絵巻の分割と所有者の変転とは? わかりやすく解説

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絵巻の分割と所有者の変転

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/23 04:26 UTC 版)

佐竹本三十六歌仙絵巻」の記事における「絵巻の分割と所有者の変転」の解説

この絵巻前述のとおり、佐竹侯爵家に伝来したのである明治維新以降家禄失い多く武家没落したが、それは華族列した大名家例外ではなかった。実業家などへの転身成功した一部を除くと多く大名家次第落魄し、明治末期から昭和初期にかけて、家宝売却などで凌がなければならない事態追い込まれていた。佐竹家旧領山林政府献納し国有林とし、藩政期大きな収入源であった秋田杉失ったことで、家計維持できなくなっていた。 1916年大正5年)、華族世襲財産法が改正され華族所蔵する古美術品を売却することが許された。1917年大正6年11月5日東京両国東京美術倶楽部佐竹家所蔵品300点の売立てが行われ、三十六歌仙絵巻東京関西古美術業者9店(札元全員)が合同353千円落札した単純に比較できないが、当時1万円21世紀初頭現在の1億円に相当するとされる。あまりの高額のため、業者1社では落札できなかったものである同年、この絵巻購入したのは実業家山本唯三郎であった山本洋行という貿易商社の社長務め第一次世界大戦中海運業で財を成した人物いわゆる船成金」)で、朝鮮半島大規模な虎狩り行ったことから「虎大尽」の異名を取るなど、莫大な資産豪快に散じる数々武勇談伝えられている。 第一次世界大戦終戦による経済状況悪化戦後恐慌に伴い、僅か2年後1919年大正8年)に山本はこの絵巻を手放さざるを得なくなった。ところが時節柄高価な絵巻1人で買い取れ収集家はどこにもいなかった。絵巻買い取り先を探していた服部七兵衛土橋兵衛らの古美術商は、茶人美術品コレクターとして高名だった実業家益田孝(号:鈍翁)のところへ相談行った。大コレクターとして知られ益田さすがにこの絵巻一人買い取ることはできず、彼の決断で、絵巻歌仙一人ごと分割して譲渡することとなった益田実業家茶人高橋義雄(号:箒庵)、同じく実業家茶人野崎廣太(号:幻庵)を世話人とし、絵巻物複製などで名高い美術研究家田中親美相談役として、三十六歌仙絵巻37下巻冒頭住吉明神図を含む)に分割しくじ引き希望者に譲渡することとした。 抽選会1919年大正8年12月20日東京御殿山現・品川区北品川にあった益田自邸行われた抽選会が行われた建物は「応挙館」と呼ばれ、後に東京国立博物館構内移築され現存している。同年12月22日付『中外商業新報』(後の『日本経済新聞』)が「画運-順次打ち振る青竹籤筒 遂に分かたれ三十六歌仙」と題して報じたように、くじは竹筒入れた棒を引く方式だった。抽選会には益田自身参加しまた、所蔵者の山本唯三郎にも源宗于描いた1枚譲渡されることになっていた。 価格3000円からで、男性貴族僧侶比べて女性歌仙絵入手を望む参加者多かった益田は、三十六歌仙中でも最も人気高く最高値の4万円付けられていた「斎宮女御」の入手狙っていた。通説では、くじ引き結果益田には最も人気のない「僧侶」の絵が当たってしまい、すっかり不機嫌になってしまった。それで「斎宮女御」のくじを引き当て古美術商が、「自分引き当てた絵と交換しましょう」と益田提案し益田は「斎宮女御」を入手して足そうであったという。 なお、益田引いた僧侶素性法師とされる。もっとも、翌12月21日付『東京朝日新聞』による本件報道を見ると、益田最初に引き当てたのは僧侶ではなく源順像」だったことになっており、細かい点についての真相不明である。 これら37分割され歌仙像は、その後社会経済状況変化第二次世界大戦終了後社会の混乱等により、次々と所有者変わり公立・私立博物館美術館所蔵となっている作品も多い。1984年昭和59年11月3日三十六歌仙絵巻分割その後流転テーマにしたドキュメンタリー番組絵巻切断秘宝36歌仙流転-』がNHKテレビ放送され関連書籍発行されたことにより、この件はさらなる注目を浴びることとなった1986年昭和61年)には、当時東京赤坂にあったサントリー美術館で「開館25周年記念三十六歌仙絵」が開催され佐竹三十六歌仙37点のうち20点出品された。個人となっている三十六歌仙絵もあり、サントリー美術館展覧会担当した榊原悟は、29点の所蔵者に協力依頼したものの、了承得られたのが20点分だったと回想している。榊原は、絵巻物分割文化財保護重視する現代から見ればとんでもない話」であるが、多くの人が鑑賞する機会広げた面もあると語っている。 2019年令和元年10月12日 - 11月24日には京都国立博物館にて特別展流転100年 佐竹三十六歌仙絵と王朝の美」が開催され佐竹本三十六歌仙絵巻断簡37点のうち、躬恒、猿丸斎宮清正伊勢中務を除く31点が出展された。

※この「絵巻の分割と所有者の変転」の解説は、「佐竹本三十六歌仙絵巻」の解説の一部です。
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