加齢による髪の色の変化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/01 22:10 UTC 版)
「ヒトの髪の色」の記事における「加齢による髪の色の変化」の解説
年を取るにつれて人間の毛髪は自然に変色していき、通常は生まれつきの色から灰色へ、そして白色に変化していく。40パーセント以上のアメリカ人は、40歳の誕生日を迎える頃には多くの白髪を持つようになる。しかし、白髪は十代や二十代、場合によっては幼児期にさえ現れることもある。ある人物が白髪になり始める時期の決定は、年を取ってからにせよ早期からのものにせよ、ほとんどは遺伝に基づくものであると見なされている。時には遺伝的な理由によって、生まれながらの白髪を持つ人々もいる。 しかし、白髪は年配のものというイメージは強くあり、「白髪」という単語そのものが老人の代名詞となることもある。例として、中国には「白头偕老」(白頭偕老)という表現があり、これは「白髪になるまで共にいる」という意味で、結婚式などで新郎新婦に対してよく使われる表現である。そのため若く見られたい人の多くが、自分の白髪の量を少なく見せるために染髪料を使っている。 加齢による髪の色の変化は、毛根でメラニンの生産が中止された後も、色素なしで新しい髪が伸びることで、髪の色素がゆるやかに減少していくために起こる。Bcl2とMitfの二つの遺伝子が、白髪の発生の過程に関係していると考えられている。毛嚢の基部にある幹細胞が、毛髪や肌の色素の生産と保持を行う細胞であるメラノサイトの発生を受け持っている。メラノサイトを生み出す幹細胞の死により、毛髪は白髪に変化し始める。 毛髪の産生には毛髪そのものの幹細胞と、メラニンを供給している幹細胞が関与しており、その両方が存在してはじめて黒くなる。メラニン産生の幹細胞は造血幹細胞ニッチに存在しているが、ストレスがかかったり、加齢によりニッチから移動してしまう。この幹細胞は造血幹細胞ニッチでしか存在出来ないために死んでしまい、その結果メラニンが作られなくなり、毛髪は一生白髪のままとなる。 いかなる特殊な食品や、ビタミンやプロテインなどの栄養サプリメントも、白髪の発生を防いだり遅らせるための有効な手段とはなりえないにもかかわらず、多くの白髪を防ぐための商品が長年にわたり販売されている。しかしながら、この状況は将来変化するかもしれない。白血病患者の治療を行っているフランス人科学者達によって、予期しない副作用を持つ抗がん剤が発見された。これらの抗がん剤を投与された幾人かの患者は、進行中の白髪頭からの回復を示した。 1996年のBMJ誌において、J・G・モーズリー主導の研究により、喫煙が早期の白髪の原因となる可能性があることが指摘された。この研究で、喫煙者は非喫煙者と比べて4倍の確率で若年期に白髪が発生することが発見された。 ミイラや土葬された死体の毛髪は、長い時間をかけて変色していくことがある。毛髪には黒褐色のユーメラニンと赤橙色のフェオメラニンが含まれている。フェオメラニンはユーメラニンよりも遥かに安定しており、毛髪に含まれるフェオメラニンはユーメラニンよりも長期間保存される。毛髪の色は、状況によってより急速に変化する。湿気の多い酸素の不足した状況(木材や漆喰の棺による埋葬など)よりも、乾燥した酸化されやすい状況(砂や氷による埋葬など)のもとでは、毛髪の変化は比較的緩やかである。 ハーバード大学医学部によると、白髪になったり、ハゲたりするのは宿命で、いろいろな治療法があるが、基本的には効果がないそうだ。
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