線形・インターチェンジ計画
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/19 10:05 UTC 版)
「東名高速道路」の記事における「線形・インターチェンジ計画」の解説
名神高速道路では、設計に際し日本道路公団がドイツから道路計画の技術専門家であるフランツ・クサーヴァー・ドルシュ、アメリカからは土質、舗装の専門家としてポール・ソレデンガーを雇って、この両名の指導の下で高速道路の計画設計がなされており、これに引き続く東名高速建設においても両名が顧問を務めた。 東名は名神の設計を基本としながらも、幾つかの改良を加えている。名神では線形が栗東以西と以東で異なっており、早期に開通した西部が直線主体、それより遅く開通した東部が曲線主体であるが、これはドルシュの影響である。東名では、直線をほとんど用いず、曲線主体である。その比率は東名の総延長346.7 kmのうちの330.7 kmに達し、95.5パーセントとなっている。名神の約57パーセントと比較しても、東名の曲線の多さが際立っている。曲線への移行の背景として、ドライバーに緊張を持続させる意図がある。直線道路は単調であり、ドライバーの疲労感を高めて距離の目測を誤らせ、ひいては眠気さえ催すにことが経験的に実証されていることから、適度な刺激としてのカーブや勾配が必要となる。また、曲線主体とすることは、線形設計の自由度が高められ、用地取得においても建設費用にとっても望ましいものとなる。 曲線は平面線形と縦断(坂の上り下り)線形に用いられたが、2つはそれぞれ独立したものではなく、立体的に組み合わさったものである。設計段階で2つを組み合わせ、運転席から見たのと同様の三次元の立体像として捉えたのが透視図で、ドルシュは名神建設に際してこの透視図の効用を説いたが、道路の設計に利用され始めたのは東名と中央道からである。東名では透視図の作成に電子計算機を使用し、東名全域にわたって100 - 200 m毎に透視図を作成のうえ、問題箇所について再検討する手法を採った。平面線形、あるいは縦断線形だけを見た場合、円、クロソイド曲線、直線を入れて完璧な線形に見えても、ドライバー目線の立体的な視点から前方の道路を見たとき、道路が途切れて見えたり、先の道路形状が不明で運転予測が立てづらく、ドライバーの心理を不安に陥れることがある。2次元ではわからない欠点を3次元の透視図で洗い出し、それによって2次元の図に修正を加えて完成度を上げた。 .mw-parser-output .tmulti .thumbinner{display:flex;flex-direction:column}.mw-parser-output .tmulti .trow{display:flex;flex-direction:row;clear:left;flex-wrap:wrap;width:100%;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .tmulti .tsingle{margin:1px;float:left}.mw-parser-output .tmulti .theader{clear:both;font-weight:bold;text-align:center;align-self:center;background-color:transparent;width:100%}.mw-parser-output .tmulti .thumbcaption{background-color:transparent}.mw-parser-output .tmulti .text-align-left{text-align:left}.mw-parser-output .tmulti .text-align-right{text-align:right}.mw-parser-output .tmulti .text-align-center{text-align:center}@media all and (max-width:720px){.mw-parser-output .tmulti .thumbinner{width:100%!important;box-sizing:border-box;max-width:none!important;align-items:center}.mw-parser-output .tmulti .trow{justify-content:center}.mw-parser-output .tmulti .tsingle{float:none!important;max-width:100%!important;box-sizing:border-box;align-items:center}.mw-parser-output .tmulti .trow>.thumbcaption{text-align:center}} 高速走行を前提とする東名では、縦断線形と平面線形の組み合わせによるドライバー視点に立った、安全、快適な線形設計がなされた。予測の立てづらい線形、緩やかなカーブに突然急カーブが現れるなどの危険な設計は慎んだ。 S曲線と横断勾配が取り入れられた浜名湖橋。 東名酒匂川橋。曲線半径700 mと400 mのカーブに加え、カーブの前後にクロソイド曲線が4つ入る複雑な線形から成る。画像はパラメーター220 mのクロソイド曲線を経て、曲線半径400 mのカーブに差し掛かる場面。 路線の95パーセント以上に曲線が取り入れられたことは、路線を構成する橋梁にも曲線橋が多用されたことを意味する。平面曲線を描く過程で橋があるなら、橋にも曲線が取り入れられ、勾配の過程にあれば橋にも高低差を取り入れた。その中でも規模の大きい曲線橋としては、東名酒匂川橋、浜名湖橋、富士川橋がある。中でも浜名湖橋は横断勾配6パーセントから、S曲線を描いてマイナス4パーセントに移行することで、橋全体がねじれた構造となっている。富士川橋の場合は、クロソイド曲線が入るうえに、勾配も入り、高低差でいえば、名古屋側25 m、東京側11 mと橋の前後で14 mの差がある。東名酒匂川橋の場合、2箇所の曲線半径と、それを挟み込む4箇所のクロソイド曲線で構成され、このうちの一箇所は曲線半径400 mという急カーブである。 インターチェンジは21箇所を計画した。設計の基本としたことは、有料道路という建前から、管理業務の容易さを考慮して、料金所を1箇所に集約できるトランペット型を採用したことである。あらかじめ割り出した出入り交通量を踏まえ、インターチェンジ、接続する一般道路、両者の合計のそれぞれの基準量を設定し、設計時点、あるいは将来その基準量に達すると見込まれる場合は、一般道路との接続も立体交差としたダブルトランペット、また15年以内に達すると見込まれる場合はダブルトランペットの用地を確保したシングルトランペットとした。例外的に、東京インターチェンジは料金所が本線料金所であることからダイヤモンド型が採用されている。曲線半径35 m(最小値)、設計速度40 km/hという急曲線のトランペット型が採用できるのは、接続先が低速走行の一般道路だからである。これに対して、高速道路同士を直接接続するジャンクションでは高速で円滑に連絡できるように比較的緩いカーブが計画された。なお、開通時点で全てのジャンクションは未供用であったため、砧ジャンクションと小牧ジャンクションは設計にとどまっている。 インターチェンジの建設には莫大な費用がかかり、設計時点の物価では最低数億円、横浜インターチェンジ(現・横浜町田IC)で13億円である。よって、その投資に見合うだけの需要が建設場所になければならないことから、交通量の調査と共に、交通発着の度合いが高いところを見極め、そこをインターチェンジ設置の目安とした。インターチェンジ名称は地元要望が入り乱れたこともあって議論となった。川崎は第三京浜道路に同名のICがあることから「東名川崎」、松田は松田町がICの中心にありながら大井町の要望が強いため「大井松田」、富士は当初は「吉原」を称したが、吉原市と富士市の合併によって富士市になったことで自動的に「富士」となった。東京は将来的に東北道や常磐道の東京側の入口名称をどうするか、という問題があって、「東京世田谷」、「東京環8」の候補が挙がったが立ち消えとなった。
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