部落問題、特別永住者と人種差別撤廃条約
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/19 19:34 UTC 版)
「日本の民族問題」の記事における「部落問題、特別永住者と人種差別撤廃条約」の解説
部落問題は、近世以降の歴史的な問題であり、社会的少数者である部落出身者への職業や世系(descent)による差別である。しかし、20世紀前半、部落民は日本民族とは人種的に違い、奴隷や朝鮮人、さらにはイスラエルの失われた支族の末裔であるといったことが信じられていた。1965年の同和対策審議会で「ただ、世人の偏見を打破するために断言しておかなければならないのは同和地区の住民は異人種でも異民族でもなく、疑いもなく日本民族、日本国民であるということである。すなわち、同和問題は、日本民族、日本国民のなかの身分的差別をうける少数集団の問題である。同和地区は、中世末期ないしは近世初期において、封建社会の政治的、経済的、社会的諸条件に規制せられ、一定地域に定着して居住することにより形成された集落である。」と答申され、異民族起源説は政治的には完全に否定された。 また、その後の研究では部落民は徳川幕府の政策により形成され、江戸時代を通じて追放者をこの身分に含めていくことによって増加し続けたが、それ以前はまったく、あるいはほとんど存在しなかったとされ、1615年以前は部落民の祖先となる人々に対する差別は特に無かったとする[信頼性要検証]近世政治起源説がある。但し、鎌倉時代には被差別部落の形成が始まり室町時代には差別は表面化していたとする説もまた存在し、被差別部落の起源については論争がある。近代以降の内地(日本本土)については北海道旧土人保護法や風葬#京都帝国大学による風葬骨持ち去り問題などもしばしば話題にのぼる。さらに、戦前は大日本帝国として外地の複数の民族を抱え込んだために、朝鮮排華事件のような中国人虐殺事件が起きることもあった。人類館事件や皇民化政策も併せて参照。 一方、「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約(人種差別撤廃条約)」では世界人権宣言の具現化を目指し、人種、およびそれに関連するあらゆる差別撤廃に取り組むよう世界に要請している。この条約において、民族差別と人種差別は、これらの明確な区分が難しいこともあり、民族的若しくは種族的出身(national or ethnic origin)に基づく差別を含めて「人種差別 (Racial discrimination)」 として定義されている(第1条第1項)。また、この条約、および監視機関である国際連合人権高等弁務官事務所人種差別撤廃委員会(Committee on the Elimination of Racial Discrimination)において人種差別だけでなく、カースト等の社会階層 (social stratification) 問題も含めて包括的に扱うため、第1条第1項において「職業や世系による差別」が「この条約における人種差別の定義」に含められた。これをもって国連 や国連との協議資格を有する部落解放同盟系のNGO、反差別国際運動 (IMADR)などで、部落問題を「条約上の人種差別」としてとらえることがある。 また、2002年8月の国連人種差別撤廃委員会の会合(CERD/C/SR.1531)において「世系による差別」をテーマに議論が行われ、人種差別撤廃条約第1条中の「世系」は人種のみを指すものではなく(人種由来でない世系差別も対象にする)、また「世系」(descent)という語句はその語句自身の持つ意味を重視すべきであり、日本政府から提出された最初(1997年1月14日)と二回目(1999年1月14日)の報告書に見られるように、人種や民族、出身国と混同すべきではない、とする2001年4月の同委員会の立場(CERD/C/304/Add.114)を改めて表明した。 他方、日本国憲法第15条で国民固有の権利とされる公務員の選定・罷免権(外国人参政権、外国人の公務員管理職への登用等)に関する問題、各種学校・民族学校である朝鮮学校への公的支援問題といった、元大日本帝国臣民でありサンフランシスコ平和条約発効により日本国籍を離脱し外国人となった韓国・朝鮮籍特別永住者に関係する人権・権利問題を、その歴史的背景と関連付けて日本の民族差別問題として扱うことがあるが、「人種差別撤廃条約」においては政府による市民・非市民間の区別、排除、制限、選別問題は人種差別としては取り扱われない。外国籍市民への不当な差別については国際人権規約やILO条約などに照らして扱われる場合が多い。
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