市場と産業
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/25 15:02 UTC 版)
1990年代に青色発光ダイオードが開発されて以降は、LEDによる白色光照明の実用可能性が高まり、局所照明を中心に徐々に市販製品が登場した。 野村総合研究所の予測では白色LED照明は世界全体で2012年には2009年の3倍近くの約4782億円相当になるとされた。富士経済では日本国内のLED照明市場は、2008年の全照明市場4494億円の内の約3%分133億円程度から、2012年には全照明市場4880億円の内の約12%分578億円程度になると予測していた。 白熱電球は世界的にも環境対策や省エネルギー政策の観点から使用中止が求められ、日本国内では環境省と経済産業省が2012年までに白熱電球の販売自粛を要請し、大手メーカーも積極的な販売を控えたため、代替が出来ない製品を除いて、生産を縮小した。 大韓民国では「15/30プロジェクト」という2015年までに全照明の30%をLED照明に切り替える計画を進めていた。中華人民共和国では「10都市街灯普及プロジェクト」によって国内21都市でLED街灯を試験的に設置する。中華民国政府は、2008年間からの4年間で総額20億台湾元をLED関連の研究開発支援に投資する。 中華民国と同様に、中国、米国もLED照明の開発に政府が多額の資金援助を行っている。日本でも、国内立地の推進事業等を通して、LED(他にはリチウムイオン電池・太陽光発電等)の事業・工場の立地が進んだ。 照明器具産業は、製品技術や市場変化の点で長い間大きな変化がなく、白熱電球や蛍光灯管という光源を作る幾つかのメーカーとそれを取り付ける器具メーカーがあり、両方行う総合照明メーカーも含めて棲み分けを行い成熟した市場で安定的な関係を構築してきた。特に光源メーカーとして新規参入する機会は乏しかったが、LED照明の登場で産業構造に変化の兆しがある。半導体を使用したLEDの光源は、半導体産業からの光源メーカーの参入機会を作りだした。新規参入と古参のいずれのメーカーでも、小型で調光が比較的容易なLED照明ならではの製品を市場に提案しており、電球の置き換え市場だけを狙っている訳ではない。 また、白熱電球だけでなく直管型蛍光灯の置き換えも視野に入っていた。新規参入企業の多くが白熱電球型ではなく直管型蛍光灯の代替用途での製品開発と販売を進めた。直管型LED照明は器具の全てがLED照明専用であるものから、既設の直管型蛍光灯器具から安定器やインバータ部を取り外して配線をつなぐもの、既設の直管型蛍光灯器具から安定器やインバータ部を取り外さずにそのまま取り付けるもの、の3通りがある。ただし、既設器具から安定器等を撤去する行為は器具メーカーの保証を受けられなくなるほか、再度蛍光管に切り替える際に安定器を再設置する必要がある。また、安定器を残置できるタイプのものは直管型LED照明に搭載する部品が増えるため、後述の問題を増大させる。 なお、蛍光管が全方位に光を放射するのに対し、直管型LED照明はLEDの特性上一方向にしか光を放射しないため、指定された形の蛍光管を取りつけることしか想定していない既存の蛍光灯器具でこういった直管型LED照明を用いるのは光の性質上適していない。また、直管型LED照明は蛍光管に比べてかなりの重量増となり、ソケットなど蛍光灯用器具部品が損傷したり直管型LED照明がソケットから落下する危険性も高い。また、経年劣化が進んだソケットや安定器を残置する場合は、いくら長寿命の直管型LED照明を取り付けたとしても、その前にソケットや安定器の寿命を迎えて不点となる。そのため、東芝ライテック、パナソニックなど日本国内の有力照明器具メーカーは下記のJEL 801が制定されるまでは器具とLEDユニットを一体化した直管型蛍光灯用器具の代替たるLED照明のみを販売していた。 2010年10月、日本電球工業会は新たな規格として、「L形口金付直管形LEDランプシステム(JEL801)」を制定した。これは既存の蛍光灯器具で直管形LED照明を用いることの危険性を電球工業会が問題視し、また経済産業省から電球工業会に対して直管形LEDランプシステムの標準化の音頭取りをするように指導があったためである。そして、東芝ライテックとパナソニック ライティングデバイスなどはこの規格に適合するL形口金付直管形LEDランプシステムの製品の開発・発売を発表した。また、この規格の制定により、日本国内ではG13口金を用いる直管形LEDランプは規格外品という扱いとなったほか、2011年2月に改定されたグリーン購入法における環境物品等の調達の推進に関する基本方針においても、G13口金を用いたなど既存の蛍光灯と構造的に互換性を有する直管形LEDは、当面の間、グリーン購入におけるLED照明から除外されることとなった。 LED照明は長い製品寿命を持つため、1度顧客が購入すれば24時間点灯し続けても4年以上も交換する必要がない。このため従来の白熱電球や直管蛍光灯のような交換需要は小さく、各メーカーでは最初の販売機会を逃さないように注力している。 2014年3月には業界の先陣を切ってパナソニックが「白熱電球及び蛍光灯を用いる一般住宅向け従来型照明器具の生産を2015年度を以て終了し、今後はLEDへ完全移行する」旨を公式発表した(蛍光ランプ・電球型蛍光ランプ・一部白熱灯は交換用途に絞って生産を継続。2014年3月4日付の朝日新聞・日本経済新聞経済面記事にて報道。なお卓上型の電球及び蛍光灯器具と乾電池や充電式電池で駆動する蛍光灯アウトドアランタンは2011年限りで生産を終え、LEDへの移行完了)。こうした「脱蛍光灯」の動きは国内他社にも広がっている。なお白熱電球の生産は(一部特殊用途を除き)2012年度を以て国内メーカー全社が完全終了した。
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