菊水六号作戦
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「菊水六号作戦」・「第七次航空総攻撃」(5月11日 - 14日) 11日、「菊水六号作戦」と「第七次航空総攻撃」が発令され、海軍は8日から11日にかけて作戦機345機、うち特攻機86機を投入、12日から15日にかけても作戦機237機、うち特攻機47機を投入した。特攻機の未帰還はあわせて95機であった。陸軍も作戦機80機、うち特攻機35機を投入した。 いつものようにピケットライン対特攻の激戦が繰り広げられたが、レーダーピケットポイント№15に配置されていた ヒューW.ハドレイ(駆逐艦)(英語版)とエヴァンス(駆逐艦)(英語版)は、F4Uコルセアの迎撃を掻い潜った50機の特攻機と4機の桜花の同時攻撃を受けた。特にヒューW.ハドレイは3機の特攻が命中した後に桜花が命中し、沈没は避けられないと判断したB.J.マレイニ艦長は総員退艦を命じたが、艦内に残った最小限の兵員による神業的なダメージコントロールで沈没は逃れた。しかし、修理が可能なレベルの損傷ではなかったので、そのままスクラップとなった。これが桜花による最後の戦果となった。僚艦のエヴァンスも4機の特攻機が命中大破し、ヒューW.ハドレイと同じように廃艦となった。 レーダーピケットラインを突破した特攻機が、高速空母隊の攻撃に成功している。11日、第58任務部隊の旗艦である空母「バンカーヒル」では、司令のミッチャーが艦載機の発艦の様子を幕僚と一緒に見守っていたが、レーダーは敵影を捉えておらず、油断していた。その時、水面近くを巧みな低空飛行で接近してきた零戦(安則盛三中尉操縦)が、直前で急上昇すると、飛行甲板上に250㎏爆弾を投下し、そのまま、発艦準備中の34機の艦載機が並んでいる真ん中に突っ込んだ。爆弾はバンカー・ヒルの飛行甲板と舷側を貫通した後、海面上で爆発したが、突入した零戦により発生した火災で、燃料を満載していた艦載機が次々と誘爆を始めた。その後に小川清少尉の操縦する零戦(アメリカ軍公式記録では彗星)が、殆ど垂直に近い大角度降下で艦尾から接近してきて、250kg爆弾を投下後に飛行甲板後部に突入した。零戦が突入した箇所はミッチャーが幕僚らといた場所と30mしか離れておらず、ミッチャーは無事だったが、第58任務部隊の幕僚13人が戦死し、艦後部にある控室で待機していた戦闘機パイロットの多くが煙による一酸化炭素中毒で窒息死している。火災は艦全体を焼き尽くし、艦は操縦不能に陥ったが、ジョージ.A.サイツ艦長の的確なダメージコントロールによりかろうじて沈没は逃れた。ただし戦死者行方不明者402名、負傷者264名と特攻により単艦で生じた最多の死傷者を被ったうえ、修理のため、アメリカ本国のピュージェット・サウンド海軍造船所に回航されたが、同造船所で修理した艦船の中では史上最悪の状況で、修理は終戦までには完了しなかった。 詳細は「バンカー・ヒル (空母)#1945年」を参照 第5艦隊の旗艦重巡洋艦インディアナポリスは、菊水作戦発令前の1945年3月31日に特攻により損傷し、修理のためにアメリカ本土に回航されていたため、臨時旗艦となっていた戦艦ニューメキシコが、慶良間列島で弾薬や食糧の補給を受けていた5月12日の19時ごろに、2機の特攻機が急降下してきた。不意を突かれたニューメキシコは激しい対空弾幕でその内の1機を撃墜したが、残る1機が右舷側の煙突基部と砲台甲板に突入し大火災を起こさせた。突入した機体はニューメキシコ艦内に残された機体破片により、誠第120飛行隊の荻野光雄軍曹か東局一文伍長の四式戦闘機「疾風」と判明している。ニューメキシコには第5艦隊司令スプルーアンスが座乗しており、混乱の中で一時行方不明になったが、後ほど幕僚らが、兵士と一緒にホースを持って消火活動をしているスプルーアンスを発見し、胸をなで下ろした。ニューメキシコでは50名の戦死者と100名以上の負傷者が出たが、第54任務部隊のデヨと同様にスプルーアンスも2隻に渡って旗艦を特攻で大破させられることとなっ。 5月13日、バンカーヒルの脱落により旗艦を空母エンタープライズへ移した第58任務部隊司令ミッチャーは、これ以上の特攻機による艦艇の損失を防ぐため、高速空母部隊を北上させ、艦載機による鹿児島の特攻機基地攻撃を行った。日本軍はその反撃として、13日夜間に雷撃機十数機、5月14日黎明に500㎏爆弾を搭載した零戦の爆戦28機を出撃させ、爆戦6機が第58任務部隊を発見し突入した。その中の富安俊助中尉操縦の零戦が、エンタープライズに雲を利用しながら巧みに接近し雲中から様子をうかがっていたが、エンタープライズが左に変針したのを確認すると、雲底から突如として現れ、曲技飛行のスプリットSのマニューバで背面飛行のまま40~50度の急角度で急降下し飛行甲板上の前部エレベーターに突入した。500㎏爆弾は5層の甲板を貫通し最下層で炸裂し、前部エレベーターの残骸は空中130mに吹き上げられた。火災も発生したが弾薬や燃料の誘爆はなかったので13分後に鎮火した。しかし、エレベーター部分に大穴があき、飛行甲板は歪み、もはや飛行機の発着は不可能な程の深刻なダメージを被った為、16日に修理のためにアメリカに回航されそのまま終戦まで復帰することはなかった。ミッチャーもスプルーアンスやデヨと同様に2隻に渡って旗艦を特攻で破壊されることとなり、旗艦を空母ランドルフへ移さざるを得なくなった。 詳細は「沖縄戦#沖縄戦での特別攻撃隊」を参照
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