迷路
『ギリシア神話』(アポロドロス)第3巻第15章~摘要第1章 クレタのミノス王が、工人ダイダロスに命じて迷宮を作らせ、牛頭人身のミノタウロスをその奥に幽閉する。テセウスが長い糸の端を扉に結びつけて迷路に踏みこみ、ミノタウロスを殺して、再び糸をたどって出て来る〔*『変身物語』(オヴィディウス)巻8に類話〕。
『三国志演義』第84回 諸葛孔明が無数の石を積み上げて作った陣の中に、陸遜が迷いこみ出られなくなる。黄承彦が陸遜を出口まで導く。
『水滸伝』百二十回本第47~48回 祝家荘の道は複雑な迷路になっていて、入りこんだら出られない。「白楊の木のあるごとに道を曲がればよい」との情報を得て、宋江ら梁山泊軍は祝家荘軍を打ち破る。祝家荘軍は白楊の木をすべて切り倒すが、根株は残っているので、梁山泊軍は夜を避けて昼間に攻めこむ。
『即興詩人』(アンデルセン)第1部の2 少年アントニオは画家フェデリゴに連れられて、ローマ郊外のカタコンベ(地下共同墓地)へ行く。降り口に、長い糸のはしを結びつけ、ろうそくに火をともして、2人は地下旅行をする。しかし彼らは糸を見失い、迷路に踏み迷いそうになる。
『幽霊塔』(江戸川乱歩) 徳川末期の富豪・渡海屋市郎兵衛は、屋敷の地下に、箱根細工のごとく複雑な道筋をたどらねば出入りできない秘密室を作り、財宝を隠した。ところが渡海屋自身、複雑すぎる迷路のため出方がわからなくなり、財宝を抱いて死んでいった〔*50年後、渡海屋の子孫にあたる北川光雄とその恋人野末秋子が、財宝を発見した〕。
『今昔物語集』巻27-42 三条帝の代、岩清水八幡宮に行幸があった時のこと。供奉(ぐぶ)した左京属邦利延は、惑わし神のために、1人で長岡の寺戸・乙訓川・桂川のあたりを何度も繰り返し巡り歩いた。
『仙境異聞』(平田篤胤)上-3 ある日、寅吉少年が稲荷の前を通ると、たちまち夜になり、1すじの道が幾すじにも見えた。寅吉少年は「狐が迷わそうとしているのだ」と気づき、稲荷の社に向かって「馬鹿をするな」と大声で叱った。すると、もとのごとく昼になり、道も1すじになった。
『ドラえもん』(藤子・F・不二雄)「家がだんだん遠くなる」 のび太が誤って「捨て犬ダンゴ」を食べる。のび太は家を出たとたん犬に追われ、通行人に道案内を頼まれ、交番であべこべの方角を教えられる。ついにはマンホールに落ちて自宅の所番地を忘れ、のび太は捨てられた犬のごとく、家に帰れなくなる。
『猫町』(萩原朔太郎) 「私」は方向感覚が悪く、歩きながらの瞑想癖もあり、かつて、長く住んでいた家のまわりを、塀に添って何十回もぐるぐると廻り歩いたことがあった。目前にある門の入口が見つからなかったのだ。家人は「狐に化かされたのだ」と言った→〔異郷訪問〕5b。
*泥棒が逃げようとして、同じ所をぐるぐる巡る→〔泥棒〕6の『発心集』巻1-9。
★4.目隠しをして俥に乗せられ、迷宮の中を行くごとく、方々へ引き回される。
『秘密』(谷崎潤一郎) 刺激と歓楽を求めて夜の街をさまよう「私」は、浅草の映画館で、かつて関係を持ったT女と再会する。T女は私に目隠しをし、俥に乗せ、1時間ほど方々をぐるぐる回って、彼女の家へ連れて行く。それから「私」は毎晩のように、T女のもとへ通う。ある時、僅かな間、目隠しをはずして外の景色を見、それを手がかりに「私」はT女の家を探し当て、彼女が金持ちの後家であることを知る。謎が解けると同時に、「私」はT女への関心を失った。
『ふたりの王とふたつの迷宮』(ボルヘス) アラブ王がバビロニア王の宮廷を訪ねた時、無数の階段と入口と壁のある迷宮に案内され、からかわれた。アラブ王は日暮れまで迷宮をさまよい、屈辱を感じた。後にアラブ王はバビロニアを攻め、バビロニア王を捕らえて砂漠へ連れ去った。アラブ王は「私が持つ迷宮は、階段もなく、門もなく、回廊もなく、壁もない」と言って、バビロニア王を砂漠の真ん中へ置き去りにした。
『燃えよドラゴン』(クローズ) 少林寺の修行者リーは、南シナ海の要塞島へ乗り込み、首領ハンと闘う。ハンは鏡の迷路の部屋へ逃げる。いくつも見えるハンの姿の、どれが実体でどれが鏡像か、区別がつかない。その時リーの耳に、師の言葉が聞こえる。「敵と見えるものは、幻想にすぎない。幻想を打ち砕けば、敵を倒すことができる」。リーは、次々と鏡面を砕いて行く。ハンの姿が現れ、リーはハンを打ち倒す。
『地下水道』(ワイダ) 1944年、ドイツ軍占領下のワルシャワ。抵抗運動の組織はドイツ軍に包囲され、数十人の男女隊員が地下水道を抜けて脱出を試みる。懐中電灯やマッチの火を頼りに、汚水と悪臭の中を彼らは進む。隊員たちは、しだいに離ればなれになる。ある者はマンホールから外へ出てドイツ兵に射殺される。ある者は発狂する。隊長はようやく出口を見つける。しかし隊員を導く役目の従兵は、「自分1人助かればよい」と考え、隊員たちを置き去りにしてきた。隊長は従兵を射殺し、再び地下水道の中に入って行く。
『レ・ミゼラブル』(ユーゴー)第5部第1~3編 1832年6月。パリの共和主義者たちが蜂起し、軍隊と衝突する。青年マリユスも暴動に加わり、銃撃されて意識を失う。ジャン・ヴァルジャン(彼の養女コゼットとマリユスは恋人どうし)がマリユスを背負って、パリの地下に広がる下水道へ逃げ込む。暗黒の下水道をさまよった後に、ようやく出口が見つかるが、そこには鉄格子がはめられていた。戦場の死体から金品を盗む悪人テナルディエが現われ、30フランと引き換えに、鍵で鉄格子を開けてくれたので、ジャン・ヴァルジャンたちは外へ出ることができた。
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