掛け算九九
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/04 23:08 UTC 版)
掛け算九九は、十進法の1から9までの自然数同士の掛け算を語呂良く暗記する方法である。1桁と2桁、2桁同士の掛け算を暗記する方法も含めて九九と呼ぶこともあり、この場合は「二桁の九九」という。ヨーロッパなどでは十二進法の名残で12×12までの乗算表を学んでいた。 日本の学習指導要領では小学校二年生の算数の授業で、1位数同士の乗法を学習することから、1位数同士の乗法を確実に習得する方法として活用されることが多い。 積が一桁のときは「が」を付ける。即ち「が」はゼロを意味し、十の位の空位を意識させるためにも役立つ。特に珠算において、「が」があるおかげで桁取りを間違えることがなくなる。 海外における九九 ドイツ語圏では大九九 (großes Einmaleins) と呼ばれる20×20までの掛け算をまとめたものもある。インドでは二桁の九九が学ばれているが、地域や学校によって差があり、最低でも1×1~20×20、最高では1×1~99×99まで学ぶ。インドの影響を受け、中国や韓国でも二桁の九九(1×1~20×20)はブームとなった。 英語圏では成年者も「掛け算九九を完全に言えない」ことが多く、アメリカの大学生・大学院生の38%が「九九を完全には覚えていない」という調査もある。これには英語には1種類の基数詞しかないことが大きく関係しており、語呂合わせができないという点で九九の習得を容易でなくしているという見解がある。 フランスには、俗に言う「フランス式指電卓」という掛け算の計算方法がある。両手の指で指を折っていって計算していく方法で、ドラマ「古畑任三郎」のスペシャル「笑うカンガルー」にて説明されている。同じく、インドにも「インド式棒算」という計算方法があり、棒を斜めに並行に引いて、交点の数を数えるだけで掛け算ができるものである。 日本での歴史 日本には大和時代に百済から伝えられ、平安時代には貴族の教養の一つとされていたという説があったが、奈良市の平城宮跡で出土した「九九」を記した8世紀の木簡に、中国の数学書「孫子算経」と同じ「如」の文字が書かれていることから、九九は中国から伝来したと考えられると、奈良文化財研究所が2010年12月3日に発表した。 8世紀に成立した万葉集には、情(こころ)八十一[グク] 二八十一[ニクク]あらなくに 八十一里[ククリ]つつ 十六[シシ] いさ二五[トヲ]聞こせ かく二二[シ]知らさむ 君は聞こし二々[シ] 生けりともな重二[シ] 三五月[十五月→望月] など、九九を用いた戯書が多数見られる。 掛け算九九の表(半九九の一例)「明治7年8月改正 乗算九九図」を基に作成12345678924 36 9 48 12 16 510 15 20 25 612 18 24 30 36 714 21 28 35 42 49 816 24 32 40 48 56 64 918 27 36 45 54 63 72 81 全九九と半九九 もともとは「九九」から唱え始めるのが普通であったが、のちに「一一」から唱えるようになった。九九と呼ばれるのはもともとは九九から唱えていた名残りである。現在では一の段(一一から一九まで)、二の段(二一から二九まで)、…、九の段(九一から九九まで)のように各段に分けて唱えることもしばしば行われる。かつては半九九と呼ばれる半分だけの九九が用いられていた。これは割り算九九と混同しないためにであったと考えられる。割り算九九が廃れるにつれ全九九が主流となった。 ×1の段2の段3の段4の段5の段6の段7の段8の段9の段11×1 = 12×1 = 23×1 = 34×1 = 45×1 = 56×1 = 67×1 = 78×1 = 89×1 = 9いんいちが いち にいちが に さんいちが さん しいちが し ごいちが ご ろくいちが ろく しちいちが しち はちいちが はち くいちが く 21×2 = 22×2 = 43×2 = 64×2 = 85×2 = 106×2 = 127×2 = 148×2 = 169×2 = 18いんにが に ににんが し さんにが ろく しにが はち ごにじゅう ろくにじゅうに しちにじゅうし はちにじゅうろく くにじゅうはち 31×3 = 32×3 = 63×3 = 94×3 = 125×3 = 156×3 = 187×3 = 218×3 = 249×3 = 27いんさんが さん にさんが ろく さざんが く しさんじゅうに ごさんじゅうご ろくさんじゅうはち しちさんにじゅういち はっさんにじゅうし くさんにじゅうしち 41×4 = 42×4 = 83×4 = 124×4 = 165×4 = 206×4 = 247×4 = 288×4 = 329×4 = 36いんしが し にしが はち さんしじゅうに ししじゅうろく ごしにじゅう ろくしにじゅうし しちしにじゅうはち はっしさんじゅうに くしさんじゅうろく 51×5 = 52×5 = 103×5 = 154×5 = 205×5 = 256×5 = 307×5 = 358×5 = 409×5 = 45いんごが ご にごじゅう さんごじゅうご しごにじゅう ごごにじゅうご ろくごさんじゅう しちごさんじゅうご はちごしじゅう くごしじゅうご 61×6 = 62×6 = 123×6 = 184×6 = 245×6 = 306×6 = 367×6 = 428×6 = 489×6 = 54いんろくが ろく にろくじゅうに さぶろくじゅうはち しろくにじゅうし ごろくさんじゅう ろくろくさんじゅうろく しちろくしじゅうに はちろくしじゅうはち