市民の動き
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/12 17:50 UTC 版)
「自粛」ムード 1988年(昭和63年)9月19日の吐血直後から昭和天皇の闘病中にかけ、歌舞音曲を伴う派手な行事・イベントが自粛(中止または規模縮小)された。自粛の動きは大規模なイベントだけでなく、個人の生活(結婚式などの祝宴)にも波及した。具体的な行動としては以下のようなものが行われ、「自粛」は同年の世相語となった。このほか、目立つような物価の上昇(インフレーション)は見られなかった。プロ野球優勝イベントの自粛中日ドラゴンズのリーグ優勝にて、「祝勝会」を「慰労会」に名称変更し、ビールかけや優勝パレードを自粛、西武ライオンズのリーグ優勝時もビールかけを自粛した。ただし、同年の日本シリーズ後には日本一となった西武ライオンズがビールかけを行っている。 セゾングループの西武百貨店では西武ライオンズ優勝セールを自粛した。 京都国体にて、花火の打ち上げを自粛。 自衛隊観閲式・自衛隊音楽祭など自衛隊行事を中止。 各国大使館・在日米軍基地にて、イベントの自粛・規模縮小。 広告演出の自粛。日産・セフィーロのCMでCM出演者の井上陽水が発した「みなさんお元気ですか?」の音声が失礼に当たると差し替え トヨタ・カリーナも同様に「生きる歓び」というコピーが問題となり、東京トヨペットのポスターが撤去された。 1988年(昭和63年)10月1日、津村順天堂がツムラに社名変更した際のコピーは、当初は「ツムラ君、おめでとう」になる予定だったが、急遽「ツムラ君をよろしく」に変更された。 テレビ番組放送・演出の自粛派手なバラエティ番組を、映画や旅行番組に差し替え。 ギャグ作品であったテレビアニメ『ついでにとんちんかん』(フジテレビ)の1988年9月24日放送予定だった第42話の放送が中止され、翌週の10月1日放送分をもって打ち切りとなった。 ロート製薬一社提供番組(TBS『クイズダービー』、MBS『ひらめきパスワード』、KTV『愛ラブ!爆笑クリニック』)の冒頭に放送されるオープニングキャッチを当分の間(1988年10月から翌年1月の崩御後までの間)自粛。 同年の『第39回NHK紅白歌合戦』についても中止になるかと懸念されていたが開催された。しかし、結果的にこれが昭和最後の『NHK紅白歌合戦』となった。 百貨店でのディスプレイを地味なものに変更。 神社における祭りを中心とした、伝統行事の中止・規模縮小。 地域イベントや商業イベントでの「○○フェスティバル」「○○まつり」の自粛・名称変更。 幼稚園や学校の行事自粛。 年賀状での「賀」「寿」「おめでとう」など、賀詞の使用自粛。 服喪 崩御後、政府の閣議決定により崩御当日を含め自治体には6日間・民間には2日間弔意を示すよう協力が要望された。その結果、各地での弔旗掲揚などの服喪以外に、以下のようなスポーツ・歌舞音曲を伴う行事などの自粛が行われた。全テレビ局でニュースおよび追悼特番のみの特別放送体制(崩御から2日間、NHK教育テレビ・衛星第1テレビを除く)。 崩御後のTVCM放送の大量自粛(崩御から2日間は完全に自粛、その後はテレビ局や番組提供のスポンサーが独自に判断、『水戸黄門』(TBS)のようにアイキャッチが出たままCMへ移行せず音楽のみが流れた例がある)。その穴埋めとして公共広告機構(現ACジャパン)のCMが放送された。ちなみに、同様の事例は1995年(平成7年)1月17日に発生した阪神・淡路大震災、2011年(平成23年)3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)、2016年(平成28年)4月14日に発生した熊本地震でも起きている。街頭の広告看板やネオンサインについても、派手な色が目立つものについては消灯したり、黒い布などで覆う措置が取られた。 大相撲初場所の開催延期(初日を1日延期して1月9日から)。 昭和64年度の全国高校ラグビー大会決勝中止(大阪府・大阪工業大学高等学校と茨城県・茗溪学園高等学校の両校優勝)。 昭和64年度の全国高校サッカー選手権が2日間順延。 第一回中山競馬および京都競馬の開催順延(1月13日 - 16日に開催)。 1989年(平成元年)1月8日のラジオ体操の中止。 各地で1月8日の公演(コンサート・演劇・寄席など)を中止・延期、「めでたい」内容の変更。宝塚歌劇団及び爆風スランプが、1月7日及び8日の公演を全て中止。他のほとんどは8日のみ中止。 1月7日 - 1月8日は企業・商店・レジャー施設が臨時休業や店内放送の自粛。証券取引所も株式などの取引が停止された。 1月7日 - 1月8日のJR各社の払い戻し手数料を無料化。 1月15日の成人式にて、装飾を地味にしたり派手なイベントを自粛 その後も自粛の動き自体は続いた。テレビ番組では歌舞音曲を控えることからベストサウンドが再放送などで差し替えられるなどの影響が出た。 この後、2月24日の大喪の礼では、再び企業・商店・レジャー施設が臨時休業した。民間での自粛・服喪の動きはこれをもって終息に向かった。 「殉死」 昭和天皇の崩御後は、確認されているだけで数名の後追い自殺者(殉死)が出た。崩御と同日に和歌山県で87歳の男性が、茨城県でも元海軍少尉の76歳の男性がそれぞれ自殺した。1月12日には福岡県で38歳の男性が割腹自殺を遂げ、3月3日にも東京都で元陸軍中尉の66歳の男性が自殺している。このように一部の自殺者が出た反面、同年の自殺者総数が増加するといった動向にはなっていない。
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