猫の恩返し 猫の恩返しの概要

猫の恩返し

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/11 03:48 UTC 版)

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猫の恩返し
監督 森田宏幸
脚本 吉田玲子
原作 柊あおい『バロン 猫の男爵』
製作 鈴木敏夫高橋望
出演者 池脇千鶴
袴田吉彦
渡辺哲
斉藤洋介
山田孝之
前田亜季
佐戸井けん太
濱田マリ
中村俊洋
鈴井貴之
佐藤仁美
本名陽子
安田顕
白鳥由里
大泉洋
岡江久美子
丹波哲郎
音楽 野見祐二
主題歌 つじあやの風になる
撮影 高橋賢太郎
編集 内田恵
制作会社 スタジオジブリ
製作会社 徳間書店
日本テレビ放送網
ディズニー
博報堂
三菱商事
東宝
配給 東宝
公開 2002年7月20日
2002年11月29日
2003年5月2日
2005年5月7日
上映時間 75分
製作国 日本
言語 日本語
興行収入 64.6億円[1]
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概要

スタジオジブリの作品『耳をすませば』の主人公である月島雫が書いた物語という位置付けのスピンオフ。猫の男爵バロンとムーンが2作に共通して登場する。宮崎駿のリクエストをうけて柊あおいが描き下ろしたコミック『バロン 猫の男爵』を原作とする[2]

バロンの声を担当する声優は主人公とのバランスを考慮し、『耳をすませば』の露口茂から袴田吉彦に変更された[注釈 1]。また、『耳をすませば』で月島雫の声を担当した本名陽子が、クラスメイトのチカ役を担当している。

『耳をすませば』の直接の続編ではないが「月島雫が書いた物語」という位置づけであるため、実質的には続編に近く「続編は作らない」という方針を採るジブリが試みた唯一の続編相当作品である。

キャッチコピーは「猫になっても、いいんじゃないッ?」(糸井重里)。

日本国内の興行収入は64.6億円で2002年の邦画1位[3]、DVDとVHSを合わせたビデオグラム出荷本数は2007年5月時点で72万本[4]

あらすじ

女子高生・吉岡ハルは、学校に遅刻したある日の放課後、ラクロス部である親友のひろみと家路についていた。道中、何かをくわえた見かけない黒猫がトラックに轢かれそうになるのを目撃、咄嗟にひろみのラクロスのスティックを使って助ける。助けられた後、その猫は日本語で礼を述べ、二足歩行で歩き去る。実は、彼は猫の国の王子・ルーンだった。その夜、母親に「猫が話した」と告げたハルは幼いハルが「白猫と話した」と口にしたというエピソードを聞かされる。その夜中、猫王ら猫の国一行が現れルーンを助けたお礼として目録を貰う。

翌日、猫の国からのお礼が届くが、ひろみへの大量のスティック、家の庭いっぱいの猫じゃらし、マタタビ、ネズミといった、猫しか喜びそうのない代物ばかり。さらにはハルについてくる大量の猫たち。放課後、ひろみの掃除当番を代わりごみ捨てに行くと、想い人である町田が彼女と思われる人物と歩いているのを目撃。その直後に猫王の家来ナトルがハルの元を訪れる。「私は猫じゃないから猫じゃらしもマタタビも嬉しくない」と文句を言うハルに、それならば猫の国へご招待致しますとナトルは答えた。さらに、猫王はハルをルーンの妃にしようとしていることも伝える。ハルはそのことに慌ててナトルを引き止めるが、ナトルは「今夜お迎えにあがります」と言い残し去ってしまう。「猫のお嫁さんにされちゃう」とパニックになるハルにどこからともなく声が聞こえた。その声によると「猫の事務所を探して。十字街に居る白い大きな猫が教えてくれるから」とのこと。

学校の帰り道、ハルは十字街で白い大きな猫、ムタに出会い、「付いて来な」と言われたハルは付いて行くことに。着いたのは不思議な街で、そこにある小さな家の「猫の事務所」で猫の男爵バロンと、心を持つカラスのガーゴイルトトに出会う。ムタ曰く、猫の国は自分の時間が生きられないやつが行く場所で、それを聞いたバロンはハルに自分を見失わないようにと諭す。猫の事務所にいる時、突然現れたナトル率いる猫の集団に、ハルは連れ去られてしまう。そしてハルとムタは、バロンやトトと離れてしまい猫の国に連れ去られる。そこで、ハルはルーン王子と結婚する事を決められてしまい、猫耳尻尾が生えて猫にされてしまう。

