違法競走型への移行と高年齢化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/30 21:11 UTC 版)
「暴走族」の記事における「違法競走型への移行と高年齢化」の解説
こうした流れを受け、仲のよい不良少年同士が組織やルールといった従来スタイルに囚われずに、多くても十数名程度の小集団で適当に集まって散発的な暴走行為を行うケースが主流となっていった。これらでは、従来の「ヤンキースタイル」をしているケースは稀で、大集団となる傾向は見られない。また、バイクのアクセル音でリズムを刻むことを追求したり、ただ単に「乗りたい」というだけの行動や、走りを重視するゼロヨン族やドリフト族など、新しい形態の暴走族に姿を変えていく傾向が見られ、社会への反抗といった思想性や既存の特定集団への帰属意識は薄れていく。警察でも従来の調査方法では実態を把握しづらくなってきたことから、1994年からは「従来型」の暴走族に対し、ローリング族やゼロヨン族を「非従来型」として分離して統計を取るようになった。これによって、1995年には暴走族総数のうち非従来型の暴走族の割合が26.4%を超えていることが判明するなど存在感が増し、彼らが高速道路や山岳道路を占拠する状況が社会問題として取りざたされることも増えてきた。警察では1999年から、従来型の暴走族を「共同危険型暴走族」、非従来型を「違法競走型暴走族」と呼ぶようになっている。 一方で、地方では「ヤンキースタイル」が社会的反抗の様式として伝統的に残っている地域・集団もあり、ある種の「モラトリアム・ファッション」として共同危険型暴走族の形を取る少年が見られる。ただ、これらは1980年代の懐古趣味スタイルという位置付けで、個人が単なるファッションとしてそれを行っているに過ぎないケースも多く見られ、やはり思想背景は含まないものとなっている。 1990年代後半には社会環境としても、暴走族が地域の繁華街や観光地・イベントに出没し、周囲を威嚇するなどの行為への対策が急務となった。1999年、宮城県は県人口に対する暴走族参加率が全国一となったことを重く受け、都道府県として全国初の暴走族追放条例を施行した。更に2003年には罰則規定を盛り込んだ宮城県暴走族根絶条例となった。2002年には広島市で暴走族追放条例が施行されたのを皮切りに、全国の自治体で暴走族の取り締まりを目的とする条例を制定する動きが広がった。2004年には、道路交通法改正により、共同危険行為の摘発に際して必要だった被害者の証言が不要となり、現場の警察官の現認のみで逮捕が可能となった。全国のグループ構成員の総数は、1982年の4万2510人をピークとしてその後は減り続け、2005年には1万5086人となっている。2010年には、警察庁が統計を取るようになった1975年以降で初めて1万人を下回る9064人となったが、その過半数は特定のグループに加入していない者たちであるため、たとえ一部の者を逮捕しても他の暴走族の情報を入手しづらいことから、全体像の実態把握を難しくしている。 かねてより共同危険型暴走族は減少していたものの、違法競走型暴走族の摘発はしばらく増加を続けており、そのうえ違法競走型暴走族の場合は、大規模に集団走行している場合を除いて共同危険行為による摘発が難しいことが問題となっていた。しかし2010年代初頭を節目に違法競争型暴走族員数も頭打ちとなり、以後の構成員数は横ばいまたは微減が続いている。 若者離れの影響により、従来であれば後輩を加入させることで「成人したら引退する」といった慣習があったとされる共同危険型暴走族では、既存構成員が成人になった後もずるずると所属し続けたり、勢力維持のために成人OBを呼び戻す例が増えるようになった。加えて2000年前後からは、OBや未経験者の成人が独自に暴走族を結成した「旧車會」も現れるようになった。もともと年齢層が高めな傾向がある違法競走型暴走族の場合も、2008年には50歳代2人を含むグループが検挙されており高年齢化が進行している。暴走族構成員の平均年齢は年々上がってきており2006年からは成人が過半数となった。30歳代から40歳代の成人が検挙されるなど、相対的に少年層よりもこれらの活動のほうが活発という地域も発生し、さらに暴走族の平均年齢を押し上げる要因となっている。 2020年現在、暴走族構成員は最盛期(42,510人[1982年])の2/15となる5,714人(違法競走型暴走族1,209人含む)、グループ数は最盛期(1,313グループ[2002年])の1/10となる131団体と大幅に減っており、今後も減少傾向が続くと予想されている。また、暴走族の年齢別では少年が2,629人で、少年の割合が46.0%と2018年以降50%を切っている。また、沖縄では2008年から2018年で検挙された人数が1/6となっている。更に、旧車會は、違法行為を敢行する者として警察が把握した数で、5,583人である。
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