリーズ品で、浴槽エプロンをラウンド形状とし、カラーバリエーションは浴槽、床・エプロンは各3色ずつ、壁は16色設定している。また、浴槽と洗い場床を分割化した2分割構造が採用されている。 各種施設用ユニットバス ドゥケア・ユニット病院や介護施設用に開発。トイレ付ユニットもある。 ユニットバスルーム(アパート用、ホテル用)
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