原始取得とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 同じ種類の言葉 > > 法概念 > 取得 > 原始取得の意味・解説 

げんし‐しゅとく【原始取得】

読み方:げんししゅとく

ある権利を、他人から引き継がないで、新しく取得すること。先占取得遺失物拾得時効取得など。→承継取得


原始取得

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/15 07:53 UTC 版)

ナビゲーションに移動 検索に移動

原始取得(げんししゅとく)とは、取得した権利の根拠がその権利を前に有していた者の権利にあるのではなく、その取得によって原始的(原初的)に成立する場合の権利取得[1]原始的取得ともいう[2]

概説

原始取得は新しい所有権の発生を意味する[3]。原始取得には狩猟漁獲採掘などによるもののほか、法律の規定によって別の者によって所有権が取得される場合も含まれている[3]。この場合、原始取得される以前に所有権に負担が設定されていたとしても引き継がれない[3]

原始取得と対となる概念は承継取得(承継的取得[2])である。承継取得は取得した権利の根拠が前主(その権利を前に有していた者)の権利にあり、その権利の同一性を維持したまま権利が移転するものである[1]。承継取得の場合には原始取得とは異なり所有権に設定されていた地上権抵当権などの制限物権が所有権の負担として引き継がれることとなる[3]

民法第2編第3章第2節(所有権の取得)に定められている所有権の取得原因はすべて原始取得である[1]。しかし、現代社会において所有権の取得原因として最も主要なものは契約(売買等)と相続でいずれも承継取得である[1]。また、第一次産業製造工業では先占・付合・加工による所有権の原始取得はあるものの、そこでは使用者労働者との契約関係が主に問題となり、民法第2編第3章第2節の規定そのものが問題となることはほとんどない[1]。そのため民法第2編第3章第2節の規定の現代社会における意義はあまり大きいものではない[1]

また、一般に時効取得即時取得も原始取得の一態様とされている[4]。ただし、これらは前主の権利に付着していた負担が取得時に払い落とされることを説明するための法的構成にすぎない[4]

なお、不動産取得税でいう原始取得とは、家屋の新築・増築などを指す。

  • 民法について以下では、条数のみ記載する。

原始取得の態様

民法に示されている原始取得は以下のとおり。

無主物先占
所有者のない動産は、所有の意思をもって占有することによって、その所有権を取得するとされている(239条1項)。川で魚を釣った場合がこれにあたる。
なお、所有者のない不動産は、国庫に帰属する(同2項)。これは不動産の無主物先占を否定する趣旨である[5]
遺失物拾得
遺失物は、遺失物法の定めるところに従い公告をした後3ヶ月以内に所有者が判明しないときは、発見者が所有権を取得するとされる(240条)。公告期間は1958年の法改正で1年から6か月に短縮され[5]、さらに2006年の法改正で6か月から3か月に短縮されている[5]
埋蔵物発見
埋蔵物は、遺失物法の定めるところに従い公告をした後6ヶ月以内にその所有者が判明しないときは、これを発見した者がその所有権を取得する。ただし、他人の所有する物の中から発見された埋蔵物については、これを発見した者及びその他人が等しい割合でその所有権を取得する(241条)。公告期間は遺失物とは異なり2006年の法改正でも変更されておらず6ヶ月である(遺失物法第7条4項)。
添付
が、所有権者の異なる他の物と結合するなどして新たな物を生み出した場合に、新たにできた物の所有権の帰属を定める制度。付合242条243条)、混和245条)、加工246条)の3種類がある。
時効取得
所有の意思をもって、平穏かつ公然と他人の物を占有し続けた者に、その所有権を取得させる制度。取得時効は20年だが、占有の開始時に善意・無過失であれば、10年とされる(162条)。
即時取得
動産を占有している無権利者を真の権利者と過失なく誤信して取引をした者に、その動産について所有権を取得させる制度(192条)。善意・無過失が要件とされるため善意取得ともいう。
自動車など登録制度のある動産には即時取得は成立しない[6]。ただし、未登録・未登記・登録を抹消されたものは即時取得の対象となる(最判昭和45年12月4日民集24巻13号1987頁、最判平成14・10・29民集56巻1964頁)[6]

脚注

[脚注の使い方]
  1. ^ a b c d e f 我妻榮、有泉亨、清水誠、田山輝明『我妻・有泉コンメンタール民法 総則・物権・債権 第3版』日本評論社、2013年、449頁。
  2. ^ a b 田山輝明『物権法 第3版』弘文堂、2008年、30頁。
  3. ^ a b c d 永田眞三郎・松岡久和・横山美夏・松本恒雄・中田邦博著 『エッセンシャル民法 2 物権』 有斐閣、2005年10月、28頁
  4. ^ a b 鈴木禄彌『物権法講義 5訂版』創文社、2007年、26頁。
  5. ^ a b c 我妻榮、有泉亨、清水誠、田山輝明『我妻・有泉コンメンタール民法 総則・物権・債権 第3版』日本評論社、2013年、450頁。
  6. ^ a b 我妻榮、有泉亨、清水誠、田山輝明『我妻・有泉コンメンタール民法 総則・物権・債権 第3版』日本評論社、2013年、405頁。

外部リンク


原始取得

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/11 01:12 UTC 版)

不動産取得税」の記事における「原始取得」の解説

原始取得とは、不動産存在しなかった場所に新たに不動産設けることを指す。 公有水面埋め立てによる土地の取得 家屋新築増築 家屋改築改築については、それによって家屋価格増加した認められる場合のみ、増加した価額課税標準とみなす) 取得時効民法289条、民法397条により時効取得は原始取得と解されている)

※この「原始取得」の解説は、「不動産取得税」の解説の一部です。
「原始取得」を含む「不動産取得税」の記事については、「不動産取得税」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「原始取得」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ



原始取得と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「原始取得」の関連用語

原始取得のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



原始取得のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの原始取得 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの不動産取得税 (改訂履歴)、領域権原 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS