オリンピックとの関わり
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/03 09:38 UTC 版)
「近代五種競技」の記事における「オリンピックとの関わり」の解説
馬術、フェンシング、射撃の技術系種目と、水泳、陸上の基礎運動能力系種目の全く性質の異なる5つの競技にいて取りこぼしなく対応する総合能力が求められる。 馬術は「近代五種の花」とも呼ばれるが、多くの国では費用の問題で練習環境が整わず、選手が増加しない要因となっていた。日本では日本オリンピック委員会の強化拠点は馬を飼育している自衛隊体育学校で選手は過半数が自衛官であるなど、先進国でも国の予算に頼った状態である。選手にとっては馬は大会側が用意するため費用負担は馬術競技ほどではないが、前述の由来から抽選となるためどのような気質の馬が当たるか不明で、初めて乗る馬に慣れる時間が短いことや、明確な故障がなければ飛越を拒否する馬でも交代が認められないなど負担もある。 世界的に近代五種競技は軍人のスポーツという一面があるが、射撃で装薬銃が使用されていないため民間人の参加も可能であり、2012年ロンドンオリンピックでは東海東京証券所属の黒須成美が出場を果たしている。 現在ではオリンピックにおいて重要な要素となっているテレビ中継においては、競技施設の移動などもあり時間を要するため生中継が難しく、概してダイジェスト形式での紹介だけに終わってしまうこともネックになる。かくして、個々のスポーツではともかく、「近代五種競技」という枠で見ると世界的に見ても選手層が厚くならず、世界的にもマイナースポーツの域から抜け出せずオリンピック競技から外れると競技の存続が危ういという状態である。2008年北京オリンピックの前に、2012年ロンドンオリンピック以降の競技の削減候補の1つとして挙げられたが、その時点では見送りという結果になった。これ以前にもオリンピックのスリム化の議論などと並行して繰り返し削減候補とされてきた。 その背景には、近代五種競技で使用される競技施設は、陸上競技として行われていないクロスカントリー走を除けば他の個別種目との併用がされており、この競技だけを削減したところで削減できる施設がほぼ皆無であり、むしろ開催期間中の施設の効率的利用の観点からは有効であることや、個人競技であることなど、削減議論の俎上に上げられた他種目と比較しての設備投資・参加人数などからの競技削減で想定されるメリットの少なさや、上述した事情から競技自体の存続に関わること、なによりクーベルタン男爵の考案・提唱によって創始された、近代オリンピックに由緒の深いものであったことから一部の変更にとどまっていた。しかし商業化した近年のオリンピックではテレビ視聴率が重要となってるため、馬の抽選など競技の公平性を欠く要素や、競技そのものの人気低迷によるIOCからの圧力が勝り、UIPMは存続のために馬術の除外という大幅な変更を行うこととなった。 日本国内においては、射撃の用具を、費用が少なく規制が無いBB弾を使用するスポーツピストルに置き換え、水泳、ランニングと合わせた3種目を「近代3種」として普及、広報、選手発掘を行っている。さらに、国体種目化の流れや、大学を中心とした学生連合の競技活動が活発化し「近代3種」の競技人口は増加したが、太田捺のように親戚に乗馬クラブの経営者がいるという恵まれた環境がなければ馬術の訓練が難しく、自衛官以外には髙宮なつ美などの警察官か、才藤歩夢のような他競技との兼業であり、2021年時点での選手数は50人という状態である。 2020年東京オリンピックでは、2日目に行われる全種目を東京スタジアムにおいて実施された。オリンピックで2日目の全種目を同一会場で実施するのは史上初。これにより、観客は移動することなく5種目を観戦できる触れ込みであったが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行の影響により無観客での開催となった。なお初日のフェンシングランキングラウンドは、東京スタジアムに隣接する武蔵野の森総合スポーツプラザにて実施された。 2021年11月4日、UIPMは、2028年ロサンゼルスオリンピックから馬術を除外し、新種目の導入を検討することを発表した。一方、この決定を受けて選手ら650人が馬術の除外に反対、UIPM役員に対し辞任を求める文書を提出した。馬術除外に反対する組織「ペンタスロン・ユナイテッド」によるアンケートでは、選手の馬術が無くなれば競技をやめる選手が大半だったとしている。 新種目は自転車によるクロスカントリーなどを検討したが、トライアスロンとの兼ね合いもあり、選手による「障害物レース」を軸に検討されることとなった。ロイター通信によると、日本の番組企画『SASUKE』から派生した「忍者競争」と呼ばれる立体的な障害コースを進む競技や、自然環境を進みながらゴールを目指す「アドベンチャーレース」など、既存の競技と重複せず世界的に人気が高い種目が有力視されていると報じている。この新種目は2028年ロサンゼルスオリンピックで試験的に実施される予定。 UIPMは2022年6月27日と28日にトルコ・アンカラにて行われる近代五種ワールドカップ・ファイナルなどにおいて、障害物レースのテストを行うことを発表した。
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