結成までの経緯と概念
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/14 03:02 UTC 版)
「ドイツ海軍小型戦闘部隊」の記事における「結成までの経緯と概念」の解説
1930年代、日本海軍では小型戦闘装備の概念に一致する様々な小型舟艇が開発され、1941年の真珠湾攻撃でも特殊潜航艇が使用されている。これらは太平洋戦争開戦に伴い一時削減されたが、やがて戦況悪化と共に主力艦艇の喪失が重なり、再び充実が図られた。また欧州戦線における最初の本格的な小型戦闘部隊は、1941年春に結成されたイタリア海軍の第10魚雷艇団(英語版)(デチマ・マス)である。デチマ・マスは第一次世界大戦の戦訓から生まれた部隊であり、その結成から1943年のイタリア降伏までの間、地中海における唯一の有力な小型戦闘戦隊として活動した。また、その後もデチマ・マス隊員らはサロ共和国軍の一員として戦い続けた。イギリス海軍では、1942年春に小型戦闘部隊の編成を行なっている。これは鹵獲ないしサルベージによって入手されたイタリア製の人間魚雷および特殊潜航艇によって構成され、水中作業班(Underwater Working Party, UwWp)に所属していた。 ドイツ海軍が小型戦闘装備の開発調達および部隊編成に着手したのは1944年春のことだった。この際にはイタリア海軍のそれではなく:5、当時小型戦闘装備をより有効に運用しているとされたイギリス海軍の部隊が参考となった。 ドイツ海軍における小型戦闘部隊の編成が他国より遅れたのは、戦前から戦争初期にかけて海軍総司令官エーリヒ・レーダー提督がイギリス海軍に対向するべく主力艦艇の増強を重視するドクトリンを提唱していたことによる。1938年度および1939年度のZ計画では一定数の小型戦闘装備の調達も予定されていたが、それでも主力艦艇の増強に重点が置かれていた。 1943年1月30日、潜水艦士官出身のカール・デーニッツ提督が海軍総司令官に就任する。デーニッツはブリティッシュ・コマンドスのサン=ナゼール強襲や北アフリカにおける連合軍特殊部隊の活動など、1942年末から1943年初頭にかけて行われた襲撃作戦の成功を踏まえ、初めてドイツ海軍における小型戦闘部隊の重要性を認めた。また、この時点でデーニッツは小型戦闘部隊について説明するにあたり、イギリスにて特殊作戦の指揮を執ったルイス・マウントバッテン提督の名を取り、マウントバッテン組織(Mountbatten-Organisation)なる表現を用いている:11。当時、大型艦船を建造しうる大規模な造船施設はいずれも連合国軍の空襲を受けて破壊されており、新たに設置された地下造船所ではUボートや小型船舶しか建造することができなかった。さらに当時の戦況を踏まえ戦車や戦闘機の製造がUボートの製造よりも優先されており、海軍に割り当てられる鉄鋼などの資源は常に不足していた。こうした国内の事情に加え、イタリア軍やイギリス軍が実戦で小型戦闘部隊の有用性を示していたこともデーニッツの決断を後押しした。イタリアやイギリスでは、極少人数の特殊部隊員と少数の小型船舶を用い、敵の大型艦船を破壊ないし撃沈することに成功していた。まもなくしてデーニッツは、いわゆるヨーロッパ要塞(英語版)への侵攻を阻止あるいは妨害するべく、ドイツ本国および占領地の沿岸部で安価かつ生産性の高い小型戦闘装備の製造を開始させた。 小型戦闘装備の調達にあたり、次のような事項が想定・考慮された:30–31:13。 アメリカが有する大量の軍需物資と彼らが実現するであろう航空優勢の下、敵橋頭堡においてドイツ軍部が従来想定されてきた戦術を展開する事は不可能である。恐らく上陸地点には十分な絨毯爆撃が行われ、これによりドイツ軍の反撃が遮断され、上陸部隊はさらに一帯の確保を進めていくだろう。 こうした橋頭堡への攻撃を試みる際、主に敵供給に焦点をあてる。連合国軍の航空優勢を覆すことは不可能なので、敵供給線を遮断する唯一の手段とは水中兵器による攻撃である。この際、敵船団がごく狭い沿岸地域に集中せねばならない点は我が方へ有利に働く。すなわち、航続距離は必要としないが、敵船団に対して最大級の爆発力を発揮しうる装備を搭載した潜水兵器が必要となる。 連合国軍の上陸地点は推測するほかにない。したがって、大量のトラックや鉄道を用いずとも任意の時点で、また一晩で当該の地点へ大量に展開しうる水中兵器は極めて有効である。この点から、大掛かりな設備がなくとも進水を行えるようにしなければならない。 1943年9月のイタリア侵攻および1944年6月のフランス侵攻における連合国軍の上陸作戦ではドイツ海軍が想定した通りの状況が展開したが、その時点でドイツ海軍K戦隊の本格的な展開は行われなかった。
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