住基ネットに対する反対運動の発生から消滅まで
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/21 01:08 UTC 版)
「住民基本台帳ネットワークシステム」の記事における「住基ネットに対する反対運動の発生から消滅まで」の解説
住基ネットは既存のインターネットと同一の技術で構成されていながらも、かなりの精度で孤立したコンピュータネットワークとなっているが、導入に前後して、セキュリティやプライバシーの懸念から批判的にばかりクローズアップされた。田中康夫長野県知事は「ネットワークへの侵入実験を実施し、侵入可能である」と公表したが、実際に侵入できたのは住基ネットに接続されている庁舎内ネットワークからで当然のことであった。しかし、以後もネガティブな印象が先行し、法的に関連する個人情報保護法関連五法が成立するまでは施行を「違法」ととらえ接続しない自治体が発生し、反対運動も起きた。最終的には未接続の自治体も順次接続していき、2015年(平成27年)3月30日に福島県東白川郡矢祭町が住基ネットにまつわるセキュリティ事故はほとんど起きていないことを認め、マイナンバー制度に対応するために接続したのを最後に、全自治体の接続が完了した。 住民票の写しの取得は頻繁に利用されるようなサービスではなく、全国共通にするシステムを構築するメリットがあるか。住基ネット導入後は全国どこでも住民票の写しを取得できるとされるが、遠隔地から住民票を取得できることがメリットとなり得るか。住基ネットのメリットは住民票の写しの取得に限定されたものではない。出張や転勤、引っ越しなど、他自治体へ移住・転居をする場合に導入の恩恵がある。 住基カードが市町村単位の発行であるため、転居時などに転出元への返還・転入先での新規取得を要し、住居異動の多い人にとっては、恒久的な身分証明書としてのメリットが少なかった。パスポートや運転免許証と違い、一度取得しても全国で更新できなかったため、終身通用するわけではなかった。総務省はこの批判に応え、2009年(平成21年)1月、一度取得すれば、転出入の際に内容と住所表記を書き換えることによって全国で通用するよう、法令を改める方針を決め、2012年(平成24年)7月9日より、転入届を提出した日の90日以内に所定の窓口に提出し、住所表記を書き換えることで、従前の住基カードを引き続き使用できるようになった。 東京にあるサーバにデータを集め、それを全国に送信できる体制にするという形がネットワークセキュリティ上、望ましい形式であるのか。 国家があらゆる個人情報を抱え込むことへの布石ではないか。 以下のような事件(主に運用面)が起きている。 2002年(平成14年)12月26日、福島県岩代町(現在の二本松市)でバックアップ用の個人情報と住民基本台帳システム稼働用のプログラムの一部が入った磁気テープの盗難事件が発生した。総務省 によれば、暗号化された情報を解読・利用するのは不可能であり、個人情報被害は無かった。 2006年(平成18年)10月21日に、東京都足立区が住基ネットの取り扱い窓口業務16種類を、足立区の独自の判断で、民間の人材派遣会社にアウトソーシングさせる予定だったことが判明した。総務省はこの対応に対し「民間委託は想定外だ」とし、厚生労働省 はこの扱いについて足立区に対し説明を求め、検討の段階で民間委託を中止させた。 2008年(平成20年)12月、京都府京都市在住の当時17歳の女子高生が、住基カードの交付申請書に当時同居していた19歳の姉の名前や生年月日を記入し、写真添付欄に自分の写真を張って、身分証明として顔写真のない保険証で同市東山区役所の窓口に提出することで成り済まして住基カードを取得し、同市祇園のクラブで、ホステスとして働いていたことが、翌2009年(平成21年)12月になって判明。京都府警は、この女子高生を有印私文書偽造・同行使などの容疑で逮捕したが、同市では顔写真のない本物の保険証を身分証明証として提出出来る年齢の近い同性の人物が、必要書類を揃えて申請に来た場合、防ぎようが無いとしており、新たな問題点として浮上している。京都市の担当者は、「家族や同居人による不正は想定外で、見分けるのは困難」とコメントしている。総務省は「本人確認を徹底する以外に無い」としており、住基カード作成時に必要となる身分証明を顔写真のある免許証やパスポートに限定して保険証を除外する策は取らないとしている。 兵庫県加古川市において、同市の環境部の40代運転士と50代主査、現総務部嘱託と元市教委職員ら4人が探偵業者に2011年度と2012年度から6人分の計7件の住民基本台帳に記載された住民情報を探偵業者に漏洩して、現金を受け取っていたことを2013年(平成25年)を明らかになった。警察は地方公務員法違反で捜査を開始し、市は運転士と主査らを懲戒処分する方針を示した。
※この「住基ネットに対する反対運動の発生から消滅まで」の解説は、「住民基本台帳ネットワークシステム」の解説の一部です。
「住基ネットに対する反対運動の発生から消滅まで」を含む「住民基本台帳ネットワークシステム」の記事については、「住民基本台帳ネットワークシステム」の概要を参照ください。
- 住基ネットに対する反対運動の発生から消滅までのページへのリンク