菊水五号作戦
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「菊水五号作戦」・「第六次航空総攻撃」(5月3日 - 9日) 5月3日、沖縄本島の第32軍は高級参謀八原博通の反対にも関わらず、司令官牛島満中将の決断により総攻撃を開始した。宇垣はその援護のため、九州及び台湾の陸海軍全航空戦力を投入することを決定し、同日「菊水五号作戦」と「第六次航空総攻撃」が発令された。海軍は1日から4日にかけて、作戦機449機、うち特攻機160機を投入した。特攻や銀河や天山による艦船攻撃の他にも、海軍陸攻や陸軍重爆によるアメリカ軍物資集積基地の爆撃も行われた。 詳細は「沖縄戦#日本軍総攻撃」および「牛島満#総攻撃の失敗」を参照 5月3日には、特攻機はレーダーピケットラインを攻撃し、アーロン・ワード(掃海駆逐艦)(英語版)が菊水三号作戦時のラッフェイと同じように、25機の特攻機と1時間に渡って激戦を繰り広げて、3機の特攻機と1発の爆弾の命中で、機関が停止し航行不能となり、喫水線付近まで浸水する甚大な損害を受けた。リトル(駆逐艦) が救援に駆けつけると、特攻機は瀕死のアーロン・ワードを無視しリトルを攻撃した。特攻機3機がほぼ同時にリトルに命中し、大爆発を起こすとわずか12分で轟沈した。その手際に驚いたリトルの生存者は、公式戦闘記録に「1機は垂直急降下、1機は低高度水平攻撃、1機はすーっと滑り込んできた。そのような共同攻撃が実施可能とは、殆ど信じ難いが、事実はその通りであった。」と記述している。特攻機はさらにこの2艦の生存者を救出に来た中型揚陸艦LSM(R)-195(英語版)も撃沈している。 5月4日には、特攻機の攻撃はさらに激しくなった。ピケットラインを突破し、輸送艦隊を攻撃しようとした1機は、集中砲火を浴びると、目標を軽巡洋艦バーミングハムに定め、第2砲塔に突っ込んだ。特攻機は3枚の甲板を貫通すると、艦内病室まで達して爆発し艦を大破させ、90名の死傷者を出した。バーミングハムは菊水二号作戦で旗艦テネシーが損傷した後、第54任務部隊の旗艦となり司令のデヨが座乗していた。バーミングハムが特攻を受けた時デヨはシャワー室でシャワーを浴びている最中で、負傷はしなかったが、慌てて着替えて命中箇所を見に行くと、Oscar(一式戦のこと)とほぼ同じ形状の穴が開いているのを見ている。デヨは2回続けて旗艦を特攻により損傷させられることとなったが、スプルーアンスとミッチャーも後に同じ目にあっている。またサンガモン(護衛空母)にも1機が命中し、21機の艦載機が全焼、艦橋とレーダーも破壊し、再起不能となる損傷を被った。 3日に続いて、ピケットラインでも激しい戦闘がおこなわれた。昨日轟沈したリトルの時のように、ルース(駆逐艦)にもほぼ同時に2機の特攻機が命中した後わずか4分で転覆しその30秒後に沈没した。さらに沈没30秒後に水中爆発を起こしたため、死傷者は艦長を含めて244名にも上り、無傷で救出されたのは93人に過ぎなかった。ルースの乗組士官はこの戦闘結果について「断固たる決意を秘めた自殺機の攻撃を阻止することが、事実上不可能なことを示している」と報告している。モリソンにも2機の零戦が同時に垂直降下で向かってきたが、内1機を撃墜、残りの1機が前部煙突の付け根に命中し第1ボイラーと艦橋の一部を破壊した。その後に複葉双発の水上機(そのような機体は日本軍にはないので同じ複葉水上機の九四式水上偵察機の可能性が高い)がF4Uコルセアの迎撃をかわすと、モリソンの航跡の上に一旦着水、航跡の上を滑走しながらモリソンを追尾し、離水するとそのまま超低空で砲塔に突入し、火薬庫を誘爆させた。モリソンは8分間で轟沈し死傷者255名にも上り、無事だったのは、誘爆で海中に投げ出された71名に過ぎなかった。 4月12日以降は戦果を挙げていなかった桜花も、5月4日にレーダーピケットラインへの攻撃に成功している。4機の桜花が射出され、1機がシェイ (掃海駆逐艦)(英語版)に命中し、艦内の至る所を破壊しながら進んだが艦内では爆発することなく、スタンリーの時と同様に反対側に突き抜け海上で爆発した。そのため沈没は免れたが、損傷は甚大であり、修理は1946年まで長期間に及んだ。他2隻の駆逐艦が至近海面に墜落した桜花の爆発や破片で損傷を負っている。 特攻は相応の戦果を挙げたものの、第32軍の総攻撃は大損害を受けて失敗に終わり、5日には攻撃が中止された。5日以降、少数の特攻機による散発的な攻撃の中で、9日には、イギリス海軍の空母インドミタブル、ヴィクトリアス、フォーミダブルとに損傷を与えている。ただ、イギリスの空母は飛行甲板が厚い装甲板で覆われていたため、特攻機に対して防御力は高く、いずれの艦も致命傷には及ばなかった。
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