げんし‐ろ【原子炉】
読み方:げんしろ
ウラン・トリウム・プルトニウムなどの核分裂性物質を燃料とし、核分裂の連鎖反応を適度に制御しながら定常的に進行させ、そのエネルギーを利用できるようにした装置。発電や船舶用の動力炉のほか、研究用・医療用など多くの用途がある。リアクター。
[補説] 原子炉には、核分裂反応を利用する核分裂炉、核融合反応を利用する核融合炉、核破砕反応を利用する加速器駆動炉などがある。このうち実用化されているのは核分裂炉のみで、核分裂反応を起こす中性子の速度(エネルギー)によって熱中性子炉と高速中性子炉に分類される。熱中性子炉は、核分裂によって放出される中性子の速度を下げる減速材の種類によって軽水炉・重水炉・黒鉛炉に分類される。このうち最も多いのは軽水炉で、世界の発電用原子炉の8割以上を占める。軽水炉には、原子炉圧力容器内で高温高圧にした一次冷却水の熱で二次冷却水を蒸気に変える加圧水型原子炉(PWR)と、圧力容器内で冷却水を直接沸騰させ、その蒸気でタービンを回す沸騰水型原子炉(BWR)がある。世界全体ではPWRが軽水炉の8割を占めているが、日本では両者がほぼ同数となっている。軽水炉はウラン235の濃度を3〜5パーセントに高めた低濃縮ウランを燃料として使用するが、重水炉は、中性子を吸収しづらい重水を用いるため、天然ウランをそのまま使用することができる。現在、運用されている重水炉は、冷却材にも重水を用いる加圧重水型原子炉(PHWR)で、主流のCANDU炉は開発国のカナダをはじめインド・韓国・中国・ルーマニアなどで導入されている。黒鉛炉には、冷却材に炭酸ガスを用いる黒鉛減速ガス冷却炉(GCR)と、沸騰軽水を用いる黒鉛減速沸騰軽水圧力管型原子炉(LWGR)があり、それぞれ開発国の英国(GCR)、ロシア(LWGR)で運用されている。高速中性子炉は、核分裂によって放出される中性子を減速させずに利用する高速炉で、高速中性子による核分裂連鎖反応を利用した高速増殖炉(FBR)がロシアや中国で稼働している。日本で開発中のもんじゅは事故や保守管理の不備により長期間停止している。
世界各国で運用されている発電用原子炉
炉型 | 炉数 | 電気出力(MWe) | 主な導入国 | 減速材 | 冷却材 | 燃料 |
加圧水型原子炉(PWR) | 278 | 258,215 | 米国・フランス・日本・ロシア・中国・韓国・ウクライナ・スウェーデン・英国・インドなど | 軽水 | 軽水(非沸騰) | 低濃縮ウラン |
沸騰水型原子炉(BWR) | 80 | 75,353 | 米国・日本・スウェーデン・インドなど | 軽水 | 軽水(沸騰) | 低濃縮ウラン |
加圧重水炉(PHWR) | 49 | 24,549 | カナダ・インド・中国・韓国など | 重水 | 重水(非沸騰) | 天然ウラン |
黒鉛減速ガス冷却炉(GCR) | 15 | 8,045 | 英国 | 黒鉛 | 炭酸ガス | 天然ウラン/低濃縮ウラン |
黒鉛減速軽水冷却炉(LWGR) | 15 | 10,219 | ロシア | 黒鉛 | 軽水(沸騰) | 低濃縮ウラン |
高速増殖炉(FBR) | 2 | 580 | ロシア・中国 | — | 液体金属ナトリウム | 濃縮ウラン/ウラン・プルトニウム混合 |
合計 | 439 | 376,961 | 燃料 |
発電用原子炉の開発世代による分類
開発世代 | 年代・特徴 | 主な炉型 |
第1世代 | 1950〜60年代前半に開発された初期の原子炉 | シッピングポート原発の加圧水型炉・ドレスデン原発の沸騰水型炉原子炉・コールダーホール原発のマグノックス炉など |
第2世代 | 1960年代後半〜90年代前半に建設された商業用原子炉 | 加圧水型原子炉(PWR)・沸騰水型原子炉(BWR)・CANDU炉(カナダ型重水炉)・改良型ガス冷却炉(AGR)・ロシア型加圧水型炉(VVER)・黒鉛減速沸騰軽水冷却炉(LWGR)など |
第3世代 | 第2世代炉の改良型として開発され、1990年代後半〜2010年代に運転を開始した原子炉 | 改良型沸騰水型炉(ABWR)・改良型加圧水型炉(APWR)・System80+など |
第3世代プラス | 2010〜30年頃までに導入される、第3世代炉の経済性を向上させた原子炉 | 高経済性単純化沸騰水型炉(ESBWR)・欧加圧水型炉(EPR)・AP1000など |
第4世代 | 2030年頃の実用化を目指して開発中の、より高度な経済性・安全性・持続可能性・核拡散抵抗性を備えた原子炉 | ナトリウム冷却高速炉・高温ガス冷却炉・超臨界圧水冷却炉・ガス冷却高速炉・鉛冷却高速炉・溶融塩炉など |


眩しろ
【原子炉】(げんしろ)
原子核反応(核分裂または核融合)を安定的におこなうための設備。
現在はまだ核融合炉が実用化されていないため、一般的に原子炉といえば核分裂炉を指すことがほとんどである。
実験を目的としたもののほか、現代では発電を目的としたもの(原子力発電所)が主流である。
また艦艇などの動力を得たり、核燃料を加工するために用いられる場合もある。
核分裂炉:
核融合炉:
源四郎
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炉に関連する言葉 | 香炉(こうろ) 銀薫炉(ぎんくんろ) 原子炉(げんしろ) 立炉(たてろ) 燃焼炉(ねんしょうろ) |
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