泣く泣く猫の国の城での祝宴に参加していた時、ハルは仮面の貴公子に扮したバロンに助けられ、白猫ユキの手引きにより建物から脱出、塔の頂上に行けば元の世界に戻れると知り、ムタと共に迷路の堀を攻略する。迷路を阻む壁のハリボテを倒し、塔を登って行くが、中途で猫王が塔の下半分を爆破し崩壊させたため、追い詰められる。

その時、帰ってきたルーン、そしてハルを猫の事務所に導いた声の主・ユキにより助けられる。そしてユキは昔ハルに助けられたこと、ルーンと結婚することを告白。ハルはそのことを心から喜ぶ。諦めきれない猫王はハルを自分の妃にしようと薦めたが一蹴され、怒って暴れ出し、バロンに勝負を挑む。結局猫王が敗北したものの、塔の頂上からはハルの悲鳴が。塔が崩壊していたため、出口は人間界の上空のあらぬところにつながっていたのだ。

ムタとともに落下していくハル。しかしなんとか間に合ったバロンの指示で体勢を立て直し、遂にトト率いるカラス達に助けられながら人間界に帰還する。学校の屋上で、ハルはバロンに告白する。バロンは寂しがるハルに、また困った事件があったら猫の事務所の扉は開かれると言い残して去る。ハルは感謝の気持ちを叫び、日常に戻るのだった。

