ブラウン運動
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/23 09:12 UTC 版)


物理学における
概要
物理学におけるブラウン運動は、液体や気体中に浮遊する微粒子(例:コロイド)が、不規則(ランダム)に運動する現象である。1827年[注 1]、ロバート・ブラウンが、水の浸透圧で破裂した花粉から水中に流出し浮遊した微粒子を、顕微鏡下で観察中に発見し[2]、論文「植物の花粉に含まれている微粒子について」で発表した[3]。
この現象は長い間原因が不明のままであったが、1905年、アインシュタインにより、熱運動する媒質の分子の不規則な衝突によって引き起こされているという論文が発表された[4]。この論文により当時不確かだった原子および分子の存在が、実験的に証明出来る可能性が示された。後にこれは実験的に検証され、原子や分子が確かに実在することが確認された[5]。同じころ、グラスゴーの物理学者ウィリアム・サザーランドが1905年にアインシュタインと同じ式に到達し[6][7]、ポーランドの物理学者マリアン・スモルコフスキーも1906年に彼自身によるブラウン運動の理論を発表した[8]。
数学のモデルとしては、フランス人のルイ・バシュリエは、株価変動の確率モデルとして1900年パリ大学に「投機の理論」と題する博士論文を提出した[9]。今に言う、ランダムウォークのモデルで、ブラウン運動がそうである、という重要な論文であるが、当時のフランスの有力数学者たちに理解されず、出版は大幅に遅れた。
ブラウン運動という言葉はかなり広い意味で使用されることもあり、類似した現象として、電気回路における熱雑音[10][11](ランジュバン方程式)や、希薄な気体中に置かれた、微小な鏡の不規則な振動(気体分子による)などもブラウン運動の範疇として説明される。
アボガドロ定数との関係
ブラウン運動について以下の式が成り立っている。
水中で浸透圧により破裂した花粉から流出した微粒子ではなく、花粉そのものがブラウン運動すると間違われることがある。一般書などに限らず、高名な学者や学術書や教科書にも見られた。最近でもマスコミの記事や、インターネット上の検索サイトで検索すると大学のウェブ上のアインシュタインの業績説明は誤ったままの説明になっていることが多い。
アインシュタインの論文
1905年のアインシュタインの論文[4]によって、ブラウン運動は原子の存在を明白に証拠付ける事実となった。その内容を要約すると以下のようになる[1]。
参考文献
- Brown, Robert (1828). “A brief account of microscopical observations made in the months of June, July and August, 1827, on the particles contained in the pollen of plants; and on the general existence of active molecules in organic and inorganic bodies.” (PDF). Phil. Mag. 4: 161–173. ISSN 1478-6435. LCCN 2003-249007. OCLC 476300855 .
- Bachelier, Louis (1900). “Théorie de la spéculation” (PDF). Annales scientifiques de l'É.N.S. (SMF) 17: 21-86. ISSN 0012-9593. OCLC 191711396 .
- Einstein, A. (May 11, 1905). “Über die von der molekularkinetischen Theorie der Wärme geforderte Bewegung von in ruhenden Flüssigkeiten suspendierten Teilchen” (PDF). Annalen der Physik (Wiley-VCH Verlag) 322 (8): 549–560. Bibcode: 1905AnP...322..549E. doi:10.1002/andp.19053220806. ISSN 0003-3804. LCCN 50-13519. OCLC 5854993 .
- Sutherland, W. (June 1905). “Dynamical theory of diffusion for non-electrolytes and the molecular mass of albumin” (PDF). Phil. Mag.. series 6 9 (54): 781-785. ISSN 1478-6435. LCCN 2003-249007. OCLC 476300855 .
- von Smoluchowski, M. (July 9, 1906). “Zur kinetischen Theorie der Brownschen Molekularbewegung und der Suspensionen” (PDF). Annalen der Physik 326 (14): 756–780. Bibcode: 1906AnP...326..756V. doi:10.1002/andp.19063261405. ISSN 0003-3804. LCCN 50-13519. OCLC 5854993 .
関連項目
- ロバート・ブラウン
- ランダムウォーク
- 物性物理学
- ウィーナー過程
- 非整数ブラウン運動
- 幾何ブラウン運動
- アインシュタインの関係式 (速度論)
- 拡散方程式
- ランジュバン方程式
- ブラウン・ラチェット
- ダイソンのブラウン運動
外部リンク
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