引上げの動向
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/09 05:54 UTC 版)
地方自治体の中には、発注する公共工事などを請け負う会社に対して、日本国政府の規定最低賃金を上回る賃金を下限として支払わせることを目的としている公契約条例が制定されている例もある。 2013年(平成25年)の最低賃金引き上げでも、5都道県で生活保護問題で指摘されている逆転現象が残っていた。2013年度の引き上げ前の時点で生活保護費との開きが2014年(平成26年)の引き上げで逆転が解消された。 安倍晋三が内閣総理大臣に再登板した2013年以降は、最低賃金が毎年引き上げられている。最低賃金の全国平均が2013年には745円だったのが、2019年には901円となり7年間で20%程度上昇させた。アルバイトは人手不足のために最低賃金を大きく上回る時給を示したり、月に2、3万円の交通費は企業が負担して募集している売り手市場になっている。 企業の収益増加と賃上げで、景気浮揚を狙う安倍内閣は「1億総活躍プラン」として毎年3%引き上げていくことで、最低賃金の全国平均を1,000円に上げる とし、2017年3月28日に決定した「働き方改革実行計画」でも同じ方針を確認した。 こうした意向を背景に、2016、2017年度は25円ずつ引き上げられ、それぞれ引き上げ率3%を確保してきた。2018年も安倍内閣は、6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)で同様の方針を盛り込み、引き上げ額の目安を決める審議会にも理解を求めてきた。 中央最低賃金審議会の目安に関する小委員会の議論では、経営者側が「中小企業の経営は厳しい」と連続での大幅引き上げに反対した一方、生活水準を底上げしたい労働者側は引き上げを強く要求。最終的に引き上げ率は、政権の意向に沿った形となり、2018年度にも全国で3%の賃上げが決まり、全国平均は874円に引き上げられた。2019年は、2016年以降、年率3%程度を目途として引き上げられてきたことを踏まえ、景気や物価動向を見つつ、中小・小規模事業者が賃上げしやすい環境整備の取組とあいまって、より早期に全国加重平均が1000円になることを目指すことを明記した。 しかし、2020年6月3日は全世代型社会保障検討会議より、内閣総理大臣安倍晋三は、新型コロナウイルスの影響による経済悪化より、目標(より早期に全国加重平均最低賃金額が1000円になることを目指す。) を維持しつつ、早期に最低時給最低賃金引き上げについて中小企業の経営状況に考慮して引き上げるよう指示した。また、会議の中で、中小企業の代表組織である日本商工会議所や全国中小企業団体中央会は、経済悪化の影響を受けている飲食業や宿泊業などの中小企業の経営悪化を理由に引き上げ凍結も含めた引き上げ抑制を主張した。一方で、労働者側の代表組織である日本労働組合総連合会は、現状の最低賃金が先進諸国と比べて低いことやセーフティーネットの観点から引上げ継続を主張した。 日本共産党は、最低賃金を全国一律にし、時給をすぐにでも1,000円に引き上げ、最終的に1,500円を目指すことを主張している。また、中小企業に対する引き上げに伴う影響を少なくするために、賃上げ支援予算を1000倍の7,000億円に増額し、社会保険料の事業主負担分を減免するなどして対応することも併せて主張した。だが中小企業にとって、そのような大幅な引き上げは、緩和策があれど商品や、サービスに値上げという形で転化させることが、低コストの途上国にある企業と競争している国境がない現代では、海外移転や委託による依頼の喪失を招いて、日本の企業が収益どころか雇用を維持できなくなる。 結局は、賃上げされても最低賃金で働いている「資格」や「特殊技能」の人に対して付加価値がない労働者を解雇して、飲食店なら機械導入によるオートメーション化で労働力を確保することになるため、雇用減と産業の空洞化を招くだけと指摘されている。実際に企業の損益分岐点無視の最低賃金引き上げに対して、受付の販売従業員はなくして、タッチパネル方式の顧客対応ロボットに置き換える予定であり、今後はコストに合わない人材は失業者になるとだろうと述べられている。これとは別に、オックスフォード大学のマイケル・オズボーン博士が2013年に発表した論文によれば、2030年代までにファストフード店で料理をする従業員が、ロボットやAIに取って代わられる可能性が81%と高いことを指摘されている。しかし、この論文に対して、実験室レベルで自動化が出来る仕事も含まれているため、過大に推計されているとの批判もある。そして、職業を構成するタスク(業務)単位でみた場合に70%超えのタスクが自動化される職業は9%程度(日本の場合は7%程度)にとどまるとの研究結果もある。またAIや機械化によって雇用が奪われるという主張もあるが、それらの技術によってタスク量が減少するが、AIや機械化を導入したり、維持したりする仕事やそれらの技術により新たな仕事が生まれることにより、雇用が生み出される可能性もある。しかし同時に、中程度の技能を有するルーティン業務が減少し、専門的な技能が求められない低スキルの仕事と高度な技能が求められる仕事へと2極化していき、経済格差が拡大していくとの予測もある。
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