原作と映画版の差異
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/09 20:31 UTC 版)
「嫌われ松子の一生 (映画)」の記事における「原作と映画版の差異」の解説
基本的には、原作の流れを踏襲しているが、かなり脚色されていて、人物設定も一部異なる。特に、田所校長や赤木、明日香の扱いが小さくなった(明日香は凝縮したとも言える)。松子の家族(恒造、久美、紀夫)との関係の描写に時間をさく一方で、ソープ嬢時代の話や、殺人を犯して刑務所に服役する場面はミュージカルシーンとして描かれ、短時間にまとめられている。また、性描写は必要最小限とし、主人公のポジティブさや、その人生の幸福な側面などを強調している。 描かれない話 松子が田所校長にレイプされかける事件が、修学旅行中に起きた教頭のセクハラ(胸を見せろと言われる出来事)に置き換えられ、松子はこのことを洋一に語っていない。このため映画では、洋一はまったく関係のない人物を殺害することになる。 綾乃の引退後は描かれない(殺されない)。原作では、綾乃が覚醒剤中毒の男に殺害されたことを知り、自分に覚醒剤を打とうとした小野寺から身を守るために包丁を持っているが、この話が描かれない。そのため、女に貢いでいた事への逆上から、犯行に及んだと受け取られる。実際、小野寺が松子を襲う様子は描かれていない。 映画版では、松子が死ぬところ(第5章:うたかた)で終わり、終章の法廷シーンが登場しない(テレビドラマ版も同様)。関連書籍などによると、原作者の山田宗樹は、この場面のカットに関しては気にしていない、とのこと。 設定の変更 松子は、荒川で一人暮らしした頃に、光GENJIの熱狂的ファンになっている。夜中に大声を出したのは、メンバーの内海光司に自分のこれまでの人生を綴った大量のファンレターを送ったにも関わらず返事が来なかったため(このシーンまでの松子のモノローグは、全てファンレターに綴った内容である)。またこの際、自室の壁に「生まれてすみません」とメッセージを刻んでいる。 松子は、荒川の河川敷で名刺を握ったまま死ぬ(原作とドラマでは自宅に帰り着いた後息絶える)。めぐみは、警察から松子の死を聞かされ、アパートを張り込んでいたところで笙に出会っている。原作では名刺は見つからず、また、めぐみも松子が名刺を探していた事を、この著書では知っていない。 松子は、精神的に追い込まれたりすると両目を寄せて口を尖らせるひょっとこのような表情になる。これは幼少の頃、少しでも父親の気を引きたいとの思いから編み出した物だった。 松子に暴行を加えたのがその場で喧嘩騒ぎを起こしていた不良中学生のグループで、松子が注意したところ逆ギレして暴行を加えた事になっている。原作ではたまたま近くで遊んでいた大学生のグループで、面白半分で松子を嬲り殺しにしている。またドラマでは、松子が名刺を探した後預金に行った銀行で出くわした外国人の窃盗団になっており、口封じのために松子を襲ったという設定。 龍洋一のその後の姿が大きく異なる。原作では出所後に更生して教会関係の仕事についており、事件の加害者について憤慨する笙を諭す分別のある大人になっているが、映画では出所後は奇怪な言動や暴力行為に走るなど、人格的に破綻した人物となっている(笙はこのことについて『伯母さんがもういないという現実に絶望して刑務所に戻りたいんだ』と語っている)。なおドラマでは上記の通り裁判のシーンはなく、事件の犯人が逮捕された後松子の遺品を受け取りに警察に行き、そこで改めて松子が自分を愛し続けて待っていてくれたことを実感して涙するという展開になっている。 細かい違い 松子の生誕日 - 8月2日→11月25日 松子の最終学歴 - 原作・国立大学を卒業して教員免許を取得とある。 松子の部活顧問 - 合唱で指揮を担当していることから、コーラス部、あるいは合唱部等の顧問となっている。 現金盗難事件で、洋一に白状させようとした場所が学校に変更された。 - 原作及びドラマでは洋一は学校を休んでいて、松子が洋一の実家まで行っている。 松子が校長から辞職を言い渡されたとき、佐伯俊二も同席している。 八女川が松子の目の前で自殺する。 - 原作及びドラマでは岡野に自殺現場まで連れて行かれて、八女川が自殺したことを知る。 小野寺との出会い - 店を辞めてからになっている。原作では客として松子を指名している。 小野寺は女を自分のアパートに連れ込んでいた。 - 原作では松子が働いている間、山科まで行き、関係を持っている。 島津との同棲期間 - 2ヶ月→1ヶ月 洋一との同棲中、松子が美容室を辞めている。 - 原作では美容室を休みがちになっているだけで、辞めてはいなかった。 洋一が組織に追われる原因が、組の金を使い込んでいたこと。 - 原作及びドラマでは覚醒剤密売の取引を麻薬Gメンにリークしていたことが発覚したため。 紀夫が大野島から松子を追い出す際に、笙もついて来ている。 博多を離れる前に短時間実家に立ち寄った松子が、死の直前の父の日記を読む場面。「松子からの連絡なし」と繰り返されているのは原作同様だが、自分の松子への接し方を後悔する述懐や、連日雨が続いている記述もある。DVD以外では絶対視認不可能とはいえ、小野寺に「雨は嫌い」と告げる場面がこの直後にあり(原作では順序が前になっている)、同じセリフは後年に洋一の前でも繰り返される。
※この「原作と映画版の差異」の解説は、「嫌われ松子の一生 (映画)」の解説の一部です。
「原作と映画版の差異」を含む「嫌われ松子の一生 (映画)」の記事については、「嫌われ松子の一生 (映画)」の概要を参照ください。
- 原作と映画版の差異のページへのリンク