2015年秋:笠原将生他2選手案件
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「読売ジャイアンツ所属選手による野球賭博問題」の記事における「2015年秋:笠原将生他2選手案件」の解説
2015年9月30日、二軍本拠地の読売ジャイアンツ球場での練習直後にある不動産会社の元社員が所属選手の福田聡志のもとへ借金百数十万円を取り立てに来た際、球団職員が対応したため騒ぎとなり、10月5日に福田が野球賭博に関与していたことが球団から発表された。同じく所属選手の笠原将生の知人を仲介とした賭博行為であり、全国高等学校野球選手権大会(夏の甲子園)や日本プロ野球、メジャーリーグベースボール(MLB)を対象とし、その中には巨人の試合も賭博対象に含まれていた。知人を福田に紹介した笠原は当初野球賭博を断っていたと主張していたが、日本野球機構(NPB)の調査委員会が電子メールなどを解析した結果、笠原と共に同じく所属選手の松本竜也も野球賭博を行っていたとの中間報告を発表した。 報告書によると、笠原は2014年4月から10月にかけてプロ野球10~20試合と高校野球を対象とした賭博、またそれ以外に麻雀やバカラで賭博を行い、松本は2014年6月から10月にかけてプロ野球十数試合で賭博を行っていた。また、3人は野球賭博が発覚しそうになった際、携帯電話から野球賭博のやり取りのメールを削除し、野球賭博に誘った飲食店経営の男性(なお、この飲食店経営者は後のNPBの調査によって、『野球賭博常習者』であると認定されている。)と相談するなどし、「賭けていたのは金銭ではなく食事だった」とうその説明をするよう口裏を合わせ、巨人や調査委に対して「復元されたメールに金銭の記載があるとしても、それは冗談を言い合っていた」と嘘の説明をしていた。なお、一部マスコミの報道では二軍の調査は2、3日で終了しており、調査が杜撰であったのではないかとの指摘もされている。 11月9日、球団は東京都千代田区大手町の球団事務所で緊急会見を開き、野球賭博に関与していた3選手(福田聡志、笠原将生、松本竜也)との契約を解除する方針を決定した。また、この問題における監督責任を取って原沢敦・読売巨人軍専務取締役兼球団代表が球団側に引責辞任を申し入れ、同日付で受理されたことも合わせて発表された。なお、球団代表は当面の間、空席となった。 併せて巨人の全選手・首脳陣・球団職員ら計276人に行ったヒアリングの調査結果が公表され、福田・笠原・松本の3選手は野球賭博だけではなく一般客が立ち入れない、いわゆる「裏カジノ」に出入りし賭博をしていた事実も発表した。そのほか、協約違反の有害行為の該当者はいなかったものの3選手以外にも巨人の一部選手間において賭け麻雀や賭けトランプ、高校野球を使ったギャンブルを読売ジャイアンツ球場のロッカールームでしていたことや、賭け麻雀には野球賭博に関与した3人の投手を含むおよそ10人が参加していたこと、賭けトランプは11人の選手が参加し大富豪やポーカーといったトランプゲームに1回1万円を賭けていたこと、守備練習でミスした選手から罰金を徴収していたことなど、球団内で賭け事が日常的に横行していた事実も発表した。現金を賭けることは賭博罪に該当するが、球団は関わった選手の名前は発表せずに厳重注意処分とした。 11月10日にNPBの調査委員会が提出した調査結果報告書の内容に従い、NPBの熊﨑勝彦コミッショナーは、3選手について「八百長(敗退行為)はなかったものの、日本プロフェッショナル野球協約(野球協約)第180条(野球賭博禁止規定)に違反し、多くの野球ファンのプロ野球への厚い期待と強い信頼を著しく損なうものである事を重視し、本件3選手による有害行為がプロ野球界に与える悪影響は限りなく計り知れないものである」として、無期失格処分の裁定を下し失格選手とした。この処分は最低でも5年は解除されることはなく、解除されるまではNPBが選手契約に関する協定を結ぶメジャーリーグベースボール、韓国野球委員会(韓国プロ野球)、中華職業棒球大聯盟(台湾プロ野球)、中国野球リーグではプレーできない。また球団に対しては指導、管理が不十分であったとされ1000万円の制裁金が科せられた。NPBコミッショナーによる野球賭博事件による選手の処分は1969年に西鉄ライオンズ(現・埼玉西武ライオンズ)の投手の八百長に端を発し、翌1970年に西鉄から3人の永久失格処分者が出た『黒い霧事件』以来のことである。なお「黒い霧事件」では、西鉄以外の他球団からも賭博に関わった選手や球団職員が永久失格を含め大量に処分されたが、今回の事件では3選手以外の巨人の選手ならびに巨人以外の11球団での賭博関係者はいなかった。 このコミッショナー裁定を受けて、巨人は同日付で福田、笠原、松本の3選手との契約を解除した。また、球団は今回の事件の責任を明確化するため、桃井恒和会長と久保博社長が取締役報酬の50%を無期限返上し、白石興二郎球団オーナー及び渡邉恒雄特別顧問が2ヶ月間の取締役報酬を全額返上する独自の処分を決定した。 コミッショナー裁定と同じ11月10日、NPBの磯村信哉管理本部長は民間スポーツを所管するスポーツ庁を訪れ、調査委員会がまとめた報告書の内容を説明した。その上で野球賭博にかかわった巨人の3投手を無期失格とし、球団に制裁金1000万円を科す処分とした経緯などを報告し謝罪。スポーツ庁はこの処分について、球界が自主的に出した判断として了承するとともに「大変残念で、今後こういうことのないようにしっかり取り組んでいってほしい」と再発防止を強く要請した。 またこの問題を受け、警視庁が賭博に関わった3選手を任意で事情聴取していたことがわかった。警視庁は、3人から事情を聴いたうえで、賭博罪にあたるかどうか慎重に調べることにしている。 11月18日、プロ野球のオーナー会議が都内で開かれ、会議の冒頭にこの野球賭博問題について、NPBの熊﨑コミッショナーからの一連の問題についての報告があり、続けて賭博を行っていた巨人の白石オーナーが陳謝し12球団が結束して再発防止に取り組むことを確認した。なお、会議の大部分は野球賭博問題の報告と意見交換に費やされた。これに対し、オリックスの宮内義彦オーナーが「情けない。なんでそんなことをするのか」とあらためて憤った。DeNAの南場智子オーナーも「子どもたちに夢を与える立場でございますので、選手としてあってはならないことであります」と厳しく発言している。議長を務めた西武の後藤高志オーナーも会議後の会見で「この危機を乗り越えなければいけない。しっかりとした議論をして再発防止策を取りまとめるように指示しました」とコメントしている。
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