酒井憲二の研究による見直しと再評価とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > ウィキペディア小見出し辞書 > 酒井憲二の研究による見直しと再評価の意味・解説 

酒井憲二の研究による見直しと再評価

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/25 22:59 UTC 版)

甲陽軍鑑」の記事における「酒井憲二の研究による見直しと再評価」の解説

国語学者酒井憲二1990年代から『軍鑑』に関する国語学的、文献学的、書誌学検討行い酒井は軍鑑の研究水準大きく引き上げたとされる酒井は、『軍鑑』の様々な版本と写本を、文献学的・書誌学的に照らしてそれぞれ系統的に整理しテキスト底本とすべき写本確定させた。酒井の軍鑑研究は、『甲陽軍鑑大成 第四巻 研究編』(汲古書院1995年1月ISBN 4-7629-3329-5)にまとめられている。また、甲陽軍鑑大成 本文上・下』を版行した。 酒井研究主要な結論を以下にまとめる。 『軍鑑』は本来全23構成であること。 『軍鑑』の原本は、主に虎綱の口述口語り猿楽者・大倉十郎筆記することで成立した考えられる。虎綱の死後は、甥の春日惣次郎によって書き継がれた。しかし武田氏滅亡以降惣次郎浪々苦境にあり、原本傷んでいった。それをおそらく小幡光盛から入手した小幡景憲は、傷んだ原本書写努め元和7年1621年)頃に写本作り上げた(この写本現存しない)。景憲の書写態度は、傷んで写し難い箇所は「切れて見えず」という注釈190箇所もしているように原本忠実であり、加筆潤色などがあっても、最小限留められたであろう判断できる。 『軍鑑』本来の本文は、息の長いセンテンス文、類語積み重ねによる重層表現新興語、老人語古語)、俗語甲斐信濃方言庶民使用する「げれつことば」など、室町末期口語り要素色濃く残している。このような文章を、小幡景憲世代真似て書くことできない。景憲の役割は、謹直写し手、つまり写本作成者であって通説のような編纂者著者では有り得ない幾多合戦信玄と共にした虎綱ならば犯すはずのない誤り少なくないと言われるが、「存じ出だし次第書するにつき、年号、よろづ不同にして、前後みだりに候とも」(巻一末尾)、「人の雑談にて書き写し候へば定めて相違なる事ばかり多き必定ばれ共」(巻五)などの自ら断っている通りであって史料として限界があるのは当然である。特に口述筆記という史料の性格上、年月記憶錯誤があるのは必然である(誰しも10年20年前の出来事日時正確に語るのは難しい)。むしろ、その誤謬が何故起こったのかを考察すべきで、誤謬があるからといって『軍鑑』の価値下げることはできない。 軍鑑は、「勝頼公御代のたくらべになるべき」事を願って信玄遺臣立場から新君勝頼公とその側近跡部勝資長坂光堅への陳言書として書かれたものを根幹としている。 この酒井国学的研究嚆矢に、平山優小和田哲男黒田日出男らが実証的研究立場から『軍鑑』を再評価した。『軍鑑』を厳しく評価する笹本正治も、武家故実戦国人の習俗などの記述については史実伝えていると判断下している。 また、近代以降の『軍鑑』の価値決定づけた田中論文にも批判的検討加えられた。田中論文は、書誌学的・文献学手続きが不十分で、今日学問的水準からすれば説得力ある考証論証とは言いがたく、そもそもこの論文田中30歳の若い時に記した5ページ強の小論に過ぎない田中指摘した誤りも後の研究克服されている。田中指摘した誤り一例に「長閑斎」問題がある。これは天正3年1575年5月21日長篠の戦い前日日付比定される「長閑斎」宛武田勝頼書状(「神田孝平旧蔵文書」)において、武田領国のうちのいずれかの城を守備任されていた「長閑斎」が勝頼に飛脚派遣した内容である。従来、この「長閑斎」は勝頼側近長篠合戦において主戦論主張した長坂光堅(釣閑斎)に比定され、1960年昭和35年)には高柳光寿長篠之役』において『甲陽軍鑑』の誤りを示す実例として指摘された、これに対し2009年平成21年)には平山優が「長閑斎孝」『戦国史研究58号において「長閑斎」は駿河久能城主の今福長閑斎(『軍鑑』では浄閑斎)に比定されることを指摘する。他の軍鑑収録文書も、多くは『戦国遺文 武田氏編』などに原本良質な写し確認できるそれ以外文書も、幾つか検討要する文章含まれ日時人物の官位などに誤り改変加えられてはいるものの、内容史料批判すれば史料として使え、軍鑑の史料的価値が低い証拠には成りなくなっている。

※この「酒井憲二の研究による見直しと再評価」の解説は、「甲陽軍鑑」の解説の一部です。
「酒井憲二の研究による見直しと再評価」を含む「甲陽軍鑑」の記事については、「甲陽軍鑑」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「酒井憲二の研究による見直しと再評価」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ


このページでは「ウィキペディア小見出し辞書」から酒井憲二の研究による見直しと再評価を検索した結果を表示しています。
Weblioに収録されているすべての辞書から酒井憲二の研究による見直しと再評価を検索する場合は、下記のリンクをクリックしてください。
 全ての辞書から酒井憲二の研究による見直しと再評価を検索

英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「酒井憲二の研究による見直しと再評価」の関連用語

1
12% |||||

酒井憲二の研究による見直しと再評価のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



酒井憲二の研究による見直しと再評価のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの甲陽軍鑑 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS