宣告から確定までの経緯
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/12 02:03 UTC 版)
「ランス・アームストロングのドーピング問題」の記事における「宣告から確定までの経緯」の解説
2012年8月24日、前日までにアームストロングが不服申し立てを行わなかったことを受け、USADAは、1998年8月1日以降の記録を全て抹消した上で、アームストロングに対し、「永久追放」宣告を行った。。以下はアームストロングを「永久追放」宣告するに至った、USADAの見解である。 エリスロポエチン(EPO)、自己血輸血(血液ドーピング)、テストステロン、副腎皮質ステロイド、およびそれらマスキング剤の使用歴があると考えられること。 EPO、輸血関連機器(例:測定針、血液バッグ、貯蔵容器と他の輸血機器や血液パラメータなど)、テストステロン、コルチコステロイドおよびマスキング剤などを所持している疑いがあること。 EPO、テストステロン、副腎皮質ホルモン剤を他者へ「横流し」していた形跡があること。 EPO、テストステロン、コルチゾンを他者へ投与した形跡があること。 支援奨励、幇助、教唆、隠蔽など、複数のアンチ·ドーピング規則違反が見られること。 またUSADAは、1998年8月1日以降の成績抹消について、次の通り見解を示した。 元チームメイトなどの証言や観察等を通して、1998年以前から2005年までの期間中にEPO、輸血(時ドーピング)、テストステロン、コルチゾンなどの使用歴があると考えられること。 EPO、テストステロン、ヒト成長ホルモンについては、1996年頃から使用していた可能性があること。 1999年から2005年までの期間に、EPO、輸血、テストステロン、コルチゾンなどの物質の提供(横流し)を行った上、それら物質の処方指導や投与をアームストロングが行っていたことを示す証拠を、元チームメイトらから提供を受けたこと。 2009年、アームストロングが4年ぶりにツール・ド・フランスに出場するまでの間、EPO、輸血時ドーピングが行われていたとする、科学的データが存在すること。 8月26日、USADAの最高経営責任者(CEO)であるトラヴィス・タイガート(英語版)は「USADAの裁定、処分には8年間の時効があるが、選手がドーピングを認めて調査に協力しなければ適用されない。アームストロングが調査に協力していたならば、例えば、ツール・ド・フランスの総合優勝記録取消は、8年前までの2004年、2005年の2回だけの可能性があった。今後ランスがドーピングを認めるならば、永久追放は取り消してもよい」と表明した。 8月30日、フランス自転車競技連盟(FFC)は、USADAがアームストロングに対して永久追放宣告を行ったことに対して、称賛する声明を行った。その上で、アームストロングのツール・ド・フランス総合優勝記録等の抹消のみを行うことを要望。併せて、獲得した総合優勝賞金等を全て含めて換算して割り出した、295万ユーロ相当金額を返還するよう要望した。9月9日、国際オリンピック委員会(IOC)の法務委員であるデニス・オズワルドは、アームストロングが2000年のシドニーオリンピックの個人タイムトライアルで獲得した銅メダルの取り扱いについて、具体的にどのような処置を取るかについては決めかねていると、AP通信のインタビューに答えた。また、当年開催のシカゴマラソンに、アームストロングは参加できないことも併せて述べた。 9月26日、USADAは、国際自転車競技連合(UCI)と世界アンチ・ドーピング機関(WADA)に対し、当初の当月末の期限を先延ばしし、当年10月15日頃をメドに、アームストロングのドーピング履歴に関する証拠書類を提出する見通しだとすることを表明。これに対し、UCI会長のパット・マッケイドは、なぜ先延ばしされるのかという疑問を呈するコメントを残した。 10月8日、UCIのバイオロジカル・パスポートに携わっていたこともある、医学博士のマイケル・アシェンデンは『カリフォルニア・ウォッチ』のインタビューで、アームストロングが、2009年のツール・ド・フランスにおいても、ドーピング違反の疑いがあるとする話を述べた。 10月10日、USADAのCEO、トラヴィス・タイガートは、USポスタルサービスチームにおける一連のドーピング違反事例についての調査報告書を公表した。USADAは、アームストロングが、ドーピングの「黒幕」と目される医学博士のミケーレ・フェッラーリに対し、100万ドルを超える「顧問料」を支払っていたことを、2人との間で取り行われた金銭授受明細書に基づいて明らかにした。