手術
『アルジャーノンに花束を』(キイス) 白ねずみのアルジャーノンは脳手術を受けて知能が高くなり、難しい迷路もくぐり抜けられるようになった。32歳の「ぼく(チャーリイ・ゴードン)」はIQ70だったが、3月に手術を受け、3ヵ月足らずでIQ185の天才になる。しかし人為的に高められた知能は、短期間でまたもとの水準にまで低下してしまうのだった。アルジャーノンは知能の極点を過ぎ、異常行動を示して死んでいった。9月頃から「ぼく」も知能の衰えを自覚し、11月には養護施設へ入る。「裏庭のアルジャーノンの墓に花束を供えてやって下さい」と、「ぼく」は書き遺す。
*鼠が一時的に高い知能を獲得する→〔鼠〕7の『星ねずみ』(ブラウン)。
★2a.ロボトミー手術。精神病患者の前頭葉白質を切除して、人格を変えてしまう。
『カッコーの巣の上で』(フォアマン) マクマーフィーは刑務所の強制労働を逃れるため、狂人のふりをして精神病院に入る。彼は入院患者たちをまきこんで病院への反抗を繰り返し、看護婦長ラチェッドの首を絞めて殺そうとまでする。マクマーフィーは取り押さえられ、ロボトミー手術を施される。その結果彼は、意志の疎通のできぬ廃人になってしまった。仲間の患者は、マクマーフィーの悲惨なありさまに心を痛め、枕で彼を窒息死させた。
『われら』(ザミャーチン) 単一国の国民の生活は、すべて数学的な秩序の上に成り立っており、「自由」は、2百年戦争(*→〔戦争〕7b)以前の未開時代の遺物と見なされていた。D-503号とI-330号は、単一国に対して反乱を企てるが失敗し、D-503号は、脳内の想像力中枢をX線で焼灼する手術を施される。その結果D-503号は、かつて愛したI-330号が拷問されるありさまを見ても、まったく心を動かされることなく、平然と眺めていた。
『麻酔剤』(ルヴェル) 青年医師ジャンが、ある人妻と愛人関係になる。人妻は急病で手術を受け、ジャンが麻酔を担当する。麻酔をかけられた人妻は、譫言で「ジャン、私は平気よ」と言い、「治ったら2人で散歩しましょう。また抱擁してね」などと、とんでもないことを言い出す。ジャンはあわてて麻酔剤を過剰に投与し、人妻は死んでしまった。
『外科室』(泉鏡花) 貴船伯爵夫人は胸部の病気で手術を受けるに際し、「私は心に1つ秘密がある。麻酔剤を用いると譫言(うわごと)を言うらしいから、それが恐ろしい」と言い、麻酔を拒否する。執刀する高峰医学士のメスが胸を割き、骨に達した時、夫人は「貴下(あなた)は私を知りますまい!」と言って、高峰の持つメスに手を添え、自ら乳の下を掻き切る。高峰が「忘れません」と言うと、夫人は微笑んで息絶えた→〔心中〕6。
『三国志演義』第75回 関羽は毒矢で射られ、右臂が青く腫れ上がった。トリカブトの毒が骨にしみわたり、このままでは腕が使えなくなるので、名医の華佗が、小刀で肉を切り裂き、骨についた毒を削り落とす手術をする。関羽はその間、酒を飲み肉を食べ、痛さを感ぜぬがごとく、まわりの者たちと談笑し、碁を打っていた。
『弾丸を噛め』(ブルックス) 西部開拓時代、麻酔なしで手術を受ける男が、弾丸を噛んで手術の痛みに耐えた、という故事がある。20世紀初頭、荒野を馬で駆けるレースに参加した男が、途中で激しい歯痛に襲われた。歯が欠けて、神経が露出していたのだ。開拓時代の故事にならい、男は弾丸を噛んで、虫歯にかぶせる歯冠の代用とし、レースを続けた。
『ブラック・ジャック』(手塚治虫)「ディンゴ」 オーストラリア大陸。荒野を1人で移動中のブラック・ジャックが、寄生虫エヒノコックスの新種に侵され、激しい腹痛に苦しむ。彼はテントを張り、局所麻酔の注射をして、鏡を見ながら自分の腹部を手術する。エヒノコックスを媒介する野犬ディンゴたちが、血のにおいをかぎつけて集まり、鋭い爪でテントを引き裂き始める。通りかかった男が銃を撃ってディンゴたちを追い払い、ブラック・ジャックは命拾いする。
★5.手術の失敗。
口裂け女(松谷みよ子『現代民話考』7「学校ほか」第1章「怪談」の20) ある女が整形手術に失敗して、口が裂けた。女はマスクをして道に立ち、通る男に「私はきれい?」と聞く。「ブス」と言うと、ナイフで腹を刺される。「きれい」と言うと、女はマスクをはずして「これでも?」と、口の裂けた顔を見せる。逃げると女は追いかけて来て、自分と同じように男の口を裂いてしまう(東京都東久留米市)。
★6.手術不能。
『白い巨塔』(山崎豊子) 浪速大学医学部第1外科教授である財前五郎が、胃癌に侵される。財前の恩師・東(あずま)名誉教授が執刀するが、癌はすでに肝臓に転移しており、手術不能だった。開腹部はすぐに縫合され、10時に始まった手術はわずか30分で終了した。東は、手術室の時計を1時間進ませ、11時半にするよう命ずる。麻酔から醒めた財前は時計を見て、手術が順調に行なわれたと思い、安堵する。
★7.生体実験手術。
『海と毒薬』(遠藤周作) 太平洋戦争末期。九州F市の大学病院で、米兵捕虜たちが生体実験の材料にされた。肺をどこまで切除すると死ぬか調べる手術が、結核研究の名目で行なわれ、医局員の勝呂(すぐろ)二郎はその手術に立ち会った。戦後、勝呂は懲役2年の刑を終え、東京郊外で医院を開業する。彼は「あれは仕方がなかったんだ」と考えた。「これからも、同じ境遇におかれたら、また同じようなことをやってしまうかもしれない」とも考えた。
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