くろくごじゅうし 71×7 = 72×7 = 143×7 = 214×7 = 285×7 = 356×7 = 427×7 = 498×7 = 569×7 = 63いんしちが しち にしちじゅうし さんしちにじゅういち ししちにじゅうはち ごしちさんじゅうご ろくしちしじゅうに しちしちしじゅうく はちしちごじゅうろく くしちろくじゅうさん 81×8 = 82×8 = 163×8 = 244×8 = 325×8 = 406×8 = 487×8 = 568×8 = 649×8 = 72いんはちが はち にはちじゅうろく さんぱにじゅうし しはさんじゅうに ごはしじゅう ろくはしじゅうはち しちはごじゅうろく はっぱろくじゅうし くはしちじゅうに 91×9 = 92×9 = 183×9 = 274×9 = 365×9 = 456×9 = 547×9 = 638×9 = 729×9 = 81いんくが く にくじゅうはち さんくにじゅうしち しくさんじゅうろく ごっくしじゅうご ろっくごじゅうし しちくろくじゅうさん はっくしちじゅうに くくはちじゅういち 掛け算九九の表と「数の大きさ」 掛け算九九の表(全九九)の横幅と高さを「掛ける数」に対応させると、「得られる数の大きさ」と「表のマスの大きさ」が対応した形式の表となる。教育現場等において、九九の指導の際にタイル等を用いて掛け算九九の答えをタイルの個数を基に指導するのが、その一例である。 掛け算九九(全九九、「数の大きさ」を「マスの大きさ」に対応)12345678911 2 3 4 5 6 7 8 9 22 4 6 8 10 12 14 16 18 33 6 9 12 15 18 21 24 27 44 8 12 16 20 24 28 32 36 55 10 15 20 25 30 35 40 45 66 12 18 24 30 36 42 48 54 77 14 21 28 35 42 49 56 63 88 16 24 32 40 48 56 64 72 99 18 27 36 45 54 63 72 81 1から20まで(暗記法ではないが、参考のため記載する) 123456789101112131415161718192011 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 22 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 40 33 6 9 12 15 18 21 24 27 30 33 36 39 42 45 48 51 54 57 60 44 8 12 16 20 24 28 32 36 40 44 48 52 56 60 64 68 72 76 80 55 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80 85 90 95 100 66 12 18 24 30 36 42 48 54 60 66 72 78 84 90 96 102 108 114 120 77 14 21 28 35 42 49 56 63 70 77 84 91 98 105 112 119 126 133 140 88 16 24 32 40 48 56 64 72 80 88 96 104 112 120 128 136 144 152 160 99 18 27 36 45 54 63 72 81 90 99 108 117 126 135 144 153 162 171 180 1010 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120 130 140 150 160 170 180 190 200 1111 22 33 44 55 66 77 88 99 110 121 132 143 154 165 176 187 198 209 220 1212 24 36 48 60 72 84 96 108 120 132 144 156 168 180 192 204 216 228 240 1313 26 39 52 65 78 91 104 117 130 143 156 169 182 195 208 221 234 247 260 1414 28 42 56 70 84 98 112 126 140 154 168 182 196 210 224 238 252 266 280 1515 30 45 60 75 90 105 120 135 150 165 180 195 210 225 240 255 270 285 300 1616 32 48 64 80 96 112 128 144 160 176 192 208 224 240 256 272 288 304 320 1717 34 51 68 85 102 119 136 153 170 187 204 221 238 255 272 289 306 323 340 1818 36 54 72 90 108 126 144 162 180 198 216 234 252 270 288 306 324 342 360 1919 38 57 76 95 114 133 152 171 190 209 228 247 266 285 304 323 342 361 380 2020 40 60 80 100 120 140 160 180 200 220 240 260 280 300 320 340 360 380 400
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