再審判決
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/20 16:20 UTC 版)
「弘前大教授夫人殺し事件」の記事における「再審判決」の解説
月一回のスピード審理による4回の公判の後、2月15日に再審判決は言い渡された。 主文原判決中殺人の点に関する本件控訴を棄却する。仙台高等裁判所が昭和二七年五月三一日被告人に対し言渡した確定判決中銃砲等所持禁止令違反の罪につき、被告人を罰金五、〇〇〇円に処する。原審未決勾留日数中その一日を金一、〇〇〇円に換算して右罰金額に満つるまでの分をその刑に算入する。 判決では、ズック靴に対する松木鑑定は「矛盾しかつ杜撰な点が多く認められる」、丸井による精神鑑定も「個々の資料に対する検討が不徹底で、全般的に独自の推理、偏見、独断が目立ち、鑑定結果に真犯人まで断定するに至っては、鑑定の科学的領域を逸脱したもの」として、いずれも退けられた。那須宅周辺の血液も事件との結び付きが否定され、Sの母による目撃証言も「憎しみが強く働き先入観に大きく左右された疑いが極めて濃厚」とされた。 白シャツの斑痕については、 先づ前記古畑鑑定によれば、本件白シャツに附着していた血痕は、前記畳表に流出した被害者の血液と同じ「赤褐色」を呈した血痕であったというのであるから、被告人は被害者の返り血を浴びた本件白シャツを、逮捕時までそのままの状態で着用していたことになるのである。しかも被告人はそれを家宅捜索にきた警察官の面前で何ら悪びれることなく脱ぎ捨て、他の衣類と着替えたうえ警察署に同行していることは前記のとおりである。殺人を犯した犯人がこのような行動に及ぶということは全く考えられない、有りうべからざる行動である。〔中略〕本件白シャツに認められる前記B、C、F、I、J、Kの六点の斑痕の状況は相互に極めて不規則、不揃いで一見して「噴出」または「迸出」した血液が附着したとは到底考えられない不自然な状況にあることが認められる〔中略〕。〔中略〕これを要するに昭和二四年一〇月一九日付松木・〔鑑識〕鑑定ならびに三木鑑定および昭和二五年九月二〇日付古畑鑑定の結果本件白シャツ附着の血痕が被害者の血液型と同じB・M・Q・E型であったという結論を導き出した当時の斑痕の色合いと、これを押収した昭和二四年八月二二日当時の斑痕の色合いとの間に色合いの相違が瀝然としていることは疑いなく、この点は大きな疑問としなければならない。〔中略〕 このようにみてくると、本件白シャツにはこれが押収された当時には、もともと血痕は附着していなかったのではないかという推察が可能となるのであり、そう推察することによって始めて〔ママ〕前記 (1) ないし (3) の疑問点即ち被告人が右シャツを平然と着用していたことも疑問でなくなり、「噴出」または「迸出」血液の附着が不自然であるという疑問点も解消し、色合いの相違という重大な疑問も氷解する。要するに血痕の附着を前提とする限り叙上の各疑問点を解明する必要があり、この解明ができない以上疑問を止めたままこれを事実認定の証拠に供することは許されず、また確率の適用もその前提を欠き全く無意味となるのであるから、結局本件白シャツ附着の血痕をもって被告人の本件犯罪を証明する証拠に供することはできないといわなければならない。 としてこれを否定し、「押収された当時には、もともと血痕は附着していなかったのではないか」と述べてその捏造を強く示唆した。 那須の容疑については「本件一切の証拠を検討しても本件が被告人の犯行であることを認めるに足る証拠は何一つ存在しない」と結論し、Xの告白についても 検察官は〔X〕の供述の信憑性に深い疑惑の念を抱いているが、かりに〔X〕が全く本件にかかわりにない人間であるとすれば、その供述するところはすべて虚偽架空の事実を供述していることとなるのであり、それにしてはこれまで述べてきたようにかくまでに微細な点に至るまで客観的証拠と合致するような供述をすることは到底できるものではない。〔中略〕〔X〕の供述には全体として真実性を認めるに十分であり、告白の経緯についてもその真実性を首肯することができるので、当裁判所は以上の事実に前記第一において述べた本件を被告人の犯行と認めるに足る証拠がない事実ならびに〔X〕は真犯人を名乗りでて以来棄却審、異議審ならびに当審に至るまで一貫して自分が真犯人である旨不動の供述をしている事実に照らし、本件の真犯人は〔X〕であると断定する。 とされた。検察側は期限前日の28日に上告を断念し、判決は確定した。
※この「再審判決」の解説は、「弘前大教授夫人殺し事件」の解説の一部です。
「再審判決」を含む「弘前大教授夫人殺し事件」の記事については、「弘前大教授夫人殺し事件」の概要を参照ください。
- 再審判決のページへのリンク