第二次大戦後の「タイメックス」
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/25 14:57 UTC 版)
「タイメックス」の記事における「第二次大戦後の「タイメックス」」の解説
USタイムはスイスを発祥とする時計メーカーのブランド名であったタイメックス(TIMEX)を買収、第二次世界大戦後の1950年から自社ブランドとした。インガーソルは市場において過去半世紀以上も「ダラー・ウォッチ」に代表される低価格時計の代名詞となっており、販売戦略上不利と考えられたためである。 ヨアキム・レームクールは、戦後の「タイメックス」ブランド発足に際して、単なる大衆時計に留まらない、丈夫で信頼性の高い実用腕時計という販売戦略を採った。合理化設計によって、「ダラー・ウォッチ」同様に軸受の宝石を減らして特殊合金で代替するなどの策を用いつつ、防水機能や耐衝撃機能も組み込み、低価格と頑丈さを両立させた。さらにその頑丈さをPRするため、1950年代には"It take a licking and keep on ticking" のフレーズで「手荒に扱われても動き続ける」ことをアピール、タイメックスの時計をダイビング投入や食器洗浄機投入、電気掃除機に吸い込ませる、モーターボートのスクリュープロペラに括り付けて水中で回すなど、数々の荒っぽい「拷問」にかけて宣伝した。 タイメックス製品は、インガーソル以来の伝統で引き続き廉価なピンレバー式手巻き腕時計を主力とし、0石・ピンレバー構造のまま自動巻き機能を搭載したモデルも市販した。ベトナム戦争時においては「ディスポーサブルウォッチ」と呼ばれる簡素な軍用腕時計を大量生産し、アメリカの各軍に納入している。 一方、1959年には「ラコ(Laco)」ブランドで時計を生産する西ドイツのラッハー社(Lacher & Co. AG)と同社系列のムーブメントメーカー・ドゥローヴェ(Durowe)を買収し、当時1957年にアメリカのハミルトン社が実用化したばかりの先端技術であった電池駆動式腕時計を、アメリカ生産より割安に供給できるドゥローヴェ製電動キャリバーを搭載することで1961年から発売、大衆時計市場に送り込んだ。USタイムは1965年にラッハー、ドゥローヴェをスイスのエボーシュSA(現・エタ社)に売却したが、その後もタイメックスでは1970年代までラコ-ドゥローヴェ系の電池式キャリバー搭載モデル生産を継続、ドゥローヴェ製多石・手巻き式キャリバー(17石・21石)を搭載した上級モデルも手がけている。 タイメックスの実用重視の低価格路線は、高級時計を売りたい宝飾店からは受けが悪かったが、一方でデパートはもとより、ドラッグストアから小さな煙草スタンドのような、従来は腕時計の小売場所と考えられていなかった販売チャネルを開拓することに成功した。この路線は結果的には適切で、1950-60年代、アメリカの名門高級時計メーカー各社がスイス製腕時計の台頭により、続々と実質的消滅に追い込まれてブランド売却またはスイスへの実質移転に至った中、大衆品メーカーのタイメックスだけがアメリカ資本の独立メーカーとして生き残った。 1969年には社名もブランド名の「タイメックス」(TIMEX)に変更。翌年にはマルマンを代理店として日本に進出したが、主力製品がピンレバー式の廉価品で、より本格的な機械式ムーブメントを搭載する日本メーカーの廉価帯腕時計に対抗できる性能水準ではなく、大きなシェアを得るには至らなかった。 1970年代のクォーツショックと日本メーカーの急激な伸びにおされ、70年代から80年代にかけては苦しい経営状態が続いたが、クォーツ式へのシフトを達成し、市場に踏み止まった。1986年に現在まで続くスポーツウォッチシリーズであるアイアンマン(IRONMAN)を発売。1989年には13-24時表記を最外周にした独特の文字盤表示と革を編み込んだベルトという個性的なデザインのサファリ(Safari)が映画『7月4日に生まれて』の作中でトム・クルーズ演じる主人公が着用していたことから大ヒットとなり、「タイメックス」の知名度を再び高めることに貢献した。1992年には文字盤全面が発光する機能の「インディグロナイトライト」を搭載した時計を発売した。現在タイメックス社の時計の約75%以上がこのインディグロナイトライト機能を搭載している。 現在ではアイアンマンシリーズ、アウトドア用のエクスペディションシリーズの他に、キャンパー、ウェークエンダー、サファリシリーズなどの三針クォーツウォッチ等を中心に販売している。
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