加齢黄斑変性の治療とは? わかりやすく解説

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加齢黄斑変性の治療

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 17:13 UTC 版)

人工多能性幹細胞」の記事における「加齢黄斑変性の治療」の解説

今、iPS細胞用いた再生医療研究の中で最もヒトへの応用が近いとされるものが加齢黄斑変性対す再生医療である。この病はアメリカに於ける中途失明原因一位とされ、日本に於いて高齢化や生活の欧米化等より、近年著しくその患者数増やしている。この病には滲出型と萎縮型があり、前者に関して血管新生抑えるを眼に注射する方法や、レーザー照射し新生血管閉じ治療などが行われているが、萎縮型の加齢黄斑変性対す有効な治療法今のところは無い。また、レーザー照射するといった既存治療の場合新生血管接触する網膜視細胞をも破壊してしまい、光が感知出来なくなる点、絶対暗点生じさせるといった問題点もある。このような問題対し以前他人から提供された眼や胎児細胞使った網膜色素上皮細胞再建海外試されることもあった。しかしながらこの方法では強力な拒絶反応起きるとされ、実用には及ばなかった。この課題について、本人細胞から作製するiPS細胞由来網膜色素上皮細胞を使うことで解決出来ると考えられている。 なお、網膜色素上皮細胞一種類の細胞から成る一層のシート状の構造をしており、他の「複雑な組織比べ作製しい組といえる。さらに、「色素」という名前が示すように、黒い色素がついており、他の細胞区別がし易く使いやすい細胞といえる移植する細胞数少なく、元々腫瘍化しにくい組織なので、安全性も高い。万が一癌化した場合も、レーザー治療などで比較簡単に対処出来る。以上の理由により、他の再生医療比べてリスク排除し易いというメリットがある。ただし、未知リスク排除しきれないことに加えシート移植には通常の眼科手術が必要で、その手術に伴う危険性存在しうる更なる課題として、将来多く患者利用する為には、網膜色素上皮細胞の製作時間短縮、製作費用削減する工夫が必要とされる2013年2月28日高橋政代プロジェクトリーダーとする理化学研究所先端医療振興財団チーム世界で初めiPS細胞使った目の難病加齢黄斑変性)の臨床研究計画書を厚労省提出厚労省3月27日18人の専門家らが参加するヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会』を開催し理化学研究所先端医療振興財団申請したiPS細胞使った初の臨床研究計画について審査始めた同年6月27日厚生労働省の「ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会」は理化学研究所などが申請していたiPS細胞で目の難病加齢黄斑変性」を治療する臨床研究実施条件付き了承した臨床研究では、患者皮膚からiPS細胞作りシート状に培養して網膜貼り付ける方法をとり、既存薬物治療などでは効果がない6人の患者対象となる。7月19日田村憲久厚生労働相は実施計画正式に承認した同年8月1日より加齢黄斑変性患者募集始め臨床研究開始された。2014年9月12日理化学研究所発生・再生科学総合研究センター先端医療センター病院iPS細胞から作った網膜細胞を、「加齢黄斑変性」の患者移植する臨床研究の手術を行った発表今回安全性の確認目的とした臨床研究であり、実際に患者の体に移植したのは世界初となる。患者女性の腕から直径約4ミリ皮膚採取し、6種類遺伝子組み入れiPS細胞作製。さらに特殊なたんぱく質加えて網膜組織一部網膜色素上皮」に変化させ、約10ヵ月かけてシート状に培養した後、長さ3ミリ、幅1.3ミリ短冊形加工手術同日14時20執刀開始、同16時20分に終了(手術時間2時間)。(「高橋政代」も参照一夜明けた9月13日患者は「見え方明るくなった」と話している。ただし、この見え方変化原因が、手術病気部分取り除いたことによるものなのか、それとも移植したiPS細胞機能していることによるものなのかについては、まだ判明していない。目の検査では、異常はなかったという。 9月18日合併症等の有害事象発生はなく、移植したiPS細胞シート所定位置に留まっており異常なく、経過良好患者退院iPS細胞シート移植安全性や視機能への影響客観的に評価するためには、約1年間観察期間が必要としている。 2015年3月20日プロジェクトリーダー高橋政代神戸市開かれた日本再生医療学会講演し、2例目の患者京都大学などが整備進める「iPS細胞ストック」の細胞活用し他人iPS細胞を使うことを明かした患者本人細胞使えば免疫拒絶が起こる可能性は低いが、治療膨大な費用時間がかかるため、拒絶反応起こりにくいタイプiPS細胞利用する2015年10月2日加齢黄斑変性症の手術から1年経過したことを受け、理化学研究所多細胞システム形成研究センター先端医療振興財団が、神戸市内で記者会見行い手術から1年過ぎた患者の状態について、「がんなどの異常は見られず、安全性の確認主目的とした1例目の結果としては、良好評価できる」と発表した視力術前とあまり変わらない0.1程度維持しており、患者女性は「明るく見えるようになり、見え範囲広がったように感じる。治療受けて良かった」と話していると報告された。 2017年3月16日理化学研究所先端医療センター病院などの共同研究グループ手術受けた女性術後1年半経過報告し腫瘍形成拒絶反応見られ安全性確認できたと発表した。この結果アメリカ科学雑誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に掲載された。 2017年2月2日神戸市立医療センター中央市民病院大阪大学大学院医学系研究科京都大学iPS細胞研究所理化学研究所申請していた他人由来iPS細胞使った滲出加齢黄斑変性症臨床試験対し厚生労働省計画了承した他人由来iPS細胞使った臨床研究世界初となる。2017年4月から5人の患者移植実施された。 2019年4月18日理化学研究所他人由来iPS細胞使った滲出型加齢黄斑変性の治療を受けた5人の患者術後1年経過報告安全性確認され視力低下抑えられた。5人とも移植細胞定着しており、損なわれ目の構造修復できたことも確認した1人で軽い拒絶反応出たが、ステロイド剤投与抑え込むことができた。高橋政代プロジェクトリーダーは「実用化に向け7合目まで来た」と評価した

※この「加齢黄斑変性の治療」の解説は、「人工多能性幹細胞」の解説の一部です。
「加齢黄斑変性の治療」を含む「人工多能性幹細胞」の記事については、「人工多能性幹細胞」の概要を参照ください。

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