またUSADAは、かつてUSポスタル、ディスカバリーチャンネルでチームぐるみのドーピングが行われていたことを証言した11名の元チームメイトの名前を発表(リーヴァイ・ライプハイマー、クリスティアン・ヴァンデヴェルデ、デヴィッド・ザブリスキー、トム・ダニエルソン、ジョージ・ヒンカピー、マイケル・バリー、フランキー・アンドリュー(英語版)、タイラー・ハミルトン、フロイド・ランディス、ステフェン・スワールト、ジョナサン・ヴォーターズ)。このうち、ライプハイマー、ヴァンデヴェルデ、ザブリスキー、ダニエルソン、ヒンカピー、バリーの6選手に対し、6か月の出場停止処分と該当期間の成績剥奪処分を下した。6選手は、その期間についてのドーピング歴をUSADAが公表したところ、全選手がこれを認めたため、処分を受け入れた。加えてUSADAは、アームストロングがUSポスタル時代にドーピングを是とするチーム土壌を醸成したとする報告書を、当時チームメイトだった上記選手の証言を交えながら公表した。さらにUSADAは、USポスタル時代に監督だったヨハン・ブリュイネールが、選手にドーピングを強要していた首謀者であるとの声明を発表した。一例として、マイケル・バリーとデヴィッド・ザブリスキーが、ブリュイネールから、エリスロポエチン(EPO)の使用を強要されたことを明らかにしている。 アームストロングと個人契約を結んでいるナイキは、USADAの上記の報告書が公表された後も、引き続き支援していく方針をオレゴンライヴ新聞に伝えた。 10月12日、同月10日のUSADAの声明を受け、ツール・ド・フランスの責任者、クリスティアン・プリュドムは、上記8月24日にUSADAが示した処分が決定された場合、総合優勝等の記録を抹消する考えを明らかにした。10月13日、国際オリンピック委員会(IOC)は、ドーピング違反にかかる時効は8年とされているものの、USADAがアームストロングの成績を、1998年8月1日以降抹消したことを受け、それに倣い、アームストロングが獲得した2000年のシドニーオリンピック・個人タイムトライアルの銅メダルについても剥奪できると表明。 10月15日、BBCラジオで、『Peddlers - Cycling's Dirty Truth.』という番組が放送され、タイラー・ハミルトンをはじめ、元女性マッサージ師などが、アームストロングのドーピングを語った。 10月16日、ニューヨーク・デイリーニュースは、グレッグ・レモンの妻・キャシーの150ページにも及ぶ報告書に触れ、ナイキが2006年当時、報奨金支払の有無を巡って、アームストロングのスポンサーだったSCAプロモーションズと係争中だったことを受け、1999年にサドル痛防止のために使用していた副腎皮質ステロイド入りのクリームがドーピング違反になることを恐れ、そのドーピング隠蔽の「口利き料」として、当時のUCI会長だったハイン・フェルブリュッヘン所有のスイスの口座に50万ドルを振り込んだとする話を報じた。これに対し、ナイキはそのような事実はないと否定し、またフェルブリュッヘンも否定した。 10月17日、ナイキは、当月10日にアームストロングを支援する旨を表明したことを撤回し、当日、自社のウェブサイトで契約解除したことを表明した。また、ベルギーのビールメーカー、アンハイザー・ブッシュ(AB)インベブもまた、年末に同氏との契約が満了した後、更新しないことを明らかにした。なお、両社とも、がん患者支援の「リブストロング」財団の取り組みの支援は継続する方針を示した。 10月19日、国際自転車競技連合(UCI)は、アームストロングにかかるUSADAの報告書についての見解を22日の月曜日に決断することを表明。10月22日、UCIはスポーツ仲裁裁判所(CAS)には上訴せず、USADAの裁定を受け入れる事を発表、シドニーオリンピック・個人タイムトライアルにおける銅メダル獲得事例や、自転車競技以外の競技で収めた成績を除く、1998年8月1日以降の全タイトルの剥奪が確定した。この決定に対し、USADAは歓迎の旨を表明した。 11月1日、国際オリンピック委員会(IOC)はアームストロングへの調査を開始した。2000年のシドニーオリンピック・個人タイムトライアルにおける銅メダルの取り扱いについて今後議論される見通しとなった。2013年1月17日、IOCはアームストロングのシドニーオリンピック・個人タイムトライアル銅メダルを剥奪すると発表した。
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