図書館の惨劇
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/19 03:55 UTC 版)
「コロンバイン高校銃乱射事件」の記事における「図書館の惨劇」の解説
ハリスとクレボルドが銃撃を続けている間、パッティ・ネルソンは救急隊に電話をかけ、自分が分かる限りの状況を説明しながら学生を机の下に隠れさせようとしていた。記録によると、午前11時25分05秒に911のオペレーターがネルソンの電話を受けている。ハリスとクレボルドが図書館に入ってきたのはその4分10秒後だった。ハリスとクレボルドは図書館に入る前に南通路で2つのパイプ爆弾を階段からカフェテリアに放り込んだ。爆弾は両方爆発した(その爆破の映像は監視カメラの記録に収められている)。彼らは爆弾をもう一つ図書館通路に放り込み、ロッカーの一部を破壊した。11時29分、二人は図書館に侵入した。中には52人の学生、2人の教師、2人の図書館スタッフが隠れていた。 ハリスは図書館に入るとカウンターの反対側から本棚を撃った。この銃撃で本棚に隣接しているコピー機の下で隠れていた学生、エヴァン・トッドが負傷した。ハリスは、「起きろ!」と大声で叫んだ。その声はネルソンがかけていた911の記録 (11:29:18) に残るほど大きかった。職員休憩室に隠れていたスタッフと学生は彼らが「白い帽子か野球帽をかぶっている奴は全員立て!」「ジョックは全員立て! 俺たちは白い帽子の奴を捕まえる!」などと言うのを聞いていた(コロンバイン高では運動部員は白い帽子をかぶるのが伝統)。誰も立ち上がらず、ハリスの「いいだろう、どっちにしろ撃つぞ!」と言う声が聞こえると、二人はそれから図書館の反対側へ進んだ。トッドはカウンターの下に隠れてやり過ごした。カイル・ベラスケスは、コンピュータが置かれた北の(または上の)列の机の下に体を丸くして隠れていた。彼は机の下から動かなかった。クレボルドは最初に彼の頭を後ろから撃って殺害した。二人はコンピュータ席の南列で自分たちのダッフルバッグから弾薬を取り出し、銃に再装填を始めた。彼らは外側の階段に面している窓へ歩いて行くと、学生を避難させている警察に警告を与えるため、窓越しに発砲した。これに対して警官側も応戦した。 数秒後にクレボルドは窓に背を向けて、ショットガンを近くのテーブルに隠れていたパトリック・アイルランド、ダニエル・スティプレトン、マカイ・ホールに発砲し、負傷させた後、着ていたトレンチコートを脱いだ。ハリスは自分のショットガンを持つと、コンピュータ受付の下の列まで歩き、最初の机の下に誰がそこに隠れているか確認せずに銃を向け、発砲した。この銃撃でその場所に隠れていたスティーブン・カーナウが死亡した。カーナウはこの銃撃で死亡した中で最も若い14歳だった。ハリスは続けてコンピューター受付の下に発砲し、ケイシー・ルーゲスガーを負傷させた。ケイシーは右腕に『バン、バン、バン』と三発銃撃を受けた(ケイシーは事件の後の取材で撃たれた瞬間自分の腕ではないような感覚だったと話している)。弾丸は左首筋を横切った。 さらにハリスが南のコンピュータ列の向かいのテーブルまで歩き、キャシー・バーナルを脅して跪かせると、頭部を撃って射殺した。この直前にハリスは頭の上で手を二回叩き、「(かくれんぼのように)見ぃつけた」("peek-a-boo")と言ったとされている。 ハリスはそれから次のテーブルに向かい、学生のブレー・パスクァーレ(十分な場所がなかったので、彼女は隠れられなかった)のいるテーブルの隣に座った。ハリスは「死にたくないか」などということを彼女に尋ねた。ハリスがパスクァーレをなじる間にパトリック・アイルランドは彼の近くにいた2人の負傷者(ダニエル・スティプレトン、マカイ・ホール)のうちの1人に応急手当を与え始めた。これを見たクレボルドは彼の頭に2発と足に1発発砲し、アイルランドの靴を吹き飛ばした。アイルランドは意識を失ったが奇跡的に生き残ることが出来た。 クレボルドはテーブルの下に隠れているアイゼア・ショールズ、マシュー・ケッター、クレイグ・スコット(3人とも学校の人気のスポーツ選手で、クレイグはレイチェル・スコットの弟)を発見。ショールズを連れ出そうとしたが出来ず、ハリスを呼び出した。ハリスはパスクァーレから離れ、クレボルドと合流した。2人は数秒間ショールズを罵った(目撃者はクレボルドが人種差別発言をしていたという)。