登場キャラクター

吉岡 ハル(よしおか ハル)[注釈 2]
本作の主人公。短めのポニーテールが特徴の女子高生。心優しく素直な性格。実は猫の言葉を理解できる能力をもっている。
朝に弱く、寝坊で学校を遅刻してしまうことも少なくない。ドジなことも多く、作中では2回ガードにつまづいて転倒している。
母子家庭のため、母が仕事で多忙な時は炊事などを引き受けており、家事は得意。
既に別の女子生徒[注釈 3] と交際しているクラスメイトの町田に片想いをしている。
劇中では当初は数々のトラブルから「猫なんて助けなければ良かった」と後悔していたが、バロンらとの触れ合い、猫の国での奮闘などから心境の積極的な変化が見られるようになる。終盤には自身を助け導いてくれたバロンを男性として意識する程に。物語のラストでは劇中での様々な経験からきた気持ちの現れからか、佇まいが大人びたものとなり、朝寝坊を治し、町田への想いを吹っ切るなど態度を改めるようになり、肩まで伸ばしていた髪もさっぱりとショートヘアにカットしている[注釈 4]
バロン / フンベルト・フォン・ジッキンゲン
「猫の事務所」(原作では「地球屋」という名前がある)の所長。「男爵」という設定で、身の丈30センチほどの、二足歩行で歩く猫の獣人。タキシード姿にステッキを持っており、イギリス紳士を連想させる風貌をしているが、名前はどちらかというとドイツ貴族に近い。性格は如何なる時でも冷静沈着、紳士的でムタ曰く「キザ」。
剣術の腕前は一流で、身体能力にも優れている[注釈 5]。自身が客に振舞う特製スペシャルブレンドの紅茶は、毎回味が変わるとのこと[注釈 6]
原作での毛色は黒に近いこげ茶で衣装も黒を基調としている一方、映画版では黄色がかった茶色の毛皮に白のタキシードを羽織っている。
一人称は基本的に「わたし」であるが、クライマックスの1シーンのみ、ハルに対し「を信じろーっ!」と発している。
猫であるが、実像が人工物であるため、「ゆ」の発音が可能。
原作では映画版と比べると少々茶目っ気が強め。一方で、猫の国を滅ぼしかねない凄まじい能力を秘めているらしい。
ムタ / ルナルド・ムーン
バロンの仲間の太った猫。普段は商店街をウロウロしている。
口が悪く短気で気難しいが、根は善良で、いざという時には頼りになる。ハルをかなり上の階段に放り投げることができるほどの怪力の持ち主。
自分の生い立ちについてはあまり語りたがらず、過去の経歴は後述する大犯罪猫であることが判っている以外はすべて不明。
猫王の「どうすればそんなに長く生きられるのか」という台詞から、通常の猫の寿命をはるかに超える年月を生きていると推測され、不老不死だと思われる。
猫の国について「ありゃ まやかしだ 俺みたいに自分の時間を生きられない奴の行く所さ」と語っており、これが彼の不老不死と思われる長寿と何らかの関係があると考えられるが、詳細については明かされていない。
通常、猫は「ゆ」という発音ができないことが彼によって説明されているが、彼自身は発音できる。これも長い年月をかけて生きてきたが故に身に付けた能力であると思われる。
作中で「おれはハッキリした女が好きなんだ」と語っている。
甘い物が大好きで数十個のケーキすら彼にとっては恐るるに足らず、こだわりも持っている模様[注釈 7]。その昔、猫の国で国中の魚を喰い尽くして逃げた伝説の大犯罪猫「ルナルド・ムーン」として知られ、壁画にもなっていた。
「ムタ」という名前は、元々「耳をすませば」にて原田夕子の自宅近くに居住する幼女が独自に名付けた名前である。当作では「ルナルド・ムーン」が本名という設定であるが、「ムーン」という名前は「耳をすませば」にて天沢聖司が独自に名付けた名前である。
トト
バロンの仲間のカラス(原作ではカササギ)。
普段は石像(ガーゴイル)だが、事務所が動き出すと知性を持つ様になる。
ムタとは喧嘩ばかりしている[注釈 8] が、困難にぶつかった時は力を合わせている。色々とハルやバロンの手助けをする。たくさんの仲間の群れを呼ぶことができる。
ルーン
猫の国の王子。恋人(恋猫)のユキが好きだったお魚型のクッキーを探し人間界に来ていて、車に轢かれそうになったところをハルに救われる。猫王を反面教師にしてきたため、父親と違って誠実で真面目な性格をしている。
父親と同じ色のオッドアイ
終盤にユキにプロポーズする。
原作では映画とは違い、マイペースな性格である[注釈 9]
ユキ
ハルが幼い頃に出逢った白猫。ハルを助ける為に彼女を「猫の事務所」へと導いた「不思議な声」の張本人。悲しそうな垂れ目をしている。
かつてハルに食べさせてもらったことから、人間界で売っている魚の形をしたクッキー[注釈 10] が大好き。
自身の名前が「キ」であるためか、「ゆ」と発音できる数少ない存在である。
猫王のお城で給仕をしている。
ルーンとは恋人(恋猫)関係にあり、終盤にプロポーズを受ける。
原作では元々ハルの飼い猫で、物語の7、8年前に交通事故により死亡している。また、ハルの護衛に失敗したムタに「大したことないのね」というなど、少々気の強い性格となっている。
猫王
本作の悪役。猫の国の王で、王子・ルーンの父親。青と赤のオッドアイである。我侭な暴君だが、最高権力者なので誰も逆らえない。
ルーンを溺愛するが、彼を人間の娘と結婚させようと、彼やハルの意思を全く無視して2人の結婚を強行しようとする。しかし、ルーンが彼の恋人・ユキとの結婚を猫王の前で発表するとそれを素直に祝福するも、今度は自分がハルの結婚相手に名乗りを挙げるという無茶苦茶な王様。その際に難癖をつけて強引に迫ったことから、ハルから「このヘンタイネコー!」と怒られた。
原作では行方不明の妃がおり、生存の知らせが入ったため捜しに行く。終盤で塔を爆破するなどやる事はかなり豪快であった。この騒動の後引退を決意。
映画では「ねこおう」と呼ばれているが、原作のルビは「みょうおう」で統一されている。
ナトリ
猫王の第一秘書。非常に有能で猫王を頭脳面でサポートしている。
冷静沈着な性格で、猫王の支離滅裂な命令もきちんとこなす(しかし、猫王が塔を爆破すると言い出した際は、「猫王の好感度が下がる」と判断して普段の冷静さを失いパニックになったことがある)。
唯一ムタに「どこかで見たことがあるような…」と疑問を持っていた(後にムタがルナルド・ムーンだと思い出した)。終盤で猫王と共に引退を決意。
原作では登場しない。
ナトル
猫王の第二秘書。垂れ下がった耳が特徴的で、ナトリと違って能天気な性格。半ば強引にハルを猫の国に連れてきた。
原作では大、中、小と3匹いる。
吉岡 直子(よしおか なおこ)
ハルの母。
夫はおらず[注釈 11]、一軒家で娘のハルと2人で暮らしている。パッチワークの仕事で生計を立てている。
ひろみ
ハルの親友でクラスメイト。ラクロス部に所属している。明るく思ったことをはっきりと言う性格。
同じクラスメイトで卓球部の柘植君がお気に入りで試合があったら真っ先に見に行く。なお、ハルは彼女のラクロスのスティックを使ってルーンを助けたが、その際にスティックは折れてしまい、後に自宅に大量のスティックが送られた(事情が事情だったので、ひろみは怒らなかった)。
元は柊あおい作の短編マンガ「桔梗の咲く頃」(「耳をすませば幸せな時間」に収録)の登場人物で、柘植君(本作では主人公)に片想いしている設定は同じである。
チカ
ハルのクラスメイト。泣きぼくろがあり、眼鏡をかけている。ひろみと卓球部の試合を観に来ていた。
劇中では名前は明かされない。



