2008年:iPhoneの日本上陸
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「日本における携帯電話」の記事における「2008年:iPhoneの日本上陸」の解説
2007年6月にアメリカで発売された初代iPhoneはGSM方式で3G非対応だったため、日本では発売されなかったが、翌2008年夏には3Gに対応したiPhone 3Gが発表され、7月にはAppleが日本でiPhone 3Gを発売し、携帯電話事業者ではソフトバンクモバイル(現 ソフトバンク)が独占販売した。1年後の2009年7月には、NTTドコモから初のAndroidスマートフォンであるHT-03A(HTC Magic)が発売され、2010年までに各携帯電話事業者がAndroid搭載のスマートフォンを発売し、2015年にはスマートフォンの個人保有率が50%を超えた。 iPhone 3Gの発売当初は、ワンセグなどの日本向け機能や、キャリアメール(のちに対応)などのキャリアの各種サービスにも対応せず、メインディスプレイの画面解像度もフルワイドVGA画面が主流だった当時、ハーブVGAで、カメラの画素数も500万画素が主流だった当時、200万画素止まりだったことなどスペック面の低さへの懸念から、「売れ行き失速」と報じられるなど、普及には懐疑的な見方もあった。 しかし、販売したソフトバンクは2009年から「iPhone for everybody キャンペーン」を実施し、iPhoneの購入時の初期費用を安くできるよう優遇措置を取ったことで、イノベーター以外にも広まり始め、2010年6月発売のiPhone 4では画面解像度がフルワイドVGAを上回る960×640ドットの「Retinaディスプレイ」になるなど、スペックも底上げされたことで、当時最新のフィーチャーフォンと遜色がなくなり、普及に拍車がかかった。その後、2011年3月の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)直後に、東日本の広範囲で携帯電話網がパンクした際、その影響を受けにくかったWi-Fiに標準で対応しているスマートフォンが注目を浴びたことや、同年6月にはスマートフォン向けコミュニケーションツールであるLINEが登場し、キャリアメールに代わる連絡手段として広く普及したことで、携帯電話端末の主力がスマートフォンに移行することになった。 またスマートフォンの台頭により主要な端末メーカーの勢力図も変わり、国内では圧倒的なシェアを持っていた日本メーカーがスマートフォンで大きく出遅れてしまい、フィーチャーフォン時代にシェアをほとんど持っていなかった外資系メーカーが市場シェアを伸ばしていった。2010年代以降、日本独自で時代に取り残されていった日本のフィーチャーフォンは、ガラパゴス諸島の生物になぞらえ、「ガラパゴスケータイ」あるいは「ガラケー」と揶揄されるようになる。 日本のスマートフォン市場の中でも、特に人気となったアップルのiPhoneは、2011年夏までソフトバンクのみの販売で、iPhoneを使いたいがゆえに、ソフトバンクに番号ポータビリティで乗り換えるユーザーも少なくなかった。一方、auとドコモは、ソフトバンクのみからiPhoneが発売されていた2008年~2010年は、EZwebやiモード、キャリアメールに対応できず、ワンセグなどの日本向け機能を搭載していない外資系メーカーの機種が中心だったスマートフォンには慎重で、2010年ごろから日本メーカーのAndroidスマートフォン参入により、Androidスマートフォンのラインナップを増やしていった。しかし、iPhoneを取り扱っていなかったauやドコモは、Android黎明期の機種の不具合多発(後述)などもあり、iPhoneの発売まではスマートフォン市場で苦戦した。 2010年夏にネットブック型のIS01を皮切りにISシリーズを導入し、同年秋から「Android au」を掲げ、鳴り物入りでAndroidに参入したauは苦戦の末、2011年10月にiPhone 4SでiPhoneを導入し、iPhone中心の展開に大きく舵を切った。2010年春のXperia SO-01BでAndroid端末としては初めてのヒットを収めたものの、その後もiPhoneを扱えず、特定のメーカーの機種を優遇せずに、日本・韓国メーカーのAndroidを手広く主力として販売していたドコモは大きく苦戦し、2012年11月には2006年10月の番号ポータビリティ開始以来最多となる21万件の転出を記録した。そこで、2013年夏モデルから、ドコモはXperia AとGALAXY S4の「ツートップ」販売で、特定のメーカーの機種を優遇して販売するようになり、2013年9月にドコモもiPhone 5s・iPhone 5cでiPhoneを導入した。それ以降、大手3キャリアともiPhoneが主力機種として展開されるようになり、iPhoneの新規購入者向けには多額の販売奨励金(キャッシュバック)が導入されるようになった。さらに、2019年10月から大手キャリアとなったものの、iPhoneが導入できていなかった楽天モバイルでも、2021年4月からiPhoneが導入された。 一方、アップルなど外資系メーカーに先を越された日本メーカーも、2010年ごろから、おサイフケータイやワンセグ対応、防水・防塵、テンキーなど、当時の外資系メーカーの機種にない機能を搭載させながら、Androidスマートフォンへと進出したものの、カスタマイズされたSymbian OSなどフィーチャーフォン用OSとは全く異なるAndroidの開発ノウハウが未熟だった2012年ごろまでの黎明期の機種は、電池持ちが悪く、さらには異常な発熱、電話の誤発信などの誤作動、再起動の繰り返しなどの致命的な不具合が多かった。これにより、動作が比較的安定していたiPhoneなど外資系メーカーのスマートフォンに替えるユーザーが増えることで、日本メーカー離れが進み、さらに各キャリアのキャッシュバック、旧機種下取りなどのiPhoneの販売面での優遇措置や、iPhone人気に合わせたサードパーティーによるケースなどのグッズの拡充により、iPhoneのシェアが過半数を占めるほどにまで高くなった。こうして、フィーチャーフォンの時代にはシェアの高かった日本メーカーは、フィーチャーフォン市場が衰退し、スマートフォンに市場が移行するにつれて、シェアを落としたり、携帯電話事業そのものから撤退したりしていった。 iPhone 3G(Apple、2008年) iPhone 3GS(アップル、2009年)
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