所有権 所有権の概要

所有権

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/20 14:00 UTC 版)

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18世紀ないし19世紀近代的所有権は、自由主義個人主義思想のもとで絶対的な所有権として成立し、原則的に無制限であると考えられていたが、20世紀に入ると私権の公共性が強調され始め、現代では所有権の横暴を抑制し公共の福祉を図るために社会的・経済的必要から所有権を原則的に制限可能なものであり、むしろ法律が許容する範囲内でのみその存在が可能なものと考えるようになった[2]

日本の民法においては206条以下に規定がある。

  • 以下、民法については、条名のみ記載する。

概説

占有を正当化し物の支配の基礎となる権利(占有権以外の物権)を本権というが、所有権は物の使用・収益・処分という全面的支配を内容とするものでその典型である[3]

近代的所有権の歴史

近代の所有権は、土地に対する複雑な封建的制約の廃止を目指して生成した。1789年フランス人権宣言は、所有権を「神聖不可侵」として所有権の絶対性(所有権絶対の原則)を標榜し、私有財産制の基礎を確立した。

近代的所有権の性質

  • 観念性
    所有権は物の現実的な支配(占有)とは関係なく観念的に存在するという性質[4][5]
  • 絶対性
    所有権は何人に対しても妨害を受けることなく主張しうるという性質[5][6]
  • 私的性質
    所有権は社会の承認を受けた権利ではあるが、物の支配という点では社会関係から切り離されて私的に存在するという性質[5][6]
  • 全面的支配性
    所有権は物の使用・収益・処分という全面的支配を内容とするという性質[4]
  • 渾一性
    所有権は物に対する一切の権能の源泉となる権利であるという性質[6]
  • 恒久性
    所有権は目的物が存在する限り永久に存在するもので消滅時効にかからないという性質[6]
  • 弾力性
    所有権は制限物権すなわち用益物権地上権など)や担保物権抵当権など)によって制限を受けても、その制限が消滅すれば再びもとの全面的支配を回復するという性質[6]

所有権の限界

所有権の社会性・公共性

20世紀に入ると所有権の絶対性による矛盾が表面化し、その是正が図られた。1919年ヴァイマル憲法(ワイマール憲法)153条3項が「所有権は義務を伴う」(Eigentum verpflichtet.)と定めたことは、この現れである。日本国憲法では、「公共の福祉」(日本国憲法29条2項等)により、所有権には一定の制限がかけられている。現在では、公衆衛生消防などの警察的な制限だけでなく、都市計画環境保全の分野など、行政法によって多くの制限が加えられている。

所有権の制限

私法上の制限

  • 土地所有権の範囲
    土地所有権は、法令の制限内において、土地の上空及び地下の範囲にまで及ぶ(207条)。
    • 地中の鉱物
    地中の一定の種類の鉱物(タングステンニッケルコバルト等)は国に掘採・取得の権利がある(鉱業法2条・3条)[7]
    • 大深度地下
    大深度地下の公共的使用に関する特別措置法により同法上の大深度地下の公共使用については同意や補償を要しない[7]
  • 相隣関係209条-238条
  • 特別法上の制限
特別法上の制限として借地借家法農地法がある[8]

公法上の制限

公法上の制限としては次のようなものがある[8][5]


  1. ^ 近江(2006)、214頁。
  2. ^ 所有権」(朝鮮語)『グローバル世界大百科事典ウィキソース。2021年3月8日閲覧。
  3. ^ 近江(2006)、177・179頁。
  4. ^ a b 近江(2006)、215-216頁。
  5. ^ a b c d 遠藤ほか(1996)、170頁。
  6. ^ a b c d e 近江(2006)、216頁。
  7. ^ a b 近江(2006)、220頁。
  8. ^ a b 近江(2006)、218頁。
  9. ^ a b 我妻榮有泉亨、清水誠、田山輝明『我妻・有泉コンメンタール民法 総則・物権・債権 第3版』日本評論社、2013年、449頁。
  10. ^ a b 鈴木禄彌『物権法講義 5訂版』創文社、2007年、26頁。
  11. ^ 田山輝明『物権法 第3版』弘文堂、2008年、30頁。
  12. ^ a b 永田眞三郎・松岡久和・横山美夏・松本恒雄・中田邦博『エッセンシャル民法 2 物権』有斐閣、2005年10月、28頁。


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