注釈

  1. ^ 2002年興行収入10億円以上番組 (PDF) - 日本映画製作者連盟
  2. ^ バロン 猫の男爵 - スタジオジブリ
  3. ^ 2002年度興行成績ランキング” (日本語). 楽天 (2013年6月11日). 2013年7月13日閲覧。
  4. ^ 110万冊無料配布。“ゲドを読む。”の狙いを読む 宮崎吾朗監督作品「ゲド戦記」DVDのユニークなプロモーション、日経ビジネスオンライン、2007年5月21日。
  5. ^ ギブリーズ episode2』の追放送に伴う措置
  6. ^ 24時間テレビ「愛は地球を救う」』の出演者による特設コーナー敷設に伴う措置
  7. ^ 1日の放送で2作放送するのは長い金曜ロードショーの歴史の中でも極めて稀であり、2011年7月15日に『海がきこえる』と『ゲド戦記』の2作が同日に放送されて以来、5年4ヶ月ぶりのことである。
  8. ^ 路線および駅の開業は2004年2月1日なので、原作発表時および映画公開時にはみなとみらい線 元町・中華街駅まだ存在していない。
  1. ^ 監督曰く「若々しい感じを出したかった」とのこと。もっとも、制作時点で既に露口は芸能活動を休業している状態だった。
  2. ^ 原作漫画では自宅の表札に「晴」と漢字で表記されている。ただし、漢字表記は表札だけであり、表札以外は原作でも全てカタカナ表記である。
  3. ^ ひろみいわく、一年で美人とのこと。
  4. ^ 原作では猫になった際に、猫の国のメイドに「そこだけ長いと変」と髪をショートカットに切られてしまう。
  5. ^ 杖と体術で2匹の兵士を倒したり、猫王との一騎討ちで勝つなど。
  6. ^ 劇中でハルはそれを「すごく美味しい」と評しており、その際には「君はツイてる」と返している。
  7. ^ だが、それが仇となってマタタビゼリーに入って身動きが取れなくなった。
  8. ^ ムタ曰く「鳥目野郎」「靴墨野郎」。
  9. ^ 原作では、車道の真ん中でぼーっと佇んでいて、事故にあいそうになっていた。「後日お礼を」と言ったのに、助けてくれた人物(ハル)の名前を聞き損ねていた(ユキに怒られる)。その上原作ラストで、「あらためて恩返しに伺いました」とハルの家に訪ねていき、ハルをずっこけさせた。
  10. ^ この設定は原作には無い。なお、ルーンが人間界で買ってきたのは烏賊で出来たコップ。
  11. ^ 原作漫画・映画ともに夫が居ない理由は明かされていない。


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