直後にハリスはショールズを、クレボルドはケッターを狙ってそれぞれ発砲し、二人を射殺した。クレイグ・スコットは死んでいるふりをして無事にやり過ごした。ハリスは、それから二酸化炭素爆弾をホール、スティプレトン、アイルランドがいるテーブルの方に投げた。爆弾はすぐにホールが拾って遠くに投げたため、爆発で誰も負傷することはなかった。 続いてハリスとクレボルドは図書館の本棚とテーブルの周りを歩きながら本棚やテーブルに発砲した。クレボルドの銃撃でマーク・キントジェンが負傷、更にクレボルドはテーブル下に隠れていたリサ・クローツ、ヴァレーン・シェナー、ローレン・タウンゼンドに発砲。クローツとシェナーを負傷させ、タウンゼンドを射殺した。 一方、ハリスは2人の女子生徒が隠れていたテーブルへ行き、覗き込んで「哀れだな」と冷たい視線を送った。ハリスとクレボルドは空いたテーブルへ行き、再び銃器の再装填を行った。そこで負傷していたヴァレーン・シェナーが「ああ、神さま! 私をお助けください」と叫んだ。クレボルドはシェナーの方へ行くと、彼女に神の存在を信じるかどうか尋ねた。彼女は答えに詰まり、一旦はノーと言ったがイエスと言い直した。クレボルドが理由を尋ねると彼女は自分の家族が信じているものであるから、と言った。クレボルドはシェナーを罵ってその場から離れた。この現場を目撃していた人々から、このやり取りをしたのはシェナーではなく、前述の死亡したキャシー・バーナルではないか、という情報も出ていた。そのため、事件後に議論を呼ぶこととなった。 ハリスは別のテーブルの下にカービン銃で2度発砲、ニコル・ノーレンとジョン・トムリンを負傷させた。トムリンは外へ這い出ようとしてそれを見たクレボルドに蹴られた。ハリスがトムリンを罵った直後、クレボルドはトムリンに向け連続で発砲し、射殺した。ハリスは死亡したローレン・タウンゼントが倒れているテーブルの向こう側に歩いて戻り、テーブル下に隠れていたケリー・フレミングに向けてカービン銃を連射、射殺した。ハリスは再びクローツと死亡しているタウンゼントの方に撃ち、近くにいたジェアナ・パークを負傷させた。 11時37分頃、ハリスとクレボルドは図書館の中心へ移り、テーブルで武器の再装填を行った。クレボルドは近くにいた学生に気付き、自分の名を名のるように言った。その学生はクレボルドの顔見知りであるジョン・サヴェージだった。サヴェージがいったい何をしているのかと聞くとクレボルドは「ああ、ただの人殺しだ」と答えた。サヴェージは自分も殺すのか聞くと、クレボルドは戸惑った後、サヴェージに図書館から出るように言った。サヴェージは図書館の入口から無事に脱出した。サヴェージが去ったあと、ハリスはカービン銃で近くにいたダニエル・モーゼルの顔面を至近距離から撃ち、殺害した後に移動、生徒たちが隠れていそうな北の方向のテーブルにむけて銃を連射した。この銃撃でジェニファー・ドイルとオースティン・ユーバンクスが負傷、コーレイ・デポーターが致命傷を受け、後に死亡した。 二人はそれからテーブルから立ち去って、図書館のカウンターに向った。ハリスは図書館の南西の端へ火炎瓶を投げたが炸裂しなかった。カウンターにまわる途中で二人は先の銃撃で負傷していたエヴァン・トッドを見つけた。二人はトッドに『お前はジョックか?』と聞いた。トッドは『いいや』と答えた(トッドはアメフト部員だったが咄嗟に嘘をついた)。そしてハリスがトッドに『死にたいか』と聞くとトッドは『君たちはこれまでトラブルを起こしたことはないだろ?』と云った。それを聞くと二人の少年は去って行った。クレボルドは職員休憩室の方へ発砲し、小型テレビを破壊した。ハリスは、椅子をカウンターのパソコンの上部の上にドンと置くと、11時42分頃に図書館から出て行き、殺戮を終えた。 ハリスとクレボルドが図書館を出た直後、無傷の34人と負傷した10人の学生は北入口から避難した。パトリック・アイルランド(負傷して意識がなかった)とリサ・クローツ(負傷して動けなかった)は図書館に残された。パッティ・ネルソンはクレボルドが銃撃した職員休憩室に走った。そこには負傷して逃げ込んでいたブライアン・アンダーソンと3人の図書館スタッフがおり、彼女もその中に加わった。彼女たち5人は事態が終わる午後3時30分頃までそこに隠れていた。
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