2018・2022 FIFAワールドカップ開催地選定での不正
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「2015年FIFA汚職事件」の記事における「2018・2022 FIFAワールドカップ開催地選定での不正」の解説
スイスの司法当局は、2018年と2022年のFIFAワールドカップの開催地の選定をめぐる不正の捜査を始めたと明らかにしている。スイスの捜査当局では、2010年に行われた理事会に出席して投票した当時の理事の中から、この時点で10人から事情を聴いたことを明らかにした。5月下旬、FIFA本部を家宅捜索して、電子データを押収した また、スイスの検察当局はFIFAのブラッター会長に対しての事情聴取を必要であれば行うことにしている。主な目的として、2018年と2022年大会の開催が同時に決まった2010年当時の状況の情報収集だという。ブラッター会長の場合、スイスの法律では「容疑者と証人の中間的存在」として扱われることになっている。また、欧州サッカー連盟のミシェル・プラティニ会長に対しても「情報提供者」として事情を聴く事にしている。さらに、ロシアのムトコスポーツ相も聴取することになっている。聴取されるその人数は9人だという。その内訳はスイス国外に居住するFIFA執行委員が7人で、残りの2人はスイス国内に居住していて、その2人はFIFAのブラッター会長と欧州サッカー連盟のミシェル・プラティニ会長である。 2015年6月3日、FBI・アメリカ連邦捜査局が2018年と2022年のFIFAワールドカップの招致について捜査の対象にしている事が明らかにされた。スイスの捜査当局がこの件についての捜査をしているが、FBIではこの件の捜査を始めから改めて行うことにしている。2018年の招致ではマネーロンダリングを中心に、2022年の招致ではFIFAの理事会のメンバー3人に対して、カタールから全体の金額で150万ドル(日本円でおよそ1億8000万円)が渡された疑いについても、その関係した者に対して事情聴取を行ったという。これについてはカタールの招致委員会の職員からFBIに対して「FIFAのアフリカ出身理事3人に招致委が150万ドル(約1億8000万円)を支払った現場にいた」という証言も得ていたが、後に、この職員は供述を撤回している。ただ、この職員はFBIに対しては「招致委が圧力をかけたため」と証言している。 FIFAの監査・コンプライアンス委員会のスカラ委員長は2015年6月7日付のスイスの新聞にて、「(開催決定の)票が金銭で買われたことが明らかになれば、開催権を取り消す可能性がある」との見解を示したものの「まだ証拠は提供されていない」という。 2015年6月10日、スイス当局はこの招致の捜査に関連して新たにFIFAの本部から電子データを押収し、同時に、ブラッター会長や、バルク事務局長のオフィスからもデータを押収した。BBCでは、「ブラッター会長とジェローム・バルク事務局長、マルクス・カットナー財務部長のオフィスから書類が押収された」と伝えた。FIFAの広報担当者は、「スイス検察の検事総長からの要請に応じ、コンピューターのデータを提出しました」とコメントを発表した一方で、スイスの検察当局の広報担当者は、AFPに「FIFAは書類とコンピューターのデータを当局に提出した」と話している。 2015年6月17日、スイス当局はFIFAワールドカップの2018年ロシア大会と2022年カタール大会の招致活動に関して、マネーロンダリングの疑いがある事例、53件を調査していることを明らかにした。ただ、この53件は個人と企業の数という事で、個々に見ると、さらに多くの取引が含まれる。また、スイス当局はFIFAのブラッター会長を含め、すべての関係者から聴取を行う可能性もあるという。さらに、押収したデータの量が9テラバイトにのぼっていて、スイス当局は、捜査の難しさを強調していた。そのため、スイス当局では2018年・2022年の開催地が決まった際の過程について、特別対策本部を設置して捜査を行っている。 2015年7月6日、FIFAの倫理委員会は2018年・2022年のFIFAワールドカップの開催立候補地の視察団の団長を務めていたチリのマイネニコルスに対して7年間の活動停止処分をしたと発表したが、機密保持の規定があるという理由で処分の理由はわかっていない。 2015年10月6日、大韓サッカー協会の鄭夢準名誉会長が記者会見を行い、2022 FIFAワールドカップの招致において韓国が立候補した際、鄭夢準名誉会長がサッカー発展の為の基金の設立を提案し、2010年にその基金について、サッカー界を発展させるために活用するという主旨の内容の書簡をFIFAの執行委員に送付したことに関する経緯について、FIFA倫理委員会の調査を受けていることを自ら明かした。そして、2015年10月8日、FIFA元副会長である鄭夢準名誉会長が2018年と2022年のFIFAワールドカップの開催地決定の手続きの中で、FIFAが定めている規則に違反があったため、6年間の活動禁止に加え、10万スイスフランの罰金の処分を下された。この処分について鄭夢準名誉会長は、「(今回の)処分が(FIFA)会長選立候補を妨害する謀略」としてスポーツ仲裁裁判所への提訴を含めて、様々な法的手段をとることを明らかにするとともに、FIFAのブラッター会長に対して、背任や横領の疑いでの訴訟を起こすとした。 2015年10月12日にFIFAの倫理委員会は、2018 FIFAワールドカップの招致活動においてイングランドサッカー協会に投票する見返りに親善試合としてのタイ対イングランドのテレビの放映権料を管理できるよう求めたという疑惑が持たれている、かつてのFIFA理事でタイサッカー協会のウォラウィ・マクディ会長に対して、90日間の活動停止の処分を下した。 2015年10月15日付の多くのスペインの新聞が伝えたところによれば、スペインサッカー連盟のアンヘル・マリア・ビジャール会長が2018年・2022年のFIFA ワールドカップの開催地決定について、不正に関わったのではないかとして、FIFAの倫理委員会の調査の対象になっているのではないかという。 2015年10月21日、FIFAの倫理委員会は、かつてのFIFAの理事で当時のサッカー西ドイツ代表の選手のフランツ・ベッケンバウアーが2018年・2022年のFIFAワールドカップの招致の買収疑惑に関係しているとして(ドイツのビルド紙報道)、調査の対象になっていると発表した。その後、2016年2月17日、FIFAは、かつてのFIFA理事で西ドイツ代表のベッケンバウアーが2018年・2022年のFIFAワールドカップの開催地決定に関する投票に絡んだ調査において、FIFA倫理委員会の調査部門の再三の要請に対して、非協力的だったという理由で、警告に加え、罰金7千スイスフラン(およそ81万円)の処分を科したことを明らかにした。 2017年4月27日、フランス金融検察局(PNF)が2018年のロシアと2022年のカタールに対して、開催する資格があるのかについて調査を進めていることが、PNFの関係筋によって明らかにされた。この調査は、2016年から予備的な調査を始めていて、2017年4月20日には、証人としてFIFAの会長だったゼップ・ブラッターがこの調査を受けていた。 2017年6月26日に、ドイツの大衆紙であるビルトは2018・2022 FIFAワールドカップの招致疑惑について、詳しく調べた430ページにも及ぶ報告書を入手したことを明らかにした。この報告書には、元FIFA理事がカタール側の幹部から数千万円相当の送金をした際に、謝意を示した電子メールがあったことの記述があった。また、FIFAの幹部の当時10歳の娘の口座には200万ドル(およそ2億2400万円)の送金者がわからない人の振り込みがあったという。これを受けて、FIFAは6月27日、この400ページ以上の報告書をFIFA公式サイトで初めて明らかにした。 2019年6月18日、フランス当局は2022年大会の誘致をめぐる汚職容疑でプラティニを逮捕した。
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